第十一話


不自然な壁。洞窟の入り口。
そこにあたしが立っただけで、それは大きく口を開いた。
「何か拍子抜けするね」
「……まぁ、そうだろうが気をつけて進むべきだ。罠の一つあってもおかしくない」
カツン カツン カツン
…………。
カツン カツン カツン
………………。
カツン カツン カツン
……………………。
そして、変な部屋に辿り着いた。
「ラッシング、何もねーじゃねーか」
「う、五月蝿い!こういう場に罠があるのは相場だろう!!だいたい十五戦士が眠る場所に、罠一つ張らない彼の英雄である二人が間違っているのだ!!」
「でもラッシュさん……。アリアお姉ちゃんがいないと扉が開かないんだから……罠、必要ない気がするんだけど……」
「…………」
シェリナちゃんの一言でラッシュ君が詰まった。
とりあえず、三人から目を離し部屋の中を改めて観る事にした。
部屋の一番奥には長剣を持った青年と、その前に不思議な石像が並んでいた。
「あの石像……おかしくない?何処も結合していないよ…………」
「ああ、置物にしては摩訶不思議だ。にしても…………」
いつの間にやら、ラッシュ君との会話から抜け出たオメガさんが真横にいた。ふぅむ、と一度唸って辺りを見渡した。
「伝説の英雄が封印されてる割には殺伐としているなぁ」
巨大な部屋。
岩石が剥き出しの壁。
装飾の一つ無い。
「……気を抜くな。あの石像…………」
やっと会話を終えたらしいラッシュ君が後ろから呟いた。
「?あの石像がどうしたの?まさか動くなんて」
ズ ズズズ
石像が動いた、ように見えた。
「……感じるんだ…………あの石像から…………強い殺気が!!」
「クォォォォォォ」
透き通るような咆哮を、動き出した石像が高らかにあげた。
「ど、どうしよう。あんな大きいの、倒せるわけが無いよ」
「アリア、落ち着くんだ。俺らが先に行くから、君達はよく見ているんだ。特にアリア、君はいい眼をしているのだから」
「……なぁ、『俺ら』ってことは、やっぱ俺も?」
「当たり前だ。行くぞ!!」
「アリア……。あたし達、どうしたら……」
「……………………」
―――『よく見ていろ』?まさか、ラッシュ君はあの石像の倒せるか解らない……?もしそうだとしたら、あたしに血路を探させる為の時間稼ぎに……?―――
そうであるなら、急いで『穴』を見出さねばならない。


「はぁぁぁ!!」
オメガの懇親の一撃。だが、
キィィィィン
いとも容易く受け止められてしまった。更に石像は反撃に打って出たのだった。
キィィンキキィィィィンキィィン
「く!そ!お!」
―――まじぃ!さばき切れねぇ!これじゃ何時、一撃を貰ってもおかしくねぇ!!―――
一体どのくらい切って、太刀をさばいたか解らなかった。
ただ言える事はそろそろボロの出る
「オメガ!!」
そこへ勾玉紋の解放の為の呪紋を詠唱していた、ラッシングが飛び込んだ。
ガキィィン
オメガに振り下ろされそうだった剣を、カタールで受け止めたのだった。
「く!重い、一撃だ、な」
「ああ、シャレになんねぇぜ」
二人は絶妙なコンビネーションで、交互に斬りかかり一旦間合いを開けた。
「くっそー!!吹き飛びやがれぇぇぇ!!!」
オメガが飛び出し、大きくハーケーンで薙いだ。
ガキィィィィィン
石像は真っ向から受け止めた。
どうやら対したダメージを与えられてないようだ。
が、石像の身体が、浮遊した身体がその一撃で震え、『バランス』を崩したかのようだった。
結合点無き身体であるのに、結合されて定形となっている、ように見えた。が、決してずれる事の無かった胴体のような、頭のよう物体達が明らかなずれを生じた。
「な、なんだこいつは…………?」
石像はユラユラと動き、体制が直ったのか再びオメガ達を襲いだした。
「クォォォォォォ」
石像は大きく剣を振るった。


「あれ?今のは…………?」
石像の身体が震えた?
それはどういう意味なのだろうか?
それが一体何だというのだろうか?
何だか解らないが、それが今とても大切な事だという事ははっきりと理解できた。


ソレガ フリョクスルチカラト チカラガミッセツニカランデイル モノダトシタラ
うん、そうだとしたら…………
浮力する力でなくても、大きな力が加わる事であの物体は崩れる
ソウ オオキナチカラガ クワワルダケデ ホウカイスル
…………誰?あたし、じゃない。あなたは誰?
アタシハ アタシハ シイテイウナラ アナタ
…………え?
デモ カンゼンニ アナタデハナイ
……………………
イマハ オシャベリシテイル ヒマハナイヨ
…………あ
イマナラアレヲ タオセルデショ
でも、どうやって…………
ホントウハ ワカッテルヨ
そんな、解るわけ…………
アイテニ テヲソエ ソシテ
ホラ アトハワカルデショ ネ?
うん、解る…………。
どうすればいいのかを…………。
どうしたら倒せるのかも…………。
そして、その力があたしには…………。


「アリア!!」
突然歩き出したアリアは石像の前で立ち止まり、その表面に手を添えた。
歩き出したアリアを止められず。そして今、オメガですら彼女を引き離せない。
いや、離せないのではない。
何かの力が加わっているようだった。特殊な、魔法のような何かが……。
「アリア!!戻って危険だわ!!!」
しかしアリアからは、反応が無かった。
「…………オメガ」
「こんな時に何を冷静にしているんだ!!」
「れ、冷静なものか……アリアの……彼女の額を見るんだ…………」
微かに見える少女の額。
何かが光っているようだった。
「む?あれは?…………ま、まさか、あれは……!」
「…………彼女は俺達が思っている以上の、力を持っているのかもしれん」
オメガは生唾を飲みながら呟いた。
「………………」
アリアが何かを呟いた。が、誰にもそれは聞き取れなかった。
その直後、光をともなった大きな真空の渦が、石像の身体を駆け抜けた。
「クォォォ」
その身体は大きく揺れ、数メートルほど吹き飛んだ。
「クォォ ォォォォ ォォ」
ピシピシ ビシビシン
石像の身体が大きくひび割れた。
「アリアお姉ちゃん…………一体何を……したの?」
二人にはアリアの額が見えていなかった。
それを知れば、おのずと納得をするであろう。
「クオ ォォォォ」
剣の部分で身体を支えるようにし、こちらに向き直った。
その瞬間、アリアが崩れ落ちた。
「!!」
ラッシングは駆け出していった。
アリアの前でかがみ彼女を抱き起こし、額にかかった髪を手で払った。
―――…………紋章が消えている。あの紋章は…………確か……―――
そうアリアの額には、淡く光る紋章があった。あの時、あの瞬間だけ。
「ラッシング!!」
石像が悠然と剣を構えていた。
「オメガ!ハーケーンでこいつを叩き壊せ!!」
「りょーかい!!!」
オメガが大きく跳躍し、ハーケーンを振り下ろした。
バキィン
オメガの一閃で石像は真っ二つになり崩れ落ちた。
「ふぅ、やっと倒せたんだよな?」
「ああ、そのようだな」
「アリア!!」
「アリアお姉ちゃん!!」
シェルナと、シェリナが駆け寄ってきた。
「大丈夫だ。眠ってるだけだ」
「よかったぁ」
二人は今にも泣きそうだった。
「む…………」
石像が眩く光りだした。
運命を刻まれた少女は自分自身の謎を残し、『新たな一歩』へと踏み出したのだった。

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