トップ > SF > トリのために > 第47稿「go insane」
さぁ、始めよう
物語はいつでも語られるのを待っている
しかし伝えておこう
トリよ
この物語は君のために語られるのじゃない
これはすべて僕らのために語られる
これから生きていく人々のためにだけ語られる
君はもうすぐ死ぬ
残念ながら死人に語るべき物語は持ち合わせてはいない
もし有るとするなら
さよならという別れの言葉だけだ
トリのために>第4章
「第47稿:go insane」
「待っていてね」と彼女はそう言った。
俺はその言葉だけをたよりに訪問を続けた。
壁をつたって車椅子の車輪を回しながら。
目はあいかわらず見えなかった。
しかし変化を感じることができた。
だんだん光を取り戻している。
俺の物語はうまく進みだしたのだ、そうに違いない。
叔父が、
オツとかいう奴が何を企んでいるかなど知ったことじゃない。
俺には俺の目的があって訪問を続けているのだ。
俺が力をつけるため?
俺が俺自身になるため?
違う。
俺は俺だ。
俺は俺の力を持っている。
作られたロジックなどに惑わされるものか。
誰もが自分自身であり、自分だけのオリジナルな力を持っているんだ。
彼女をつれて俺はここから出る。
そのためにケリをつけるのだ。
だから俺は訪問を続ける。
彼女が犯したという「失敗」にピリオドを打つ。
そして
この物語の中心にはきっと姉さんが絡んでいる。
あの事故。
俺の足が動かなくなった理由。
姉さんは何をしようとしていたのか...本当は姉さんは誰だったのか。
そうだ。
俺は今までの俺にケリをつけるために訪問を続ける。
たとえ、その先に何が待っていようとも。
そうせずには、いられないから。
宛先...ame-furi@cross.neo-road.ne.jp
CC(C)...
件名(J):アンタへ
ねぇ、不安なのよ。
この1ヶ月の間。
アタシが何通メール出したか...知らないのよねきっと。
このメールもアンタが見ていてくれるかどうか...
もしそれがあるとしての話だけれど、妨害工作は潜り抜けているつもりよ。
アンタのメールアドレスもちゃんとアンタの所持のもとに存在しているし。
それなのに...
何かあったの?
あったのよね...きっと。
思うのよ、最近。
アタシにはね、ここまで来ちゃうとあまり力になれないんだなぁって...
ちょっと寂しいかな。
お願いよ、どうか無事でいてね。
また、雨の季節に入りますね。
貴方と私のもとに同じ雨が降っていることを願います。
おわり
メールを送信しますか?
はい(Y)/いいえ(N)
「もう、これ以上は無理よ」
「私にできることはただ待つことだけ」
「極楽鳥が舞い降りて」
「巣をつくり」
「卵を産み付ける」
「そして狂気が生まれるのだわ」
Nが押された。
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