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さて困った、どうしようか? ぼんやりと考えるのは楽しくて 絶対自分はにやけて締まりの無い顔してんだろーな そんな確信を持って歩く夜更けの帰り道 ・・・After? 満月も三日も過ぎれば随分と欠けて四分の一程度は寄る闇に食われてて 居待月、だっけか? 校門を出た所で俺は立ち止まって月を見上げていた 鬱陶しいくらいに眩しかった月明かりは随分と影を帯びて空に冠して、新月が近付 いてる、そう思えば自然に笑いが込み上げてきた ぼんやりと月を眺めていたら腕の中で身動ぎする朔夜を慌てて見る ぼーっとする癖があるのは良くないな 特にこういう時は 起きてしまったかと思った朔夜は俺のシャツをしっかりと掴んだまますやすやと安 らかな寝息を立てて眠っていた よく寝ているのを起こすのも忍びなくて寝かせたまま体育館から連れ出したのはい いが、よく考えたら俺はこいつの家知らないんだよな 後先考えずに行動するのも悪い癖かと思えば次の瞬間にはどうにかなるだろ、そん な楽観的な思考には我ながらバカだよなぁと思うけど 滅多に見れない恋人の可愛い寝姿を抱いてるんだ それくらい許されたっていいだろう? 歩き出してみれば夜更けだと言う事もあって人通りも車も少ないのは助かったが 、体育館の様な室内とは違って石やらゴミやらが転がる悪路を腕の中の朔夜を 起こさない様に歩くのは骨が折れた こうして抱き上げる朔夜は眠っていて脱力しているにも拘らず折れそうな程細くて 軽くて いつも自分の体重を気にしてるけどホントにちゃんと食ってんのか心配になる 振動に眠りが浅くなるのかたまに身動ぎする朔夜を覗き見ると何ともまあ無防備な 顔で寝てくれちゃって 俺以外のヤツにこんな姿見せてたらどうしよう そんなバカな不安を思うのも悪くは無い 会う度話す度に深みにハマっていく自分がどうしようもなく情けなくなるけど、そ れもいいと思う自分は変わったんだろう 今日は春真っ盛りに気温が高かったとは言え、日付も変わる夜更けともなれば流石 に夜風は肌に冷たい 腕に抱く体温にで俺は暖かいけれどこいつは大丈夫だろうか つい2、3日前まで風邪引いて熱を出していたのにあんな寒い所で寝るなんて ・・・俺が来るまでずっと時間の許す限り待ってるつもりだったんだろ? 自然に腕に力が入って抱き締めてしまったらしい 小さく呻く声が聞こえて足を止めた ヤバイ、慌てて立ち止まって息を殺す 暫くじっと突っ立ってればまた静かな寝息が聞こえてくる 危ない危ない、俺と違って寝起きのいいこいつを起こすと色々と面倒だ 立ち止まるついでに腕を持ち上げて前屈みに首を伸ばすと丸まって眠る恋人を包ん でいる自分の上着の端を咥えて引っ張った 僅かに年上の割には幼く見える可愛い寝顔が隠れるくらいまで引き上げて口を離す まぁ、これくらいで大丈夫だろう 既に暗い夜道を十数分程歩いてきたが問題はここからだ 次第に月明かりじゃない灯りが増えて煩い呼び込みの声が近付いている 最近じゃ風俗店の呼び込みも減ってきたみたいだが、それでもこういう界隈じゃま だまだ無くなるもんじゃない 朔夜の背を抱える腕を抱き込む様に引き寄せて少しでも煩くない様にしながら俺は 酔っ払いやら勧誘に精を出す連中を尻目に足早にその区間を抜けて行く とは言え目的地もそのイカガワシイ区間にあるんだけどな ピンクやら赤やら黄色やら、色取り取りのネオンが飾る看板を掲げるビル居並んだ 道を進めば俺の自宅が見えてくる 自宅、と言うのは少し語弊があるかもしれない 正確には俺の親父が経営するホストクラブ【CrazyMoon】 黒を基調に薄黄色い電飾で飾られた看板が見えればそこが俺のバイト先兼居候先 両親の住む自宅はちゃんとある 学校とか届出関連に書いた住所はちゃんとそっちにしてあるけど 普段俺はこのホストクラブのあるビルの二階で寝泊りしてる シャワーも厨房も一階に降りれば店の設備で何とでもなるし、第一四六時中親父や お袋が愛人だか遊び相手だか知らないがを連れ込んで来る自宅よりはこっちの 方がよっぽど落ち着いて寛げた 自宅じゃなければお袋の小遣い稼ぎと称した遊びに付き合わされる事もないしな 「朔ちゃん今日も遊んで来たのかい?」 店の表玄関ではなく裏口から入ろうとビルの脇に向かう途中、背後から掛けられる 声に振り返った 顔を見なくても判る相手、親父の店に勤めるアキラさん 俺に負けずと劣らず長身の男に緊張感のない緩い笑みを向ければ、人懐っこい笑み が返って来る 「やー、青春を謳歌するってヤツかねぇ?」 へらへらと口調も表情も軽く相手を見ながら言うと俺はさっさと歩き出そうと背を 向けようとしたのだが 「へぇ。で、その抱っこしてる可愛い子は青春の名残ってワケか」 一筋縄では行かない所か楽しそうにからかいオーラを発してアキラさんは俺の肩に 手を掛けて覗き込む様にして腕の中の朔夜を見ていた 参ったな、この人に絡まれると長いんだ 只でさえ煩い通りから早く離れたくてしょうがないのにこの人と並んで立っている だけで人目を引く さっきからちらちらと通行人の視線を感じながら俺はどうしようかと内心切り返し あぐねていた 方や黒いスーツに派手な色シャツを着込んだお世辞抜きにも男前なアキラさん、そ して絡まれているのは腕に人一人抱えた制服姿の俺 場所は明らかにそのテを生業とするクラブの前で、長居すれば面倒事に発展しそう なのは必至だろう それを判っていてやっているであろう相手は流石親父の店の従業員と言うべきとい うかなんというか 「まー、そーゆーコト。俺今日非番だからお先にー」 何よりもこんな所で朔夜が目を覚ましたらそれこそ大惨事だ ・・・俺が 深く追求される前に逃げを打つ事に決めて、手を置かれる肩を揺らして俺は相手の 手を払い除けた 軽く置かれていただけの手は案外あっさり肩を外れて、にやにやと俺を窺うアキラ さんにへにゃっと締まりの無い笑みを向ける 笑顔で語る―――触れるな、と 「次の出の時に聞かせろな?」 お手上げ、とポーズをとって笑うアキラさんに笑って返すが、ふと思い出して俺は 慌てて立ち去ろうと する相手を呼び止めた 「あ、ちょい待ち!」 思わず勢いよく振り返りそうになるのを必至に思い留まって首だけで相手を見なが ら俺はちょっと情け無くて緩い笑みを浮かべた 「何?」 ガラス板の扉に手を掛けようとしていたアキラさんが嫌な顔一つせずに戻ってきて くれる それはいいけどついでとばかりに抱いている朔夜の顔を覗き込むのは止めて欲しい 「ポケットから鍵取ってー。ついでに伝言、近付いたらぶっ殺す」 覗き込むアキラさんから朔夜を隠すように体を捻じって、自分のスラックスのポケ ットを視線で差す 取られて困る物がある訳でもないが事務室には鍵が掛かっている筈だ 出かける前に俺が自分で締めたんだから間違いない このままの体勢じゃ一人では鍵を取り出す事も出来ない ついでに今頃店に居るだろう親父への警告 口の軽いアキラさんから俺が恋人を連れ込んだ事を聞けば目を輝かせて悪戯しに来 るに決まってるからな 「りょーかい。伝えとくよ」 小刻みに肩を震わせて笑う彼を見れば親父に言う気満々だった事が窺い知れる 先手を打っておいてよかった 取り出してくれた鍵を受け取ると短い挨拶を返して俺は今度こそ裏口のあるビルの 間へと歩き出した 「よ・・・っと」 指が攣りそうになりながら部屋の鍵を開けて入ると扉の直ぐ脇にある電気のスイッ チに体当たりする様 に肩を押し付けて灯りを点ける ビルの一室だから仕方ないと言えば仕方ないけど見事に正方形の部屋だ、と改めて 眺める室内に感想を一つ 扉から左手壁際には親父の事務室の名残と言うか倉庫宜しく書類やらの並んだ本棚 と事務机が置かれている 反対の右手壁際、扉のある壁を頭に角に合わせてマットレスに布団を敷いただけの ベッドが一つ それを中心に俺の使いやすい様に壁際に並んでいるロッカーにテレビにオーディオ 関連、と自分で言うのも何だが閑散とした部屋だと思う 部屋の中で唯一家具らしいマットレスの上に朔夜の体を起こさない様にそっと横た える しっかり体を離そうとしてしっかり握られた俺のシャツが突っ張った たったそれだけで情けないくらい表情緩んで笑みが浮かぶ ゆっくりと一本一本指を解いて離れてからマットの横に腰を下ろして恋人の寝姿に 見入った この格好のままじゃ寝にくいか 朔夜に掛けていた自分の上着は床に投げ捨てて、下にTシャツを着込んでいるらし いしそれ一枚に脱がせるか そう決めれば朔夜のシャツのボタンを一つ一つ外していく 全部肌蹴させてから邪魔になるだろうとスラックスのベルトにも手を掛けて 手を掛けて固まった 「やっべ・・・」 思わず顔を逸らして鼻まで覆って口元を押さえた いや、まぁ何つーか 無防備な寝顔でシャツを肌蹴て、スラックスの前すら寛がせて横たわる恋人の寝姿 一瞬で理性が焼き切れるかと思う程扇情的に色っぽい 流石に寝込みを襲う程がっついちゃいないが、これは俺にどうしろと? 「・・・ベルト外すだけにしとくか」 スラックスまで脱がしたら理性が持つ自信が無い ベルトを抜き取って前を留めるボタンだけ外してやって、シャツを脱がせると隠す 様に掛け布団を掛けてやった 「勘弁・・・」 ロッカーに拾い上げた上着と朔夜から脱がしたシャツとを掛けて押し込んで テーブル代わりに使っている親父の事務机に腰掛けながら俺はぼやいた 机の上に置きっぱなしだったミネラルウォーターのペットボトルを一思いに飲み干 して何とか頑張れ俺の理性 Tシャツにジーパン、ラフな室内着に着替える間も見ない様に聞かない様に意識を 逸らそうとする度に嫌に良く耳に入る朔夜の小さく呻く声、身動ぎする衣擦れの音 に顔が熱くなる 初心なガキじゃあるまいし、どうしたってんだよ 自分で自分の動揺に付いて行けなくて更に動揺するんだから始末に終えない マットレスの横に置いた小さい物置台の上の時計を見ると既に3時を回ろうとして いた 「・・・寝るかねー」 わしわしと髪を掻きながら呟いてはみたが、寝ると言ってもベッドは一つしかない ・・・寝れるかどうかが問題だ 「オジャマシマース」 そろそろと掛け布団を持ち上げて、自分のベッドなのにやたら他人行儀に潜り込ん だ 穏やかな寝息を立てる朔夜の顔を目の前にすればやはり自然と表情が緩む へにゃへにゃととても人には見せれない様な間抜けな顔してんだろーな 入る時は緊張してたのに目の前に愛しい姿を認めれば当然の様に眠る恋人を抱き締 めた 普段は俺より体温が低いのに眠っている所為か布団に入っていた所為なのか、熱い くらいに感じる温もりが心地良い 片手で腕枕をしながら回す片手でぎゅっと抱き締めた 何でだろうな、すごく落ち着く 起こしちまうかも、頭の片隅では思ってるのに抱き締めて少し短い朔夜の髪に頬を 摺り寄せた 我慢出来ずに朔夜の頬や額に口付けて、そっと唇に触れて顔を離すと薄っすらと開 いた瞳と目が合った 完全に覚醒しないまどろんだ目、小さく呼んでくれる俺の名 今まで他の誰と居ても誰と寝てもこんなに幸せだと思った事があっただろうか 「朔夜・・・おやすみ」 愛してる、囁きを籠めた唇でそっと瞼を落とす様に口付けた 幸せそうに微笑んで再び眠りに落ちる腕の中の恋人 愛されてるって自惚れてもいいよな? 釣られる様に目を閉じて、よりリアルに感じる温かさに俺も意識を手放した 穏やかで平和な久々に夢も見ないで眠る夜 翌朝、嫌に目覚めよく、真っ赤になった愛しい恋人に渾身の一撃を鳩尾に食らわさ れたのはまた別の話 某日のBL【体育館】での恋人Cさんと絡んだロルの後日談(笑 恋人Cさんの寝惚けロルが可愛くて可愛くて可愛くて・・・(*´ハ`)∵・:*:∵・:* 相手に了承は取ってありますがこの話は完全に朔のオリジナルストーリーですので 誤解無き様w |