その日、エルデリオンは森の中にいた。

高い木々に囲まれ、遙か上から陽光が輝く中、
馬を進めていた。
供の男が、
かなり後ろからついて来ているのを少し振り向いて、
確かめる。
さらりとした明るい栗色の髪が、頬にかかった。
彼の、白い端正な顔立ちが、
木漏れ日を受けて更に白く輝いた。

うっとりとする花の香り。

森と花の国。エルデリオンはこの国が好きだった。
彼の
王国とは違い、民は皆おおらかで暖かく、
男達は狩猟をし、女達は花を植える。
森の中に幾筋も差し込む陽の光は
まるで神がその民を祝福するかのように
荘厳に感じられた。

チャリ・・・。剣の、触れ合う音がする。
ふと、惹かれるようにエルデリオンは馬を進める。
木々の間から、
一瞬長い金の髪が輝き ひるがえるのを、見た。
彼が手綱を取って馬を急がせると、供の男は隙なく気づき、
その後を追った。
離れないように。けれど、距離を置いて。

木々が開けたその場所で、金の長い髪の主が
華奢な白い手に、その人には少し大ぶりな剣を
持て余すかのよう持ち上げながら、
息を切らしているのが見えた。
彼は馬を止めてその姿を見つめた。