第三話
あれから数時間歩き続け、一つの森の前にまで到着した。
魔物の存在が肯定となされた今、この森にそれが潜んでいないか判断はできない。
だが、この森には人が住んでいるらしい。らしいというのも、村人は魔物等の危険性から、村から出る事を拒んでいる為、はっきりとその存在が確認できているわけではない。
向こうも向こうで、過去に衝突があったらしくそれ以来、といったところらしい。
結局、地理の足らなさもあることから、助力者を求める為にも森を通る事にした。
とはいえ決して小さく無い森の中の、ほんの一画にある居住区を見つけられるとも思えない。運がよければ、程度の期待で森の中を歩き始めた。
森には大きな木がたくさん生えており、日の光の殆どを遮り、ほのかな木漏れ日が筋のように通していた。
森の中を歩くこと十数分。その気配に気付いた。
まだ魔物と人との気配に違いが判らない俺にとって、戦闘態勢を取るべきか否か、難しい判断に迫られる。
人である可能性は低いにしても、仮にそうだとしたら、ここで戦意のある行動を取るというのは後々問題になりかねない。
しばらく様子を見ようかと、音を消して歩き始めると、その気配はすぐ側の茂みにいるようだった。
――このままでは、人であろうと誤解の一つで攻撃されかねない。魔物なら尚更だ――
そう思った矢先、茂みに潜む存在が先に動いた。茂みから一本の矢が放たれると共に、その存在は高く跳躍したのだ。
「ちっ!」
とっさに槍を向けるも、矢の軌道を少し逸らす程度にしかならず、矢が掠めた頬から血が伝う。
体勢を直すと、大きな木の枝に飛び乗った存在に槍を向けた。
――身軽な奴だ……捉え切れるだろうか……ん? ――
木の枝で弓矢を構える存在は、人間の少年だった。
10代初めくらいで、光沢を持ちつつ光を吸収するような、とても濃いダークグーリーンの髪を持ち、とても黒に近い緑色の双眸がこちらに向けられている。目の下には短めの緑色のメイクが、数センチほど下に伸びている。
その髪の色とお揃いとでも言うように、暗い緑の半袖のシャツと膝が微かに見える程度のズボンを穿いている。
少年は幼さの残る顔立ちだが、その瞳は年不相応の強さを湛えた光があった。
「…………え……ひ、と?」
少年は間の抜けた声を上げ、呆然と俺を見つめ返している。
「ああ、俺は見ての通り人間だ。危害を加えるつもりは無い。そいつを下ろしてくれ」
「あ……え、あ! すみません! ごめんなさい!」
少年は弓矢を捨てると、口早に謝りだし土下座までしだしたのだ。その言動から、とても生真面目そうな印象を受けつつ、ほんの少し狼狽もした。
「いや、そこまでする必要は無い。こんな所を一人でいる人間はそうそういなかろう。それに単なるかすり傷だ」
「あ、う……本当にすみません……」
起き上がりこそしたものの、少年は謝ってばかりいる。
「もう謝らずともいい。……君はこの森に住んでいるのかい?」
「あ、はい。そうです。もしかしてうちの村に用が……?」
「……色々とあってな。王都まで向かう上で、助力者がいないかと思ってな」
「旅人……なのですか? あ、僕はキズクっていいます。その、よろしかったら名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ん、ああ……」
少し答えに困った。この名前で答えるべきか否か。ほんの少し悩むも、実はその心は決まっていたりする。
昨晩のうちに自らを称する名を考えてはいたのだ。ただ、それを本当に口にするかの勇気が必要だった。
それは師父から教わったものの一つで、ある古の大国の言葉であり、そこで絶対無二の才能を持つと言われた王子の名前である。
ガイ・サンデスド。
ガイ、炎の民や炎を操る者を称する言葉。サンデスド、砂の民や砂を操る者を称する言葉。そしてある砂漠に存在していたらしい砂の民の大国、その王家であるサンデスド家。第十二世第二子の名。
この王子はその絶対たる力を持ちつつ、若くして謎の失踪を遂げると共に、王家は没落の道へと辿っていった。俺はその話を聞き、純粋にガイ・サンデスドという王子を尊敬し羨望した。
だがらこそ、この名を語る事は彼への冒涜にあたるのではないかと、その一歩を踏み出すか否かを悩んでいたのだ。
「俺は……ガイ・サンデスド」
自分にも言い聞かせるように、ゆっくりと噛み砕くようにして俺は言った。
「ガイ……サンデスド……とてもいい名前ですね」
少年、キズクは年相応の柔らかい笑みで、そう答えてくれた。
「ありがとう。俺もとても気に入っているよ。それで……君の村まで案内してくれるとありがたいのだが」
「はい、任せて下さい。……あの、ガイさん」
「ガイで構わん。で? どうかしたのか?」
「はい……その槍は……」
怪訝そうな表情で、キズクは槍を見つめつつ訊ねた。
「ああ、これのことか。名前までは知らないが、白骨化した兵士姿の魔物から手に入れた」
「……まさか骸骨槍兵……?」
「ん……だから名前は知らないのだが……そうだな鎖かたびらと縦と円盤型の甲を着けていた」
「もしかして……倒したんですか?!」
「ああ。だが、お前の方がよっぽど強そうに思えるが、そんなに驚く事なのか?」
「驚く事ですよ! それに槍以外持っていないみたいですし、まさか素手で?」
いきなり叫び、見るからに興奮しているキズクに対し、俺は首肯して答えた。
キズクは眼を見開き、ヒーローでも見るような眼差しを向けてくる。俺はそれから逃れようと、少し顔を背けながら言った。
「別に、それほどの事でもないだろう……」
「何言っているんですか! 王都近辺の町ならいざ知れず、こんな辺境で素手で骸骨槍兵を倒せる人なんてそうそういないですよ!」
文字通り拳を振るいながら力説するキズクに気迫負けして、声のトーンを落としながら言葉を投げかける。
「そうなのか……とりあず落ち着け」
「あ、はい……失礼しました」
「全く。まあ退屈はしないな……。そういえばキズクの村はどこら辺に?」
苦笑しつつもそう訊ねると、キズクは明るい笑みを浮かべ、俺の目の前に立って口を開いた。
「ここが僕等の村、狩人の村です」
木々に囲まれる中、昨日立ち寄った村以上の家が建っている。中には、木の上にまで家があったりする。
「これは……凄いな……」
呆然と辺りを見回す俺を、キズクは楽しそうに見つめている。
「そういえば……狩人の村といっていたが……」
「はい、ここの村自体、殆どが狩人で成り立っているんです。動物の肉や毛皮、時には魔物の装備品などを近隣の町に売って生活しているんです」
それ自体はたまになんですけどね、と付け足すキズクは楽しげだった。殆どの旅人が消えたのであろう時代が到来したこの世界で、自分の村について語る事なんてそうそうないのだろう。恐らく、それをとても楽しんでいるのだろう。
そんな事を考えていると、目の前に筋肉隆々のがっしりとした大きな男が現れた。
「あ、父さん。この人は旅人のガイ・サンデスドという方です。何でもバリスに行くにあたって、同行者を探しているそうなんです」
キズクの発言に俺は目を疑った。この大男とキズクはあまりにも似ても似つかないのだ。完全に、自分のペースが乱れた俺は、少しどもりながら挨拶をする。
「え、と。どうも……」
「この御時世で、旅とはずいぶん勇気がありますな。ま、何もないところだが、ゆっくりしてってくれ」
キズクの父親は、その見た目通りに豪快な性格なのか、大口開けて笑いながら肩を叩いてきた。
「はい。ありがとうございます」
その砕けた調子が少しだけ俺に余裕を与え、はっきりとそう喋る事ができた。
「ところで、うちの息子がご無礼をしませんでしたか?」
その言葉に、キズクは大きく肩を震わし、俺はというときょとんと呆ける。
「いえ……この子は例外ですが、村から出る時は大抵、複数名で出るものでして。その頬の傷、一人でいる所を魔物か何か勘違いして、この子が矢を放ったとかではないかと思いましてね」
そこまで言われてやっと意味が飲み込めた。キズクの怯え様も含めてだ。
横目でキズクの様子を窺うと、形容しがたいほど暗い顔で、お仕置きを目前にした子供のようだった。
それを俺は軽く溜息を吐きながら苦笑し、苦笑いをしながら口を開いた。
「いえ、お恥ずかしい事に道中で転んだ際に、運悪く木の枝に引っ掛けましてね」
その言葉に、今度はキズクがきょとんとしながら、こちらに向き直って見つめてきた。
「はっはっはっ! そういう事でしたか。なに、恥ずかしがる事などありませんよ。人間、転ばずに学べるものなんて大した物じゃない」
キズクの父親は一笑しそう語った。こういう事を言う辺り、生真面目そうなキズクと親子だというのは、何処か納得してしまう。流石に言葉遣いまではそうもいかないようだが。
「そうだ、ガイさんでしたかな。今日はここでお休みになられるのですか?」
「そうですね……誰か協力してくれる人を探さなきゃだし、無理に野宿する必要も無いですし……そうします」
「では、何処か部屋の空いている家でも探しましょうか。場所が場所だから宿屋がないのですよ」
「そうしていただけるとととても助かります」
「父さん、ガイさんをうちに泊まってもらうのは駄目かな?」
キズクの父親が歩き出す前に、正面に回りこみそう提案した。
「そうだな、あーガイさん。この子と同じ部屋になるかもしれませんがよろしいでしょうか?」
「俺は構いませんよ。むしろ、そこまでしていただいている身として、これ以上の不満なんかありませんよ」
「はっはっはっ。では、綺麗な所じゃありませんが、我が家に招待しますよ」
程なくして、村の一番奥の家に着いた。周りの家より若干大きい事と、建っている位置、キズクの父親が挨拶に出た事を考えると、この親子はこの村の長にあたる人物なのだろうと推測できた。
キズクの父親はほんの少し、いくつかの部屋を回ってくると、ベッドが二つある部屋に通された。キズクが言うには、部屋はあるにはあるが、客人をもてなせる状態じゃないらしい。
俺は慎ましく遠慮したのだが、結局押し切られ、キズクの父親は腕によりをかけて、豪華なディナーを作るそうだ。嬉々として部屋を出て行き、足音が遠のくのを待ってキズクは口を開いた。
「ガイさん、その、ありがとうございます」
「気にすんな。お前の親父さんも言っていただろ。転ばずに学べるものなど大した物ではない」
「でもあの時、僕は一方的に……」
「そううじうじ言うな。それと、呼び捨てでいいと言ったはずだ」
少々可笑しくて楽しみがいはあったが、俺は話題を切り替えた。
「……失礼ですが、ガイさんは何歳ですか?」
「俺は16だが……それがどうかしたか?」
「僕は13歳です。ガイさんの方が年上ですから、呼び捨てには出来ません」
あまりにも正論だった為、少し言葉を失った。とは言え、あまりにも当たり前だし、こんな事を強制すべきでもない事から、まあいいかと考えた。
「それもそうだな。そういう事であれば仕方もあるまいか。そういえば……あの時お前は、何だったかな。そうだ、バリスと言っていたが?」
「国の名前であり、王都の名称でもあるんです」
その答えになるほど、と俺は相槌を打った。
「それにしても、ガイさんは何処から来たんですか? 王都バリス。バリス国。……とても一般的な事ですよ?」
唐突の質問に、真実を語るべきかどうか悩んだ。が、この少年があまりにも可笑しく、それと同時に何処か、弟を持ったような気分がしていた俺は、全てを話そうと思ったのだ。
「これから言う事は全て真実だ。と言っても信じられない事ばかりだろう。まあ、半信半疑で聞いてくれ」
俺は、俺が別の世界、それこそ魔物も魔王も存在しない世界から来た事。魔物との戦闘の事。そして、村からここに来た事。その全てを話した。
「……なるほど。じゃあ、ガイさんはクライム様の……?」
「クライム? 誰だそれは」
「前の魔王を倒した異世界の勇者様の名前です」
「勇者クライム、ねえ……だが、どうだろうな。断定するにはあまりにも要素が足らない」
「でも、きっと『魂を紡ぐ戦士』だと思います」
「ほう。何故そう思う?」
「魔物もいない平和な世界から来たのに、素手で魔物を倒すような人が、『魂を紡ぐ戦士』じゃなければ他に誰がいるんです」
「はは、なるほど。面白い答えだが、俺のいた世界は決して平和ではなかったんだ。人々の平和は人の手によって崩される。それに、俺は生きていく為にその渦中に飛び込んだ身。強くなくては今まで生きてこれなかったよ。もっとも強いからこそ、その戦士に選ばれたのか、その戦士だからこそ強いのか……」
自分のいた世界での自分の姿を顧みて、俺は苦笑しながらそう語る。
「……人の手によって平和が……とても信じられません……」
「まあ、そうだろうな。だが、俺等はそれが当たり前としてしまうぐらい、起こりうる世界なのさ。ま、俺が『それ』かどうかも、王都に行けば何か判るかも知れないな」
「……」
何故かキズクは黙り込んでしまい、俺は続ける言葉も見当たらず、キズクが口を開くのを待った。
「……ガイさん!」
「いきなり大声でどうした?」
「僕も……僕も、旅に連れてってください!」
何処か思い詰めた表情で、キズクは俺を凝視した。
「俺としては願ったり叶ったりだが、一体なんでだ? そんなにここの生活が不満なのか?」
「そういうじゃないんです。僕は自分自身について考えたい。そして、もっと……もっと強くなりたいんです」
真剣であり、凄い剣幕で言われた俺は、彼を茶化す事もできずにその想いを受け止めた。
それに少なからず感銘も受けている。少し年寄りじみて言えば、こんな幼いとも言える若者が自分自身についてだなんて、自分の世界の馬鹿共にも吐かせたい台詞だった。
「俺は構わない。だが、俺の一存でお前を連れてはいけないよ。お前の両親の許可は無いのだろ?」
「そう、ですよね。わかりました……今から聞いてきたいと思います」
「俺もついて行こう。俺からも言った方がいいだろうからな」
キズクに先導され、この家の台所に入っていった。こういう話をこういう場所でするものなのかと考えたか、深くは突っ込まずに流そうと思った。
とは言え、何て言い出せばいいか考えあぐねていると
「おや、ガイさんにキズクか。どうかなされましたか?」
エプロン姿のごつい大男は首だけをこちらに向けている。
「はい……えーと、申し上げづらいのですが、もしよろしければ彼に、協力者として付いて頂ければ喜ばしい限り、みたいな……」
言いながら、あまりにもふざけた事を言っている事に気付き、最後の方は完全に尻込みをしてしまっている。
「旅に、ですか? うちの息子を?」
キズクの母親らしき人物は口に手をあて驚いている様であり、父親の方は眼を細め、こちらを睨むように見ながら言葉を返した。
「はい、二人で話し合った結果、その……」
完全にしどろもどろしている俺に、キズクは助け舟を出す。
「父さん。僕は旅に出たいと思っているんだ。この生活が嫌いな訳じゃない。父さんだって母さんだって皆だってこの村だって、ここの森だって大好きだ。だけど、それでも僕は旅に出たいんだ。とんでもない我侭だと思うけど、どうか許して欲しい……」
「ふーむ」
腕を組み思案している様子のキズクの父親を見て、少し余裕が生じた俺はもう一押しとばかりに口を開いた。
「俺は、キズクが旅に出たいその想いを聞きました。とても純粋な想いでした。俺は協力者が欲しいのは確かですが、今はキズクの力になりたい。でっち上げてでも協力者として、旅をさせたいと思っているんです」
いい言葉が見つからず、かなり際どい一押しとなってしまった。これで第三者が息子の事を、などと言われれば、成すすべなく引き下がる事になるだろう。
次に来る言葉を様々に予測していたが、その全てを裏切る発言が俺らに向けて放たれた。
「初めからそのつもりだったが……まさか自分から言い出してくるとは思わなかったな。なあ母さんや」
「ええ、ここまではっきりと主張する事も無かった分、親としては嬉しいわね」
「え?」
「へ?」
俺とキズクは、二人して鳩が豆鉄砲食らったような顔で呆然とした。
「キズク。お前には外の世界を見せてやりたいと思っていたんだ。だが、一人で旅をさせるには少し心許なかったんだ。俺は一目見て、ガイさんならこの子を託せると思ったんだ。迷惑かもしれませんが、どうかこの子の事を頼みます」
「父さん……」
涙腺を刺激されているのか、眼が潤んできているキズクを横目に俺は精一杯の返事を返した。
「はい、勿論ですとも」
「そうと決まれば早速支度しなくちゃいけないけど……あたし達は手が離せないから、今のうちにキズクが用意するのよ」
キズクの母親は、まるで子供の遠足程度の物言いでキズクに言った。
「うん、解った。狩りの時ぐらいの装備でいいのかな?」
「そうだな、荷物が多すぎても邪魔になるだけだし、そのくらいが丁度いいかもしれんな。必要なものは途中の町で買っていけばいい」
「じゃあ、僕は早速用意してきますから!」
言うが速く、風のようにキズクは部屋を飛び出して行った。後に取り残された俺は、一礼くらいして部屋を後にしようかと思った矢先呼び止められた。
「ガイさん……本当を言うと、まだ不安なんですよ。あなたが持っていた槍を見れば、それなりの実力者だとは思いますが、この先の道中ではその程度の力ではとても及ばないのですよ」
その言葉に何処か影があり、本当に息子のキズクの事を気にかけているのだと悟れた。
「俺は……訳ありでこの世界の事を殆ど知らない。だから、この先、どれほどの強さを持った魔物がいるかも予想がつかない分、その安全性を確約する事はできません」
そこで一旦言葉を切る。キズクの父親は、俺の言葉を待っているのか何も言わない。
「ですが、ご安心させられるかは不明ですが、俺が持っていた槍を装備していた魔物は、素手での慣らしにもならなかった、とだけは伝えておきます」
「素手での慣らしにも……。いやはや、これはとんだ杞憂になりそうですな。それを伝えてくださって助かりましたよ。これで心置きなく、キズクを外の世界に羽ばたかせてやれます」
その言葉を聞き、俺は一礼をして部屋から退出をした。
「あ、ガイさん。遅かったですけど、何かあったんですか?」
部屋に戻ってくると、バックに数着の着替えなどを詰めているキズクがいた。
「そうだな、お前は本当にいいご両親の元に生まれてきたって事かな」
「へ……? まあ、とてもいい親だとは僕も思っていますけどね」
キズクは明るく、はっきりとそう答えた。きっとそれを誇りにすら思っているのだろう。
それを見て、ほんの少し数日前までの自分を振り返り、胸が締め付けられる思いがした。だが、今はキズクのその表情を、ただ見つめるだけに専念をした。
夕食は本当に華やかなものであり、とても申し訳ない思いをしていた。ただ、キズクの門出でもあるのだから、とまたもや押し切られ、無理やりにでも食べさせられたのも事実だった。
夕食後はくつろぎながら、キズクとこの村の事や、俺の世界の事を話していた。
最も、しばらく両親の元を離れる訳だから、俺は極力家族の団欒を優先させてはいた。
そして、夜も深まった頃、明日からの旅の為にと、床につく事にした。
こんなにも先行きのいい旅の中、これから俺は一体どこへ向かうのか。大きな期待と、ごく微量の不安を乗せて、俺は夢の大海原に揺られていった。
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