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第1稿
「3分間」
「ラボ、時間だ」
俺がそう言うと、ラボは俺の車椅子を押した。
俺は今、マンションに住んでいる。
ラボが玄関のドアを開くと
冷たい金属の音がマンションの廊下を伝って内庭に響き渡り、そしてどこともなく消えた。
このマンションには俺とラボしか住んでいない。
たぶんそうだろう。
ラボは俺をエレベーターの前まで運び、それに乗せると100階のボタンを押した。
屋上だ。
このマンションは俺が所有している。
20歳の誕生日、俺の唯一の身内である叔父にプレゼントされたのだ。
この世の中にはこういうプレゼントもあるらしい。
とある条件付だったが...
エレベーターは音もなく上に進んでいく。
それどころか、かえって静寂が増したようにも感じる。
あるいは、このような空間は人にそれを要求してくるのかもしれない。
それをかき消すようにラボが言った。
「今日は、来ますかね。悪魔」
「どうだろう、今日来るかもしれないし、一生来ないかもしれない」
適当な言葉が俺の口から出た。
実際にわからないのだからどうしようもない。
だいたい、現実感がわかない。
「悪魔」だなんて。
これが叔父の出した条件の一つだった。
毎日、深夜0時にこのマンションの屋上で悪魔を待てと。
3分間。
悪魔は、いつ来るかもわからない。
だから毎日待たなくてはならないのだそうだ。
どうせ今の俺には何もできはしないのだから、それをやるより仕方ない。
エレベーターが屋上につくと、ラボは俺をその中心に連れ出した。
11月の冷たい空気が顔をこわばらせる。
天上には星が光り、地上には街の光。
このマンションからは遠く遠く世界を見渡すことができる。
何だって見ることができる、そんな気分だ。
悪魔を除いては。
3分間。
いろいろなことができる時間だ。
何もすることのできない時間だ。
俺にとっては後者の方が親しみ深いけれど。
そして、3分はあっという間に経った。
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