
ソウシハギ
全長 50センチ
暗闇からヌボーッと現われたかのようなこの魚、その名をソウシハギという。
ソウシとはいったいいかなる意味であるのか。広辞苑をひもといてみても今一つピンと来ない。
近頃のボキャブラリー皆無の学者たちと違って、昔の人は文系理系に関係なく文学的に今よりもずっと優れていたようだから、昔に名付けられた魚の名前には、うーむ、と一言唸らずにはいられないものが多い。小さなフグに「北枕」という名をつけるセンスなんて、今の研究者にはきっと見られないだろう。
このソウシハギも昔に名付けられているはずだから、「ソウシ」にも何か深い意味があるに違いない。といいつつ、もしソウシという名の人にちなんでいたらひっくり返るなぁ。
当のソウシハギ君は、人がつけた名前にはまったく関係なく悠々と泳ぐ。その独特の形のせいで、遠目から見るシルエットだけでもそれとわかる魚だ。ハギという名がついているけど本当はカワハギの仲間で、他のカワハギ同様菱形の体におちょぼ口である。が、このソウシハギが特異なのは、その尾びれ。ビヨ〜ンと長いのだ。
上の写真は斜め前から撮っているから、せっかくの尾びれがやや短めに写っているが、真横から見たら体の半分以上の長さを誇る。こんな形の魚、ほかにはいない。
それほど個体数は多くないと思うものの、だからといって珍しいわけでもない。きっと一匹一匹の縄張りが広いのだろう。だって、シルエットでそれとわかるのだから、おいそれと他人の縄張り内に近づけないにちがいない。
広い範囲に数多くはいないから、冬の船員さんたちの獲物になる機会は少ない。が、その味はなかなかのものらしい、という事実もある。
大人は優雅にノラリクラリしているソウシハギだけど、幼魚はなかなか芸達者だ。
大人とはまったく異なる茶色の体で、流木などの漂流物に擬して漂ったり、ロープになりすましておちょぼ口のすまし顔を見せたりしている。
その姿をここに紹介したいところなのだが、あいにくこれまでソウシハギのオコチャマに出会ったのはガイド中ばかりで、写真がないのであった。すまぬすまぬ。