海辺のアルバム

写真・文/植田 正恵

  1. ゆうれいガニ

 沖縄では、春から夏にかけて砂浜で”ビーチパーティー”なるものがよく催される。要するに”自分たちで持ち寄ったつまみ、及びバーベキューなどを囲んでビーチで飲みつつ親睦を深める会”である。そんなとき、軽く酔いが回った人間が波打ち際で右へ左へと下を向いて走っていたら、その人は「ゆうれいガニ」を追いかけ回していると思ってまず間違いない。

 さて、このゆうれいガニとは、実はスナガニの仲間、特にツノメガニとミナミスナガニをさしてつけられた俗称である。夜になると色素が沈着して白っぽく透明になったこのカニたちが右へ左へふらふらとさまよう様子は、確かにゆうれいを連想させるのにぴったりのようだ。実際には昼間でも天気の悪い日や、天気が良くても朝方や夕方にも結構活発に活動しているのだが、天気の良い日中に見かけることはまずないといってよい。おそらく日中はビーチにある巣穴でゆっくり昼寝を決め込んでいるのだろう。

 ところで、このカニの巣穴はよくもまあこんなサラサラと崩れやすい所に掘ったもんだ……とつい感心してしまうような砂地に作られている。この巣穴は危険が迫ったときの逃げ場でもあり、カニたちは危険が迫っているのを感じると巣穴に入ろうとする。しかし、あまりに突然でパニックになると穴に入ることができず、ひたすら左右にうろうろしてしまう。こんな姿から、沖縄では「慌てているカニや穴ねーはいらん(慌てているカニは穴にはいることができない)」という。いわば「急がば回れ」的な慣用句なのだ。

 このうろうろ状態になったカニをさらにしつこく追い回すとどうなるか。あるものは海に入って難を逃れ、またあるものは疲れ切ったのかピタッと動きを止めてしまう。このピタッと止まったときがチャンスで、簡単に捕らえることができるし、まるでウルトラマンのような彼らの目をじっくり観察するのもおもしろい。

 とはいえ、彼らは波打ち際で夕涼みを楽しんでいるわけではなく、打ち上げられた生物の死体やゴミを食料とするため、必死で動き回っているのである。オカヤドカリたちと同様、海辺の人気者であると同時に掃除屋さんでもある彼らに、ゴミを散らかすだけの我々はもっとお近づきになるべきではないだろうか。