アンツ ANTZ (1998)          <BACK>

監督:エリック・ダーネル&ティム・ジョンソン
出演:ウディ・アレン、シャロン・ストーン、シルベスター・スタローン、クリストファー・ウォーケン、アン・バンクロフト、ジーン・ハックマン、ジェニファー・ロペス、ダニー・グローバー

(物語)Z(ウディ・アレン)は、10億匹のアリが住む世界で働きアリとして過ごしている。しかし、働きアリとしてのキャリアに疑問を持ったZは、運命のいたずらから戦場のヒーローとなり、憧れの王女バーラとともに、昆虫の楽園インセクトピアへ目指して旅立つ。しかし、アリの世界の支配を企み、バーラを自分のものにしようとする悪徳将軍マンディプルの魔の手が伸びる。

スピルバーグのドリームワークス社が、全編最新の3次元アニメーションとして送り出してきたのは、何とアリの世界の話。アリの動きは、俳優に個性を生かしたアニメーションになっており、アメリカの批評家達からも絶賛されたようだ。とにかくアリのキャラクター・デザインだけを見ても、役者とそっくりに作られていて笑えます。アニメについての技術に書いても仕方がないが、すごい映像で我々を楽しませる。ここでは、アレン関連の情報にとどめることにします。

まず、超豪華なキャストに注目してみよう。一目見たところでは、ハリウッドのスーパー・スターをとりあえず集めましたと言った感じなのだけど、キャストを見ていると「あること」に気付かされます。それは、ウディ映画に出演している俳優が多いこと。シャロン・ストーンは、実はウディの「スター・ダスト・メモリー」(80)がデビュー作だし、スタローンも最初期に「バナナ」(71)に出演しています。ウォーケンは「アニー・ホール」(77)にダイアン・キートンの弟役で出演しているし、ジーン・ハックマンは「私の中のもうひとりの私」(88)に出演しています。これは、もしかしてキャスティングがジュリエット・テイラーか?と疑いたくなるくらい、ウディ映画の出演俳優を集めています。かつ、ウディ演ずるZは、ウディそのものの役柄らしいですし、これもウディ映画の1本に入れても問題はないでしょう。

でも、何でウディがアニメ映画なんかに出演する気になったのだろうか?という大きな疑問が残ります。出演のいきさつについては監督本人のコメントがあるので引用してみましょう。

ダーネル 地下鉄のコロニーで暮らす一匹のアリがどうも自分はそこにうまく溶け込めず、どこかに自分にあった違う世界があるんじゃないかと考える。こういうコンセプトに決まった時、ウディ・アレンみたいなキャラクターだなと思っていた。でも、本当に出演してくれるとは考えてもみなかった。
ジョンソン ウディ・アレンを説得するために、彼の「バナナ」のセリフに合わせて、彼が昆虫になったようなサンプル・アニメをPDI(コンピューター・アニメのデザイン会社)で作った。それを見せたらすごく興味を持ってくれて、出てくれることになったんだ。
ダーネル でも、声の録音はやっぱりNYでやることになった。しかも、彼の指定するスタジオでね(笑)。これだけの大スターの顔が揃ったことは、私たちにとっても嬉しいこと。何しろ、それだけでも注目されるんだから。でも彼らをキャスティングしたのは、あくまでも演技が出来るからだ。彼らの演技によってキャラクターにリアリティが加わり、観客がアリ達の存在を信じるようになるのさ。

ミルクマン斉藤氏は、「アンツ」の構造が、ウディの初期の作品「バナナ」のそれに酷似していることを指摘しています。どちらもとりえのない主人公が、ひょうんなことから革命のリーダーになる話ですものね。「バナナ」にエキストラ出演しているスタローンも参加してることだし、まず、間違いないでしょう。そうすると、上のインタビューで、まず、「バナナ」のアニメを作ったという話も、納得がいきます。キャスティングに関わらず、ウディ映画を念頭においてあることは明らかな点が、あちこちに見つけることができます。例えば、最初のクレジット。最近のウディ映画同様、アルファベット順に名前が並んでいるし、最初は、ウディの専売特許とでも言うべき、精神分析のシーンから始まります。分析医の声の担当は、ポール・マザースキー。ウディの主演映画「結婚記念日」(91)の監督ですよね。そして、ラストの背景に見えるのは摩天楼。ウディは、アリでもニューヨ−カーというわけです(笑)

この映画を観るうえで、参考になる作品を挙げるとすれば、前述した「バナナ」(71)。フリッツ・ラングの大傑作「メトロポリス」(28)などがいいかな。アニメ技術の向上を確かめるには「トイストーリー」(95)を観るのも良いかもしれません。

参考・引用文献:「アンツ」劇場用パンフ、「ウディ・アレンe/mブックス」(カルチュア・パブリッシャーズ刊)、「キネマ旬報」98年12月上旬号。p.98永野寿彦氏のテキスト、「weird movies a go! go!」(ミルクマン斉藤責任編集、光琳社出版刊)