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「第38稿:きっとBe Myself」


長い長い廊下を車椅子の車輪を進めた。
何しろまっすぐに伸びているはずのこの廊下。
先が見えないのだ、そう出口が。
今度は何が起こるというのか?
そして、
ラボはこの先に待っているのだろうか?

最初はわずかな変化なので気づかなかった。
しかし、先に進むにつれてその変化は確実なものへとなっていった。
この廊下、ここまで来た今、
もうそれは、マンションの一室の渡り廊下のものではなくなっていた。
なにやら、薬品の染み付いたような匂い。
そうだ、俺もこの足が動かなくなった時は、何度も通ったから雰囲気でわかる。
これは、病院の廊下だ。

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「帰る家を忘れてしまったトリの話さ」

先生がくれた本。
早速少し読んでみたの。
トリはね、可哀想だったよ。
トリのことを誰も待っていないの。
トリは誰かに愛されたかったのに。
無償の愛。
そんなものはこの世にない。
トリはわかったの。
ずっとトリは一人で考えたの。
そして出てきた答えなの。
悲しい答えなの。
でもそれは真実でもあるの。
この世に絶対はないの。
永遠に続く無償の愛。
安らぎ。
そんなものは無いの。
いつまでも愛されつづけるには
愛しつづけるには努力と妥協が必要なの。
だけどトリには、その力がなかった。
自信がなかった。
今まで、誰からも愛された事がなかったから。
あきらめてばかりだった。
トリには羽がなかった。
友達と一緒に飛ぶ羽も。
家族とすら…
一人置いてきぼりで帰る家すらなくなってしまった。
トリは、帰る家を忘れたんじゃない。
帰る家がなかったのよ。

無い翼を。
愛情で補えれば。
その愛情も知らないけど。

今のところは、そんなお話。
この後、トリはどうなるのかな?
どうするのかしら?

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人が無償の愛を手に入れるのならば、完璧なロボットを作り上げればいい。
君を一生、愛しつづけてくれるさ。
大丈夫、人はね、ロボットを愛せるのさ。
いや、そのうちロボットしか愛せなくなるかもしれないよ。
なにしろ、今までの人間の技術の進歩を見ればわかるだろう?
いかに楽に効率よく物事を成せるかを追求する。
それだよ。
人は大概楽な方に流れていくのさ。
人は最後には電子に食われてしまうのさ。
きっと、つくりものの「消えない愛」こそが僕らを癒してくれる。

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廊下が終わった。
そこは行き止まりだった。
ずっとずっと来て、最後に行き止まりだった。

その後の事を語ろう。
引き返した先も行き止まりになっていたのだ。
そして、またその引き換えした後にも…

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無い翼を。
愛情で補えれば。
その愛情も知らないけど。

俺はどうすればいい?

帰る家を忘れてしまったトリの話さ。

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泣いているの?
何がつらいの?
私がここから連れ出してあげる。

答えがわかったの。
きっと愛が無くても大丈夫。
最後の手段を教えてあげる。

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俺の車椅子を誰かが押してくれている。
その少女が言った。

アナタはアナタになればいいの。

君は誰?

わからない。
ワタシはワタシになれなかった。
だから、わからない。

さよなら。

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俺は、33-3号室の出口にいた。
もう、何がなんだかわからなかった。


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