福山競馬場

昭和24年9月18日開設
コース:右回り1周1000m・直線220m

 ほんの十数年ほど前まで、「アラブのいない競馬場」など国内には存在しなかった。それは南関東でもそうだったし、中央でもそうだった。そればかりではない。サラブレッドのいない「アラブ専門の競馬場」というのも、地方競馬では常識のように存在した。福山の他にも、春木、園田、姫路、益田、……。戦後復興の貴重な「産業」となり、高度経済成長期の自治体を支えた公営競馬にとって、それは、丈夫で長持ち、かつ、連闘の利くアラブの存在なくしては到底成り立たないものであった。そんな戦後日本の歴史を見守り続けたアラブ(アングロアラブ)だが、血統的淘汰が現実的になったのが、前述の如く、平成の世になったあたりであった。時代が流れるに従い、「アラブ血量25%以上」の規定を守れなくなり、やむなくサラブレッドを導入する競馬場が続出した。そんな情勢の中、まず平成7年に中央競馬がアラブ競馬を廃止、南関東も翌・平成8年に全廃、他の競馬場も追従するに至った。(若い世代の皆さんは、鎌倉記念やブルーバードカップがアラブの重賞だったなんて知ってる人は少ないでしょう。)
 それでもサラブレッドに転換できるだけの資金がある競馬場はまだいい。サラはアラブに比べてそもそもの値段が高い上に手入れに手間がかかる。しかもアラブのように連闘がそうそう利くものではない。仮に、馬体のメンテナンスのために、人手が2倍〜3倍必要で、さらに、アラブなら連闘できるものが、サラなら1ヶ月に1回しか出走できないとすれば、人間も馬も施設も大幅に増員・増設が必要で、単純計算で約10倍以上の経費が必要となる。ならば、転換するにあたって、この不況が続く世の中で、劇的に馬券売り上げを10倍にすることが可能なのか・・・答えが「NO」であることは、誰にでも考えの及ぶことだろう。

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広島県といえば世界遺産「原爆ドーム」。ちなみに、福山市は文化圏的には岡山との繋がりが深い。
 ところが、「アラブ最後の楽園」福山がなにやら雲行きが怪しい。5月9日には、アラブ補助金不正受給事件でリーディングトレーナー・番園一男調教師ら計6人が逮捕され(容疑は詐欺)、1ヶ月間の開催自粛に追い込まれたのを皮切りに、7月7日には、広島県馬主会のゴルフコンペにおける賭博容疑で平賀修二、福山平成大助教授池田征二両容疑者(ともに馬主会の元副会長)が逮捕された。さらに7月9日には、この日のメーンレースの勝ち馬ユノタイラントのドーピング違反(カフェイン検出)と、まさに「不祥事のデパート」状態で、このまま消滅するのではとの危機感を抱かずにはいられないような状況に陥ってしまっている。
 そんなわけで、「消えてなくなって後悔しても始まらない」とばかり、旅支度もそこそこに広島にやってきた。参戦の1日前に、世界遺産にも登録されている原爆ドームを表敬訪問した。今年は「戦後60年」という節目の年なのである。そして、翌平成17年8月28日、残暑の福山競馬場にやってきた。この地を踏みしめるのは実に10年ぶり2度目のことである。できれば、中央ゆかりの産駒、「怪物」アキヒロホマレを父に持つキタカザールと「中央最後のアラブ」ムーンリットガールを母に持つキングユキオーに会いたかったが、あいにくこの日の出走はなし。ポロシャツにサンダル履きの高齢者が客層の多くを占める「一昔前のうらぶれた雰囲気」の中で1Rから参戦したが、パドック診断は曇りっぱなし、苦し紛れの「おニャン子ロータリー」も不発の中、5Rの「薄皮饅頭」で一矢報いたのを機に、次の6Rでガチガチの大本命を掴み損ねると、「チョイ負け」の自分を納得させ、早々と競馬場を後にした。

 ※註 この取材をするにあたり、警備本部より撮影許可をいただいております。(撮影日…平成17年8月28日)

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 福山競馬場は昭和24年に福山市営競馬として発足、翌年には広島県営、呉市営、広島市営も参入し、戦後復興を支えたのち、昭和49年に現在の形に落ち着きました。昭和61年には騎手等の競馬法違反行為で2開催が中止になる不祥事を乗り越え、日本唯一のアラブ専門競馬場としてその砦を守り続けています。

 写真は4コーナーの攻防。他場に比べきついカーブなので見ごたえ十分。だけど、このカーブがサラブレッドのスピード競馬ではNGなんだそうです。(もちろん改修するには多額の費用がかかるわけで・・・)

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 ホームストレッチでの激しい先行争い。腹の底に響き渡るような力強い蹄音がサラブレッドにはない味わいです。(写真は1Rの模様。黒川騎手の出鞭を受けたイマリナドラ号が先陣を切る。)

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 昼食はスタンド2階の「尾道ラーメン」にしました。濃いめの醤油味で、スープに豚の脂身をふんだんに使っているところが特徴です。

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【左】女性ジョッキーの池本徳子騎手。1Rをフジノトップヒメ号で、道中最後方から3着に追い上げるパフォーマンスを見せてくれました。
【右】2001年5月26日、1日7勝(騎乗機会も7回)の快挙を達成した渡辺博文騎手。写真はこの日の3R、エリモスピネル号に勢いをつけて騎乗。いざ出陣です!



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 パドック脇には競馬場創立50周年を記念して平成11年に建立された馬頭観音があります。1Rから4連敗を喫したところで発見、さっそく手を合わせると続く5Rで32倍をヒット!やはり御利益があったのでしょうか。

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この日唯一のあたり馬券。馬番の1〜5をボックス買いする「薄皮饅頭」で3240円!


 老朽化のため閉鎖されたスタンド、錆び付いた遊具が痛々しい遊園地、厳しい経営に加え、度重なる不祥事によるイメージダウン。そして、若者が少ない場内。だが一方では、冠レース、馬名募集などの経営努力もなかなかユニークです。長引く不況と血統淘汰の中で、福山競馬は暗黒の中に光明を見いだすことができるでしょうか。