トップ > SF > トリのために > 第6稿「ラボ」
俺を抱きしめていた女性の顔を見た時、俺は自分の目を疑った。
その女性の顔は姉さんそのものだったのだ。
彼女は俺を抱きかかえると車椅子に運んでくれた。
「姉さん?」
俺は聞いた。
すると、彼女はどこか寂しそうな笑みを浮かべ首を横に振ったのだった。
それがラボだった。
その時の俺はそのラボの笑みの本当の意味など知る由もなかった。
第6稿>「ラボ」
ラボとともに暮らすようになり、ともに部屋を訪問するようになった。
なぜか俺にとってそれはとても自然なことに感じられた。
林檎が木から落ちるのと同じぐらい。
しかし、もちろん疑問は山ほどあった。
ラボはどこからきたのか?
そして何のために?
姉さんとの関係はどうなっているのか?
なぜ俺の面倒を見てくれるのか?
全てわからなかった。
ラボにそのことを聞くと、あの笑みを浮かべるのだった。
だから俺はそのことを聞こうとするのをやめた。
俺がそのことを聞くたびに
その笑みの寂しさが増していくように感じられたから。
しばらくの間、訪問した部屋では何も起こらなかった。
1-1号室が特別だったのか?
それともラボのお陰なのだろうか?
1階の訪問が全てすんだ日のことだった。
ラボが始めて喋ったのは。
夕暮れ。
俺の部屋は赤く染まり
その光を浴びている物々は長く黒い陰を吐き出していた。
遠くで遊んでいる子供達の声が聞こえるような気がした。
また今日という日が終わるのを寂しがるかのように別れを告げる声が。
その声は自分の声なのかもしれない。
「トリ」
その声は姉さんの声ではなかった。
それは、ラボの声だった。
いつの間にかラボは俺の前に立っていた。
二人とも体中に赤い光を浴びていた。
少し薄暗くなってきていた。
ラボの目が
ラボの目が光っているような気がした。
ラボは俺の名前を知っていた。
トリという本当の名前を。
「まだ」
「全てを話すことはできません」
「でも」
「私はあなたのことを...
その日、ラボがロボットだということを知った。
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