トップ > SF > トリのために > 第41稿「人の欲望の変換」
「トリのために」
そのアイコンをダブルクリックすると文章が現われた。
この文章は君のために僕が書いたものです、トリ。
僕の名前はオツと言います。
僕は君のことなら何でも知っているのです。
だけど君は僕の事など知らないと思っていることでしょう。
しかし、それはちがいます。
君は僕の事を誰よりも知っているはずなんです。
いずれそのこともわかるでしょう。
僕の名前はオツ。
そして君の名前はトリ。
さぁ、話を始めましょう。
「第41稿:人の欲望の変換」
君はこのWaterspoutを見てどう思いましたか?
今の君には興味の持てない事だとはわかっていますけどね。
しかし、これは君にも関係のあることなんです。
人は今、本当の力を手に入れることに飢えているのです。
本気で求めているんです。
自らの限界を解き放ってくれる真の力を。
人類はやっと全体レベルの共通認識としてその限界を感じ始めたのです。
種の絶滅を。
今、僕たちの住んでいるこの巨大な都市を君はどう感じますか?
人は必死の努力でとうとう完璧な都市を作り上げることに完成した。
これについてどう思いますか?
これは、たまたま金持ちだった連中が自分自身の努力なしのひ弱さを隠すために
卑怯な手で貧しい者たちから搾取した金で糸目もつけずに買った最高の鎧を
亀の甲羅のようにして、その中に逃げ込んでいるのと同じなのです。
そして、その真っ暗な甲羅の中で外からの何物ともわからない恐怖に怯えているんです。
そして、一層臆病になっていくんです。
何も見えない真っ暗な世界だから恐怖に恐怖を上重ねして、それを大きくしていくんです。
最高の鎧を買った本人は最弱になっていくのです。
人はね、今までそんなことだけに分け目もふらずに従事してきたのです。
それが力だと信じて、みんな本当の力を失っていったんです。
そして、種の絶滅です。
だから僕は違う道を提示した。
ああ、退屈な話でごめんなさい。
全然、君との共通点が出てこないですよね。
よし、本題に入りましょう。
要するに今、人々はその僕の提示した道に乗り換えようと必死でついてきてるんです。
だけど、そんなに簡単じゃない。
今までの道は蜜のように甘く、絶滅への魅惑的な誘惑は簡単に振り払えないものなんです。
種としての本当の力を手に入れるには、苦しい道のりがあるんです。
その二つの道に板ばさみになって
人々は今、とてもアンビバレンツな状態に陥っている。
そして、生まれ変わる為に無駄な部分を排除しようとしているんです。
いや、排泄といったほうがいいかもしれない。
訳のわからない、欲望に作られた欲望の塊。
人に寄生虫のように取り付いたそれを排泄するのです。
ねぇ、君は毎日ゴミを捨てるでしょう?
ゴミは君の住んでいるところから消える。
君の視界からゴミは消え、君は不快な思いをしなくてすむ。
すると君はそのゴミとはもう無縁になる。
君が出したゴミにもかかわらず。
君はけろっと忘れるはず。
そんな自分の出したゴミが今まで生きてきて累積でどれくらいになるか知っていますか?
それはどこか他の誰かが居る場所を汚し、自ら住む地球の大気や海を汚しているんです。
自分の部屋さえ綺麗なら安心ですか?
きっと安心なはずです。
いやいや、勘違いしないでくださいね。
君を責めているわけではありません。
それに、これは環境問題の話じゃありません。
つまり、排泄された欲望の固まりはどうするのか?どこに行くのか?
そういう話です。
唐突ですが、はっきり言いましょう。
それは君の役目です。
君が排泄された欲望の固まりを引き受けるのです。
僕はそんな欲望を人から吐き出させる為にWSを作ったんです。
そして僕はその欲望の塊を一時的に所有しています。
ちょいとした技術でそれを変換させて電子上に所持しています。
これから、その一部を君に送ります。
これも、勘違いしないでくださいね。
これは君のためなんです、トリ。
君が本当の君になる為にしていることなんです。
君はそれを望んでいるのでしょう?
実はそれを僕は前々から少しずつ君に送っていたんです。
気づいてくれました?
その赤い髪が何よりの証拠。
それでは、送らせてもらいます。
人の欲望の変換。
欲望>よくぼう>
ぬめっとした黒いなんとも形容し難い液状物体がディスクトップから俺の体にどっと勢いよく溢れた。
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