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第3稿
「訪問」
そしてまた、夢は見なかった。
新しい1日が始まったわけだ。
新しいドアを開くための。
叔父の出した条件は「悪魔」のことだけではなかった。
それは、このマンションの部屋を1日に1部屋ずつ訪問するというものだった。
「訪問?」
その時、俺は何と言い返していいのかわからなかった。
誰もいない部屋に何の訪問があるのだ?
このマンションは俺が始めての入居者であり、
それからの入居者はいなかったはずだ。
その日は何しろ俺が入居し始めた日のことだったし、
俺がこのマンションの所有者であり管理人なのだ。
俺を通さなければ、誰も入居はできない。
そして俺は誰からも手続きを受けてはいない。
よって、このマンションには俺しか住んでいないことになるはずなのだ。
「そうです、ただし1日に1部屋ずつ。1階の1-1号室からです」
叔父の助手が言った。
俺がマンションの管理室に荷物を運び終え、
一息ついていたときにその男はここに訪ねに来たのだ。
男の左眼は義眼のようだった。
右目はしきりに動いていたのだが、左眼がずっと俺の足の方に向いていた。
「要するに部屋をチェックすればよいのですね」
俺はそう返した。
確かに部屋など本来、人がいるべき場所というものは
そこに人がいないと普通より廃れるのが早いものだ。
しかし、男は言った。
「あなたがそう取るならばそれでもかまいません。
しかし、これはあくまで訪問と伝えてくれということでしたので」
訳がわからなかった。
言うべき言葉が見つからないでいると
男はそんな俺などお構いなしに
「それでは、明日からお願いします」
と言うと、足早に帰っていってしまった。
最後まで左眼が俺の足の方に向いていた。
俺はその後もずっと思考をめぐらせていた。
確かにこれはただのチェックではないかもしれない。
1日に1部屋ずつ。
このマンションは100階建てだ。
100-12号室まである。
1200室。
全てをチェックするのに、約3年もかかる。
だが、そんな見回りをしているうちに入居者もいくらか来るだろうから
理にかなってるのかもしれない。
その時は、そんなふうに考えをまとめた。
しかし、それは的外れだった。
入居者などちっとも来なかったのだ。
そして、次の日。
「訪問」をすることになった1-1号室。
その誰もいないはずの部屋で出会ったのだ。
死んだはずの姉に。
いや、正確に言えばラボに、と言うべきだろう。
全ては始まったのである。
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