第七話
やっとの事で町に辿り着いた。
先の戦闘であたしは体力が磨耗し、思うように動けなかった。
確かさっきの少年はこっちに来たはず。きっとこの町にいるはずだった。
「あのー、すみません」
近くにいたおばさんに話しかけた。
「ん、どうしたんだい、お譲ちゃん達?見かけない子だね?どこの子だい?」
「いえ、旅をしてるんですけど……」
「まあ!三人で?大変だったでしょう?うちに泊まらないかい?宿代が勿体無いでしょうに」
「あ、いえお構いなく……。あの、包帯でぐるぐる巻きになった、155cmくらいの少年見ませんでしたか?こっちの方に走っていったはずなんですけど」
「包帯でぐるぐる巻きねえ……悪いけど見てないわね。荷物でも盗まれたのかい?」
「命を助けられたんです。そのお礼がしたくて……」
「ふうん、そうかい。まあ、ここの町長だったら何か知ってるかもしれないよ。ここの中央にある家がそうだから、行ってみたらどうだい」
「本当ですか?ありがとうございます。それではあたし達はこれで……」
「はいよ。何で旅してるか知らないけど、頑張んなさいよ」
「あ、はい。でわ」
足早にその場を去っていく。
「会えるのかな?さっきの人と」
「さあ、でもすっごい怪しい格好だったじゃん。本当は会うのには気が引けるんだけどなぁ」
「まあまあ、でも、あの人が一緒にいれば、相当助かるんじゃない?」
「うーん。ま、中身さえよければ、あたしは構わないけどね」
外見では?と言いかけた言葉を飲み込んだ。
今更始まる事じゃない。
「お、中々いいじゃん」
「は?」
シェルナは近くにいた青年を見てそう呟いた。
何で染めてるかは解らない深緑の髪、袖を捲くったシャツにジーンズをはいた長身の人だった。
シェルナのあまりの注目さからか、その人がこちらに気づいた。
「ん?君達見た事ないな。もしかして旅人?」
「え、ええ……」
「はい、そうなんですよ」
いきなりシェルナが割り込んできた。
「すごいねえ。女の子三人だけでなんて」
「はい、でも……これから先、あたし達だけで大丈夫かなー、て思ってるんですよー」
あろう事かいきなり見ず知らずの人に、付き人の勧誘をし始めた。
「へー、俺なんかでいいんだったら構わないよ」
男の人が少し詰め寄る。
「ちょ、シェルナ、今は町……」
「本当ですか?でも、いきなり悪い気が……」
「いいっていいって、そんな事気にしなくても……」
そう言ってシェルナの肩に手を置こうとした瞬間、シェルナはすっとその手を避けた。
「やっぱり、結構です」
「は?ちょ、なん……」
途端に、シェルナは見下したような顔をして、
「初めに女の子の身体を触ろうとする奴は、どーせ、『たらし』だもの。お断りよ」
流石に、この言動には、相手も勘に触ったらしく、
「は?ざけんなよ。俺が『たらし』だと?」
「ちょ、シェルナ。いきなり、それは失礼なんじゃないの。せめて、好色だとか何とか他の言い方が……」
「大して変わってねーよ!」
「はいはい、失礼しました。さようなら」
「ふざけんな。人が親切に助けてやろうとしたのに、結構だ?お断りだ?あんまし人を馬鹿にしないで貰いたいな。失礼極まりねぇんだよ」
「ふん、あんたに問題があるんでしょ。悪いけどこっちに非は無いの。これ以上関わらないでくれる?」
「んだと?てめぇ」
「女の子に手上げるつもり?」
「………………け、付き合いきれるか。とっとと、何処へなりと行って、くたばっちまいな」
「残念ながら、そうは、死にませんよーだ」
青年は、そのままどっかに行ってしまった。
「シェルナ。今のは流石に問題有りよ」
「そーだよ、シェル姉。今まであそこまでは言わなかったのに、急にどうしたの?」
「う、それが、あたしも解んないの。何であそこまで言っちゃったんだろう?」
「ははーん。さては、シェルナ、さっきの人に一目惚れ?それで、ついついとか」
「さあ、何とも。ただ、これっぽっちも惜しみも、何もってとこね」
『あんだけ言っといて、何もは酷いんじゃ……』
シェリナちゃんが渋い顔して、こっちを見ている。恐らく、いや、確実に同じ事を思ったのだろう。
「ま、いっか。ささ、早く町長のところに行こーよー」
「?町長ならわしじゃが」
目の前に老人が立っていた。
「………………あ」
「?どうしたんじゃ?わしに用があるんじゃないのか?それにその姿、ふむ、旅人さんかね」
「はい。あの、包帯でぐるぐる巻きになった人を、ご存知ありませんか?」
「?ふぅむ……すまんな、見た事ないな」
「そう、ですか」
「その者がどうしたんじゃ?」
「命を助けられて、それでお礼がしたくて。あ、それと、この町で強い人っていますか?その、この先々を考えると、もっと強い人が必要なんです」
「強いか……性格に難があるが、わしの孫が鍛冶屋を継いでいるんじゃが、盾代わりにはなる。連れていってやらんか?」
「鍛冶屋、ですか」
「うむ、もちろん、ここら辺の魔物程度で、退く奴じゃないぞ」
「…………アリア。さっきの奴じゃ、ないよね」
「まさか、ね」
あの腕っ節からしてありえなくもない。
「さっきの奴とは?」
さっきの青年の身なりや特徴を、簡単に説明した。
「…………あの馬鹿孫。どこにもおらんと思ったら…………まったく、また森にでも行きよったか」
「じゃあ、さっきの馴れ馴れしい、いかにも女ったらしのが奴が?」
シェルナが食いかかるかのように言った。
「ふむ、お嬢さん。それは勘違いというものじゃよ。あやつは、ろくに女性と接した事が無い奴なんじゃよ。息子達が早くに死に、わしに負担を掛けさせまいと、小さい頃から、何かを造ったり、武器防具の製造に励んでいたんじゃ。鍛冶屋を継ぐためにな。同い年の少年からは人気じゃが、女の子は皆、『親父くさい』と言ってのう」
ほっほ、と笑いながら老人はそう語った。
「…………うそ……」
「あーあ、悪い事しちゃったんじゃない?」
「あ、ん、うー」
決まり悪そうに唸るシェルナ。
「そう思われるような事をした、孫が悪いんじゃ。気にせんでくれ」
「…………はい」
それから、すぐに宿屋に行って、休む事にした。
「結局、収穫0かー、てあたしの所為、か」
珍しくシェルナが落ち込んでいる。
励まそうかと思っていると横からシェリナちゃんが耳打ちしてきた、
(そっとして置いて下さい。たまには良い薬ですから)
なんともまあ、素晴らしい理由でそっとしておくのだろう。そんなにいつもひどいのだろうか?
ま、それはともかく、無闇に起きてる必要性が無い。
「さて、寝ますかな……」
「あ、そうだ」
「?」
「ここから、八日でバリスに行くか、約二十日かかって、15戦士の封印を見に行ってバリスに行くか、なんだけど?」
「ああ、そっか……倍以上かかるのかー。でも、行ってみようかな」
「OK。じゃ、明日買出しして、誰か途中の町まで、付いてきてくれる人探して出発かな」
「そだね、遠回りするんだから急がないとね」
こうしてあたし達は、謎の少年の事を諦め、先を行く事になった。
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