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第9稿>「この雨の向こうに」
俺は部屋の中に雨が降ったことについては別段、驚かなかった。
俺が驚いたのは、その雨が、あの日の雨と同じ物だという事を
自分の体が、自然に理解していたということに対してだ。
そう。
この雨は、姉さんが俺を抱きしめた日の雨と同じ雨。
俺は振り返り、ラボの方を見た。
雨に濡れたラボの姿は、限りなく姉さんに近づいて見えた。
ラボの顔は、あの日、何か決意をしたような姉さんの顔になっていた。
俺がラボに話し掛けようとした時、
ラボが先に言った。
「行きましょう。この先に真実はあるのよ」
その声はラボのものだったが、俺には姉さんが言っているように聞こえた。
「行こう」
俺たちは、雨の2-6号室を進んでいった。
進むにつれて雨が強くなっていく。
豪雨だ。
雷を伴っているかのように、上のほうに雷鳴すら聞こえる。
そして、中ほどに進むと、雨の強さは凄まじいものとなり、前が何も見えなくなった。
もはやこれは滝だ。
その雨の強さが最高潮となった所まできたと思った時だった。
俺たちは、そのまるで水の壁のようなものを通り抜け、別の空間へたどり着いた。
そこにあったのは、雨の高速道路だった。
「どこだ、ここは?」
俺は何がどうなったのかわからない。
「ここが、どこだかわからない?」
ラボは言った。
「あなたは知っているはず、トリ」
「見て、もうすぐあちらから、ダークグレイのインテグラが走ってくるわ」
ダークグレイのインテグラ。
それは、俺の家族の車だった。
そう、事故で大破した。
事故?
俺は全てを飲み込んだ。
ここは。
俺の家族が事故で死んだ所だった。
「あなたは、これから起こることをちゃんと見ておかなくてはダメなの」
「辛い事だというのはわかっているわ」
「でもこれが、真実の一部なのよ」
俺の胸は強く強く鼓動していた。
ダークグレイのインテグラ。
それが今、やって来た。
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