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「第27稿:失踪と迷走、偶然の産物」


ラボが居なくなっていた。


昨日、16-1号室から帰ってきてからラボは一言も喋らなかった。
俺が話し掛けても、全て無視された。
気づかなかったのかもしれない。
とにかく俺はあれからラボと何も話し合うことができなかった。
そして今は、話し掛けることすらできない。


平穏な日々が続いた。
訪問先でも何も起こらなかった。
日が昇り暮れていくのに合わせて、起きて眠るだけの日々。

叔父からは何の連絡もない。
もちろんラボも帰っては来なかった。
今まであったことが、なんだか遠い過去のように感じられた。


街をあてもなく歩き回った。
探していた。
その遠い過去を。
こんな所にあるわけもないのに。

1-1号室へも行った。
馬鹿だとはわかっていた。
闇もないがラボもいない。
何もない。
何にも。

飲めない酒を飲む。
それこそ意味のないことだとはわかっていた。
嘔吐。
そして、情けなく呟いたりする。
「ラボ」
自分が恥ずかしい。

訪問するのを止めた。
屋上へも行っていない。

しばらく時は流れた。
区切られることのない時間はただどこまでもまっすぐ伸びているだけだった。
それは俺をどこへも運びはしなかった。

だから、俺はそれにピリオドを打った。
このままでは何も解決できないということが頭でなく体でわかってきた。
やっと体で感じることができるようになっのだ。


俺はバイトを始めた。
会社のネット上での顧客データをカテゴライズして
ファイルを作成し、管理する仕事だ。
そして新しく追加されるデータを上乗せさせていく。
これなら車椅子の俺にもできる。

別にお金に困っているわけではないが、
以前のように何もしないで日々を過ごす事が出来なくなっていた。
仕事に集中している間は何も考えないですむ。
特にこの仕事はただ処理することに徹すればいいのだ。
俺は朝起きて昼まで仕事し、食事の後に訪問を済ませることにしていた。
(訪問はまた始めた。屋上も)
その後は、また夜遅く眠たくなるまで仕事をした。

俺はかなりの量の仕事をこなした。
会社からかなりの信用を得たみたいだった。
「見事なデータ分けですね、これからもよろしくお願いします」
そう言われた。
俺はよくわからないが、俺の作成したデータはかなり役に立ったらしい。
そんなことをしている内にお金がだいぶ貯まった。
でも使うあてもなかった。

そんなある日のことだった。
顧客データの中にある名前を発見したのは。

「三上 一(ミカミ ハジメ)」

それは叔父と同姓同名だった。
確信はなかった。
これといって珍しい名前でもない。
しかし、その顧客の詳しいデータを見れば見るほど、俺はその思いを止める事が出来なくなってきた。
いつからか自分の居場所を隠すようになった叔父。
その理由?

次の日、そのバイトを止めた。
俺は叔父の家であるだろう場所へと「訪問」に出かけた。

ただ待っているだけではない。
今の俺にはする事がある。
しなければいけない事があるのだ。


第2章>完


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