<田中県政>


[検証田中県政]知事公約「理想と現実」 五輪帳簿問題など手つかず(9月21日)

<読売オンライン 2001年9月21日より>


車座集会、ガラス張り知事室は実現 現実に阻まれ後退、撤回も

 一年前の知事選当時から数々の公約を掲げてきた田中知事。ガラス張りの知事室や、各合同庁舎で執務する「どこでも知事室」など実現した公約もあるが、当初の予定とは違った形になったり、まったく手つかずのままのものも少なくない。公約の実現状況から、田中県政の「理想と現実」を検証した。

 多くの公約の中でも最も注目を集めてきたのは副知事問題。今月六日、知事は、旧自治省出身の阿部守一・県企画局長を副知事に起用する意向を明らかにし、この問題に決着を付けた格好だが、当初の公約は「公募で一人、県庁内から一人」。その後、「公募で一人」に変わり、さらに「当面は選任しない」と転々。県議会でもたびたび追及された。

 読売新聞長野支局では先月、「副知事の公募」について知事と県の担当部局との間でどのような検討が行われたのか、県情報公開条例に基づいて関連文書の公開請求を行ったが、開示されたのは県議会答弁資料だけ。知事は今月七日の会見で、「わずか数回の面接では見極めきれないということに“すぐ”気が付いた」などと述べ、知事の気持ちの中では早い時期から公募は断念していたことを示唆したが、公言はしていなかった。

 同様にまったく実現していない公約の「長野五輪招致委帳簿紛失問題の調査、解明」「知事公舎の一般公開と活用」についても公開請求を行ったが、開示されたのは、知事公舎に関しては県議会資料などだけ、五輪帳簿関連も答弁資料と知事に対する県からの説明資料だけだった。少なくとも文書の上からは、公約の実現に向けて実質的な検討が行われていた形跡はない。特に知事公舎については、知事は六月県会で「県政転換の象徴的な場所にしたい」と意欲を見せていただけに、文書の不存在は不可解だが、担当の管財課では「知事や政策秘書室からは全く話はなかった」としている。

 一方、ガラス張りの知事室や県民との車座集会は公約通り実現。知事室で知事に直接意見や要望ができる「ようこそ知事室」も「予約なしでも」という条件は無理だったが、これまでに十回の実施で、七十二組、二百七十人が訪れている。

 「現実」の壁に阻まれ、後退、撤回した公約もある。病院同士で患者情報をやりとりできる疾患ICカードはプライバシーの問題から困難と判断して撤回。移動県議会も「県議会の皆さんからの論議があれば」と発言を後退させた。「県民の声ホットライン」は二十四時間電話で受け付けるとの公約だったが、電子メールやファクスが主体となっている。

 田中知事の場合、県政の現場を知らないままに行った公約なので、実現できなくても無理はない面もあるが、五輪招致委帳簿紛失問題や知事公舎の問題は、これまでの県政や、知事選の対抗馬だった前副知事を批判する材料として知事が取り上げてきたものだ。選挙で知事に投票した県民の期待を裏切らないためにも、今後の公約実現に向けた取り組みが注目される。