カイロの紫のバラ The purple rose of cairo(1985)  <BACK>

監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ミア・ファロー、ジェフ・ダニエルズ、ダニー・アイエロ、エド・ハーマン、ダイアン・ウィースト

もし、スクリーンの中に飛び込めるのならば、映画の登場人物と恋が出来たなら・・・・。映画ファンなら、誰でも持っている夢を映像化したのが「カイロの紫のバラ」だ。ウディのミア時代の傑作群の中でも、とりわけ人気の高い一本。その後の常連となるダイアン・ウィーストが初めてウディ映画に登場した作品でもある。カンヌ映画祭国際批評家連盟賞受賞。

<物語>30年代のアメリカ。定職のない夫はいつも遊んでばかり。毎日、映画館に通うことだけが生きがいになっているセシリア。そんなある日、仕事を首になって、しょげているセシリアの前に、映画「カイロの紫のバラ」のヒーローがスクリーンから抜け出して・・。二人は恋に落ちるのだが・・・。

「カイロの紫のバラ」を語るとき、必ず引き合いに出されるのが「キートンの探偵学入門」(24)。映画技師を演ずるキートンは、うたた寝をしているうちに、映画の中に入り込んでしまうというお話。映画の中に入り込んでしまうというところが、この映画の引用ではないかといわれているがウディ自身は否定している。

これより、もっと近いかなと思うのがフェデリコ・フェリーニの単独デビュー作「白い酋長<シーク>」(51)。田舎町からローマに新婚旅行にやってきた一組の夫婦。妻ワンダは、これが機会とばかりにホテルを飛び出して、映画「白い酋長<シーク>」の主演男優リヴォリに会いに行く。何も知らない夫は、失踪した妻を探してあたふたする。映画の撮影現場までやってきてしまったワンダは、リヴォリと対面。撮影の合間に二人は親しくなっていくが、そこにリヴォリの妻が現れて、妻に言い訳をするリヴォリにワンダは幻滅。夫の元に帰るというお話。ウディ自身、「トーキーのコメディでは、最良の一本」と絶賛している作品だ。

映画の最後に登場する劇中映画は30年代のミュージカル映画の最高峰の一つとされる傑作「トップ・ハット」(35)。これで4作目となるフレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースのコンビが、奇跡としか言い様のないダンスを披露する一本ですね。ブロードウェイ・スターのジェリーは、公演先のロンドンでモデルのデイルの一目惚れ。あの手この手で彼女のハートを捕らえようとするが・・・というお話。ちなみに「カイロの紫のバラ」に引用される名場面で流れる曲は「チーク・トゥ・チーク」。フェリーニの「ジンジャーとフレッド」(85)の元ネタというかモデルは、この2人ですね。ちなみに「ジンジャーとフレッド」には、ウディ・アレンの物まね芸人まで登場したりします(笑)

この映画のヒロインは「現実と虚構」の恋の、どちらを選ぶかで悩むわけですが、「現実と虚構」はウディ作品の一つのテーマでもあります。「ボギー!俺も男だ」では、「カサブランカ」のヒーロー、ボギー(H・ボガート)が主人公に恋の助言をしているし、近作の「誘惑のアフロディーテ」や「地球は女で回ってる」では、「現実と虚構」の混乱がさらに加速化しています。

参考・引用文献:「カイロの紫のバラ」劇場用パンフ、「ウディ・オン・アレン」(キネマ旬報社)、「フェリーニを読む」(フィルムアート社)、「週刊ザ・ムービー」No.56、「ぴあシネマクラブ洋画篇」(ぴあ)