クロスズメダイ

全長 3センチ(大人になったら15センチ)

 めちゃくちゃ昔の図鑑には、この魚はキンセンスズメダイという名で載っていることがある。もちろん、今の図鑑にはそのような名前はどこにも見当たらない。

 もとよりそれは、昔「いなかっぺ大将」の主題歌を歌っていた吉田よしみが、現在は天童よしみと名を変えて活躍しているのとはわけが違う。昔は、まさかこの魚が大人になるとあんな姿になってしまうなんて誰も夢にも思わなかったので、大人とはまったく別の魚として扱われていたのだ。

 幼魚と成魚、もしくはオスとメスの体色の違いというのは、多かれ少なかれたいていの魚で見られるものである。そのなかでも特に顕著なものは、一昔前にはそれぞれ別の名前が付けられていたというケースが多い。

 以前に紹介したヒレナガスズメダイの稿でも述べたが、この手の魚は、えてして幼魚のころのほうが断然美しい色彩をしている。幼魚の頃に目立ち、大人になると地味になる利点というのはいったいどこにあるのか、僕にとっては永遠の謎である。
 ま、たしかに人間でも子供の頃は光り輝いていて、成長と共に凡人になっていくというパターンは往々にしてあるけどね。

 このような魚たちは、水槽で飼っていたものが徐々に、もしくは突如変貌を遂げることによってとか、フィールドでその中間段階を表す個体が確認されることによってその正体が明らかになっている。これも以前にどこかで書いた記憶があるが、そういう衝撃的新事実を知った瞬間を味わえた人がとてもうらやましい。
 まさか、こんな可憐な幼魚が成長するとこうなるなんて………


体長20センチくらい

 クロスズメダイの幼魚はもっぱらリーフ内やリーフ上の浅いところに一人ぼっちでいることが多いので、通常のダイビングではよほど浅いところで遊ばない限りなかなか見る機会がない。
 一方大人はリーフ際の浅いところで数匹でいることが多いから、案外大人は見たことがあるけど子供は見たことがない、という方もいるかもしれない。そういう方は是非ビーチやリーフの上でスノーケリングをお楽しみください。