偽パラシュートに気をつけろ!!
(ネタ提供:あしながさん)

「パラシュートってナニ?」
パラシュートっつっても落下傘のことじゃないですよ。
A・L・ブレゲが発明した天真折れを防ぐ耐震装置「パラシュート・サスペンション」の事です。
現代の
インカブロックみたいなもんですね。
1800年〜1870年頃のスイス・フランス物に多く見られます。

この時代の時計をコレクションしている人にとっては大して珍しく無い機構ですが
どういう物かについて語られる事は少ないので、ちょっと御紹介しようと思います。


(修理前の写真)

今回はこのムーブを参考に御説明しましょう!
モノは1840〜1850年頃のインデペンデントセコンドです。(独立秒針時計)
レバー脱進機で22石。この時代としてはかなり多石です。
結構酸化してて、上天真&二番車軸折れがあり、状態はあまり良くないですね。



テンプはチラネジ付きのバイメタルですが、切れ目が半分しか入っておらず、
温度補正にはなっていません。何のためのバイメタルなのか?(笑)



アンクルはこんな形。初期のレバー脱進機では、変な形のレバーをたまに見ます。



日の裏側に秒針の輪列があります。(写真は修理後)
独立秒針では毎度の事ですが、秒針輪列に引っ掛かりがあり
スムーズに動きません。(泣)



独立秒針の制御は一枚歯の特殊歯車で行うタイプ。(コレと同じ)



ガンギ横に付いているレバーが秒針スイッチです。



OVH前の写真なので汚いですが、これがブレゲの発明したパラシュート・サスペンションです。
黄色い矢印で指している丸い部分は、良く見るとC型である事が判ります。(スリットが見えますね)
ちなみに緩急針に付いてるのは、バイメタルの温度補正緩急針です。



分解するとこんな感じです。テンプのブリッジに石が無い事を御確認下さい。




パラシュートの天真を押さえる部分は二層構造になっており、下に穴石、上には受け石が固定されています。
上下のパーツを固定するネジがありますが、このネジが長くなっていてブリッジにネジ止めされている物は
全く弾性が無いため、パラシュートの形をしただけの偽パラシュートです。



御覧のように、パラシュートの丸い部分をC型にする事でスプリング性を持たせてあり、
天真折れをここの弾性で逃がして防ぐわけですが、

ここがただの○穴になっていたり、
○部分のネジがブリッジまで貫通して
ネジ止めされている物は、形だけ真似た偽のパラシュートです。


※ 実は形だけ真似ただけで、
全く機能をなさない擬似パラシュートというものが
  想像以上に多いらしいので、これから購入される方は御注意下さい。





上の写真のネジ(矢印)がブリッジまで貫通して固定されているものは偽パラシュートです。
石の入っている部分が二層構造になっていない物にも御注意ですよ。

今回参考にしたムーブは一応本物のパラシュートの形態を取っていますので、
本物と言って良いと思いますが、にしてはあまり弾性がある形には見えませんね。
(ブレゲの物はもっと繊細な作りです)
実際パラシュート側の天真が折れていましたし、役に立ってないやんけゴルァという感じです。(笑)



ムーブの酸化除去&OVH後、仮ケーシングしたところです。綺麗になったでしょ?
針はアクリルの仮針。秒針のみゴールドハンドつけてますが、地板と同じ色なので見難いですね。
(写真4時位置に秒針が写ってます。)



1810年頃の独立秒針ですと、殆ど石が使われていませんが、このムーブは
若干時代が下りますので、秒針輪列にもふんだんに石が入ってます。
ブリッジのネジを締めると、輪列が止まるので、紙を挟んで微調整してます。



裏側はリバプールジュエルのような大きい石が並んでてなかなか迫力あります。
4番とガンギのブリッジにガタがあり、ネジの締め付け具合で時計が止まる事があり、
この辺は結構弄られた感がありますね。

天真折れ&二番車軸折れの修理でどうにか動くようになりましたが、
秒針輪列はまだ調整が必要です。時計は1時間で1分位遅れますが、
ここはヒゲの調整で合わせられるでしょう。

追記
二番車軸折れと曲がりの影響で、秒針車に引っ掛かりがあり、どうにか止まらずに動かないものかと
色々やって見ましたが結局ダメで、二番車軸を新たに削り出して修理しました。

精度は修理後24時間で+2分ですから、テンワが変形している割にはまぁまぁですね。
秒針も24時間止まらずに動いてますので、これで修理完了とします。

一応END