トップ > SF > トリのために > 第23稿「Merry Christmas」



スペインで行われるトマト祭りにおけるトマト1個の価値。
世界の有名人が必ず1回は出向くという有名レストランに出る、料理されたトマト1個の価値。
砂漠で飢えと渇きで死にそうな人に差し出されるトマト1個の価値。

真っ赤なトマト。
赤色の銃。それはもう忘れよう。
今日はクリスマス。
真っ赤な帽子をかぶったサンタは、
たとえ居なくても
それを誰もが口にしてくれるじゃないか。
たとえこの世に居ても
誰も口にしてくれない人が居るじゃないか。

真っ赤なトマト。
君は、必ずどこかで受け入れられる。
その場所は君のことを待っているのだから。
そして、誰かを幸せにできるのかもしれない。
その幸せの形や大きさはそれぞれあって、どれが尊いかなんて人それぞれだけど。


第23稿>「Merry Christmas」


ラボと買物に出かけた。
クリスマスのために。

ラボが言い出した。
「トリ。クリスマスを祝ってみませんか?」
いつか、姉さんも言った。
「家はクリスマスを祝わないの?」
「ねぇ、ツリーとケーキ買って来てさ、パーティーをやろうよ!」

そういうのって普通、親とかがやろうって言い出すんじゃないのかな?
イエス・キリストの誕生日だっていう事を教えたりさ?
それとも姉さん、ツリーとか飾りたかったのかな?
たまに子供っぽいところとか、あったからな。
俺と何歳も離れてたのに。
...それとも、俺を気遣ってくれたのかな?

...それとも、俺を気遣ってくれたのかな?
ラボも俺のことを。
俺が持ちかければよかったかな?

「このツリーとかいいんじゃないのかな?」
「うん、それ買って行こう!」

クリスマス模様の街のイルミネーション。
これで胸が躍るなんて、もう俺には縁のない遠い世界のこと。
...だったはずがね。

楽しい気分の時につまらない気分なんて背負い込んでちゃいけない。
少なくとも今はそんな気持ちも許せる。
そんな気持ちを抱いてる自分を許せる。

早々に、訪問も済ませてしまった俺達は、夕食の用意を始めていた。
こんな日には訪問先で何か起こったらたまったもんじゃないと思っていたが、何も起こらなかった。
そういう事があったっていい。
そういう事はあるべきなのだ。

悪魔だって来やしないだろう?
今日はクリスマスなんだ。
俺達はパーティーを屋上で開くつもりだ。
料理を持って。
テーブルに並べて。
ツリーを飾る。
ランプに明かりを点して。
食事にしよう。
グラスに飲み物を注いで。

「乾杯」

「雪が降ってきた?」
「ほら、ラボの肩に今」

「ホントだ」

空を見上げれば、それはゆっくりと落ちてくる。
白い雪が。

白い雪。
白色の銃。それはまだ知らない。
何時かクルノデス。
真っ赤な頭髪のくるったアンタは、
たとえ願わずとも
それを俺へと向けてきてくれるじゃないか。
たとえ幸せにあっても
それをぶち壊しに来てくれるんじゃないか。

今だけは幸せであると錯覚したっていいじゃないか。


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