トップ > SF > トリのために > 第15稿「ショッキング9」



その日は、9階の4号室の訪問の日だった。
それはつまり、9-4号室。
嫌な数字だ。
上昇するエレベーターの中でそう思う。

ラボは、今日は着いていけないと俺に言ったのだった。
だから俺はエレベーターを降りると、一人で車椅子を進めた。
そして、部屋の前。


第15稿>「ショッキング9」


一方、管理人室の入り口。
そのドアは閉ざされている。
何もいつもとは変わらない玄関。
ただトリの靴はない。
ラボの靴は置いてあるけれど。

だが、この部屋にいつもより少し静寂が足りない気がする。
奥へと進んでみる。

廊下を進むと、その原因がわかった。
この部屋はある音に満たされているようだ。
低い音の機械音。
それは、一番奥の部屋から流れ出している。
そこが音の源泉のようだ。

その部屋の手前まで行くと新たな音が聞こえてきた。
それは、パソコンのキーボードを叩く音。


そして、9-4号室。
俺はその玄関にいた。
奥へ進む。

俺は部屋を奥へと向かう。
何時ものことであるが、訪問する部屋には何もない。
家具がないと、部屋はとても冷たく見えるものだ。
俺は一番奥の部屋も覗いてみた。
しかし、変わった様子はない。
「どうやらこの部屋では、何も起こらないみたいだな」
一人の俺はそう呟いてみた。
自分に言い聞かせるみたいに。

ラボが着いてこないことは、今日が初めてだった。
「今日はとっておきの料理を作って待っているから楽しみにしてて」
ラボはそう言った。
何も起こらなかったし、今すぐ帰ってもまだラボは料理をしているだろう。

「とっておきの料理か」
すぐに帰るのは野暮ってもんかな。
俺は部屋の窓から外を見ていた。
「すこしゆっくりしていくか」


その一番奥の部屋はラボの部屋。
『>悪魔は』
『まだありません』
『>経験が足りないか』
『>あちらはもう動き出している』
『オツですか』
『>オツだ』
『>しかしまだ時間はある』
『その時間がもどかしいです』

ラボの指がキーボードを叩く。
ディスプレイの表示される文字の列。
それらが語るのは、トリの行く末か

「その時間がもどかしい、トリ」
その部屋にいるロボットはそう呟いた。
そう、ラボが。


前稿  目次  次稿