ミナミハコフグ

全長 25センチ(写真のチビは1センチほど)

 ご存知「シアワセの黄色いサイコロ」である。
 小さな尾びれを折りたたみ、ピコピコピコピコ…と泳ぐ様を見れば、どんなにひねくれた人でも思わず微笑んでしまうだろう。見る者すべてのハートを一瞬でゲットしてしまう、愛らしさ満点の小さな魚。それがミナミハコフグだ。

 この魚を見たいというゲストは多い。年によってよく見られたり見られなかったりすることがあるものの、一度見つけるとしばらく同じ場所にいてくれるので、我々にとってはありがたい。
 ただ、見やすい場所、写真を撮りやすい場所でいつも泳いでいるわけではなく、いたと思ったら岩陰に引っ込み、こっちから出てきたと思ったらまた隠れてしまう。なかなかゲストに見てもらうのが難しい魚でもある。
 それでも、岩陰からこちらの様子をうかがうようにピコピコ出てくる様子が、かえってこのミナミハコフグの可愛さを倍増させているのかもしれない。

 が。
 この魚は、あくまでもミナミハコフグの「幼魚」である。

 では大人は?
 過去10シーズンに訪れてくださった4億5千万人のゲストのうち、ミナミハコフグの成魚を見たい、という方に出会ったことは一度もない。不人気なのか?
 いや、そうではないらしい。
 単に忘れ去られているだけなのだ。宮脇康之という名を聞いてすぐに顔を思い浮かべることができる人がほとんどいないのと同じなのである。そう、ミナミハコフグはケーキ屋ケンちゃんみたいなものなのだ。 

 ケンちゃんシリーズが終わって以降、まったくパッとしなくなる俳優・宮脇康之同様に、ミナミハコフグも成長とともに地味路線まっしぐらとなる。

 まず、黄色いサイコロから少し成長すると、黒点のほかに白点が加わる。

 この頃にはもう「サイコロ」というイメージから離れつつあるものの、まだ色彩的にはインパクトがある。
 その後、なぜか体の点が黒縁つきの白点になり、体はどんどんダークな色になっていく。
 そして、さらに成長するとこんな感じに。

 

 右がオス、左がメスと思うのだが、右の写真はオスで間違いないにしても、左の写真が本当にメスなのかどうかはわからない。いずれにしても、もはや幼魚の面影はどこにもない。

 この写真を見て、成魚を見てみたいと思う方もなかにはいらっしゃるかもしれない。でも、ケンちゃんの今の姿を「あの人は今?」という番組でしか見られないのと同様、見たいと思ったときにいつでもどこでも見られるわけではないのであった。