第二章
「ちゅんちゅん、ちゅんちゅん」
小鳥が鳴いた。
朝の目覚まし時計代わりのもので、捺揆はゆっくりと体を起こした。
まだ眠いのか体を起こした状態で固まっている。
少し開いたカーテンから漏れる太陽の光は寝起きの捺揆をカンカンと照らした。
「はっくしゅん」
冬の朝はとてつもなく寒い。
捺揆はぶるっと身震いして、早々にベットにもぐりこんだ。
しかし、捺揆は悩んでいた。
少し開いたカーテンから漏れる太陽の光が二度寝の邪魔をするからだ。
閉めようにも布団から出るのがめんどくさくて出られない。
「あぁ、誰か閉めてよ〜」
せつない声で嘆いていた。
すると、その声を聞いていたかのように階段を上ってくる誰かの足音がした。
捺揆はそれを知り、眠っているような仕草をした。
部屋の扉が開いて、捺揆の母が入ってきた。
「早く起きなさい。今日から休みだからってごろごろしてちゃだめですよ。」
と大声で言って、半開きのカーテンを全開にした。
カァっとまぶしい光が部屋中を照らした。
「わあ。まだ眠いのにぃ」
捺揆の行動は裏腹に出た。
寝ているふりをしていれば、きっとカーテンを閉めてくれるだろうと思っていたのだ。
捺揆の母は悔しがっている娘を尻目に
「朝御飯できてるから早く降りてきなさいね」
と言って部屋を出て行った。
「あぁあ、今日から休みだっていうのにぃー」
しかめっ面をしながら言った捺揆はしぶしぶ布団から這い出て、zipパーカーを身にまとった。
「今日もいい天気だね」
窓越しに見ながらそう言っている捺揆にひとつ気づいたことがあった。
となりの家に車が止まっている。
「あれ、たしか引越ししたんじゃなかったっけ・・?」
少し不思議に思った捺揆だったが、おいしそうなパンの匂いがして、おなかが鳴った。
おなかに手をあて、
「せなかとおへそがくっつきそう♪」
と歌いながら、部屋を後にした。
一階に下りると、朝ご飯の用意がしてあり、既に誰かが食べていった形跡があった。
「おとうさん、もう会社行ったの?」
「そうよ。お父さんには冬休みなんてないからねえ」
ふふっと笑って捺揆の母が言った。
父より後にご飯を食べる機会がない捺揆はしみじみ思った。
「お父さん、パンの耳嫌いなの?」
母は捺揆の声に気づかなかったのかキッチンで鼻歌を歌いながら、目玉焼きを作っていた。
あまりにおなかがすいていたのか、捺揆は父が残していったパンの耳を残さず食べてしまった。
最後の耳を食べるとき、母が朝食を持ってきた。
「あら。食いしん坊ね」
「だって、おなかすいてたんだもん」
捺揆は、朝食のおいしそうな匂いに笑みがこぼれた。
朝食を終え、テレビのワイドショーを見ていたとき、ふと窓の外を見た。
いなかったはずの隣の家に人影が見えた。
「あれ?戻ってきたのかな?」
テーブルで何かしていた母が捺揆の独り言に気づいて言った。
「そうそう、隣のお宅ね、新しい人が入ったのよ」
「そうなんだぁ。どんな人?」
「まだ見たことはないけどね。そのうち挨拶にでも来るんじゃないかしら?」
昔、隣の家には幼い頃から仲が良かった友達が住んでいたが、父親の仕事の関係で引っ越してしまったのだ。
近所に友達がいなくなってしまって悲しみに浸っていた頃があったせいか、新しい人が入ってきたことにうれしさを感じた捺揆であった。
★第三章に続く★
●Noveに戻る●