結婚記念日 SCENES FROM A MALL(1990)    <BACK>

監督:ポール・マザースキー
出演:ウディ・アレン、ベット・ミドラー

<物語>LAに住む結婚16年の仲むつまじい夫婦。夫は弁護士、妻は心理学者で、最近出版した結婚に関する著書がベストセラーになり、すっかり有名人。17回目の結婚記念日の日、2人は夜のパーティのためにショッピング・モールへ買い物へ行くが、そこで、夫が浮気を告白し、妻が大激怒。何とか事が収まったと思ったら、今度は妻が浮気を告白し・・・。

「結婚記念日」は、「ザ・フロント」(75)以来15年ぶりにウディが、他人の作品に出演した映画である(ゴダールの「リア王」の特別出演は除く)。ポール・マザースキーは、この作品を「アニーホール」を含むウディ映画ののパロディとして作っている。しかも、共演相手が、コメディエンヌの女王、ベット・ミドラーと聞いては観ないわけにはいかない。

思い出してください。「アニーホール」で、ウディたちがカリフォルニアに行くエピソードがあります。カリフォルニアはちょうど真夏のクリスマス。ウディ扮するサンディは調子が悪くなり倒れてしまうと言うオチがつく。「結婚記念日」はシュッピングモールで話が展開するので、わかりにくいかも(といってもずっとクリスマスソングが流れてますが)しれませんが、やはり12月のLAが舞台です。しかも、ウディはそこの住人として設定されているのです。ウディ扮する夫は「ニューヨークが文化の中心だ」という友人をバカにし、「NYじゃなくて、LAに住んでて良かった」と言うセリフをはきます。ユダヤ人さえバカにしている発言をするのです(それはいつもか(笑)自虐的なギャグ)。

だいたいB・ミドラーが扮する妻は、分析医(心理学者)みたいなものだし、絶句させるのがウディの服装です。ラルフ・ローレンしか着ないような彼が、妙なスポーツ・ウェアを着て、かつ珍妙なポニーテールまでしているのです。そもそもショッピング・モールなどアレンのイメージから判断して、絶対行きそうにないところだし、モールの中でアレンは、ずっとサーフボード(!)をかかえているのです。モールで入る映画館(一応、アート映画「サラーム・ボンベイ」を観る。もちろん観客はインド人がいるだけでガラガラ)は途中入場だし(「アニーホール」ではベルイマンの映画に途中入場しなかったことを思い出してください)ウディ・ファンには「あれ!?」とか「おや!?」とか思うエピソードが続出します。とにかくアレンの映画らしくないことを延々やっている映画なのです。こんな映画に本人が出演している!アレンが、直射日光に当たっていること自体事件です。

この映画には、他にもウディ的記号がたくさん見受けられます。原題「SCENES FROMA MALL(ショッピング・モールの風景)」は、明らかにウディの大好きなベルイマンの「ある結婚の風景」のもじりでしょうし、ウディが「ラジオ・デイズ」でパロったフェリーニの「アマルコルド」のテーマ曲が挿入歌として使用されています。余談ですが、マザースキーは彼の映画にフェリーニを出演させることに成功しています(「Alex inWonderland」)。ウディが「アニー・ホール」でフェリーニに出演を要請したのは有名な話ですよね(結局、マクルーハンが出演したシーンです)。そして、最後はミドラーが歌うコール・ポーターの曲で終わります。ウディがしょっちゅう、自作で使っている作曲家ですね。

ちなみにミドラーの浮気相手として、TVに登場するひとはP・マザースキー監督本人。マザースキーは「アニーホール」のパロディとしか思えない「マイアミ・ラプソディ」(95)にも出演。この作品には、ミア・ファローもでています。「アンツ」では、ウディの分析医をしていましたね。マザースキーもニューヨーカーだということを頭に入れておくと面白いかもしれません。こんな映画を作ってしまったのだから。

ベット・ミドラーについて少し触れておきましょう。強烈な個性を持ったコメディエンヌという印象が強いとお思いになる方が多いかと思いますが、彼女は、元々歌手として出発した人なので、アメリカではレコードや定評のあるステージでの活動も有名です。だから、彼女の映画には必ずと言っていいほど歌うシーンがあります。なにしろグラミー賞を5度受賞歴のある大スターなのですから。80年代は一連のディズニー映画のミニーマウスとして怪演してきた彼女ですが、全編歌を盛り込んだ「ローズ」「フォエバーフレンズ」「フォーザボーイズ」もおすすめです。とにかく、ミドラーのパフォーマンスが楽しい。ちなみにウディ関連では「世界中がアイ・ラブ・ユー」の出演者リストに名前が挙がっていましたが映画には登場しませんでした。また、アメリカの3大"おばさん"コメディエンヌ共演で話題となった「ファースト・ワイフ・クラブ」(96)では、ウディと共演経験のあるD・キートンやG・ホーンと出演しました。マザースキー作品には「ビバリーヒルズ・バム」以来、2度目の出演。

ニック(ウディの役)はカリフォルニアに住んでいて、頭はポニー・テール。その服装ときたら僕には鳥肌の立ちような代物なんだ。とにかく見たときはたまげたよ。本当に最低なんだけど、考えてみればロス住まいの弁護士役にはぴったりなんだよね。(ウディ・アレン)

参考・引用文献:「ぴあシネマクラブ洋画篇」(ぴあ刊)、「結婚記念日」劇場用パンフ、「e/mブックス ウディ・アレン」(カルチュア・パブリッシャーズ刊)