トップ > SF > トリのために > 第61稿「静寂の海」



怖い夢を見た
目を覚ましても誰もいない午前3時
まだあちらの世界とこちらの世界の境界線が引けない
不安な心は宙に浮かんだよう
捉えようがない

言葉で表すと平凡に
とても形容し難い恐怖
閉塞感

薄明かり
握り潰したような小さな空
不安を誘う灰色
水彩絵の具のグレイを水バケツの中で溶いたような

どこにも続いていない千切れた道とか
ぽつんと一つだけある廃墟
決して人を受け入れない無感情さ
消えた存在感

呪い
ポケットの中のガム
簡単にこぼれ落ちた俺の永久歯
死がやって来る

汗がシーツを濡らしていた
乾いた咽喉の奥でねっとりした粘液が絡まっている
水分
起動音をたてる冷蔵庫の照明
部屋に雑然と置かれた物々
それらの輪郭をぼんやり浮かび上がらせる
語りかける言葉を持っているのに押し黙っているかのような
その砦の中
代表のように
ラボが俺のほうに向かって腰掛けている
鳴り響く冷蔵庫の起動音



第61稿
「静寂の海」




どこまでも広がる水平線
2種類の青
きっとこれは現実じゃない

とうとう89-12号室まで訪問を終わらせ
残すは90階以降のみとなった次の日
管理室の扉を開けた俺が見たものがそれだ

俺のマンションの周りにあったはずの街はすべて消え
360度
海に囲まれていた
街が消えたのか
マンションが移動したのか
どちらでもいい
そうだ
きっとこれは現実じゃない

「90-1から98-12までの訪問は結構 99-1号室まで来られたし」
閉めようとした扉にそう張り紙が張られていた

最後を締めくくるのにこの場所を選んだのだ
この物語を始めた張本人が



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