トップ > SF > トリのために > 第19稿「赤」



今、目の前に現れた二つのスクリーン。
そこには、2人の俺が映し出されていた。

今、この映像を見ている俺。
つまり、ここにいる自分自身。
それが、少し遠めの背後から映し出されている。

そして、赤い髪をした手に銃を持った俺。
それは、つまり...


第19稿>「赤」


赤い髪の俺は暗い闇の中を進んでいた。
その足で歩きながら。

何かを探しているかのような感じだ。
その銃で撃つべき何かを。
それは...何だ?
俺はその映像に引き込まれる。
なぜこんな映像が映し出された?
これは俺の未来なのか?

その男の目は真っ赤に充血していた。
視点が定まっていない。
落ち着きが無く、妙にきょろきょろさせている。
まるで気が違っているみたいに。

手にした赤色の不気味な形の銃。
男はその銃口から体中に溢れる止めようもない力の塊を爆発させた。
銃声。
誰もいない虚空を撃ち抜き、悦に浸っている。

俺は嫌な予感がした。
その銃声。
その音が奇妙に反響しているような気がした。

すると、男の視点が急に定まった。
そしてその足取りも確実に何かに向かい突き進んでいるかのように見える。

嫌な予感は的中した。

そのスクリーンに映る赤い髪の俺が一歩進むごとに
もう片方のスクリーンに写る俺がズームアップしていく。

リンクしている。

その赤い髪の俺が探していた。
撃つべき相手。
それは...俺?

後ろを振り向こうとしたが体が言うことを聞かない。
奇妙な力に押さえつけられているようだ。
なんだ、これは。
だんだん俺が大きく映し出されていく。
もう足音は映像からではない、後ろから聞こえてくる。
すぐ後ろから。

スクリーンで赤い髪の俺が無気味に笑っている。
子どもがアリの巣をほじくりかえし、困惑しながら大量に出てくるアリを笑いながら踏み潰す。
そんな笑い。

その男は目標物までたどり着いた。
俺の背後に影が映る。
そして銃を構えた。
銃口が俺の頭に押し付けられた。

そのとき声が聞こえてきた。
いつかの闇の中であった女の声が。

「おかえりなさい」

引き金は引かれた。


前稿  目次  次稿