おいしさとは何か???

 おいしさとは味覚・口腔内の粘膜、歯への触覚、嗅覚(フレーバー flavour)の刺激によって感じる主観的なもので、周りの条件に支配される。また、その時々の生存に必要な栄養と関係が深く、必要と不必要を見分ける関所ということも出来る。 ゆえにおいしい食物というのは一人一人に相違差があるのはもちろん、気温、日常の食習慣、栄養状態などからくる地域差、時代によっての変化、栄養状態による嗜好の傾向、年齢による変化などが認められる。

 それらの条件は特に、その条件における栄養的に必要なものが何かということが密接に関係している。

 

栄養状態と嗜好

 栄養状態は嗜好にかなり密接な影響を及ぼす。特に、動物性たんぱく質が嗜好に及ぼす影響は甚大である。統計的に、動物たんぱく質の摂取量が多くなるに従って、人間は淡泊に味を好むようになり、少なくなるに従って濃厚な味を好むようになることが知られている。世界的に見ても、動物動たんぱく質の摂取量が多くなるに従って、肉類でもいわゆる脂っこい豚肉脂身の多いところよりは、赤身や鶏肉のように脂っこさの少ないものが要求されるような傾向が統計上ある。これは、良質のたんぱく質摂取量の多いほど、生理的に特異動的作用が大きく、またその、持続力が長いためである。つまり、良質のたんぱく質摂取量が少ないと、基礎代謝が下がり、体力を早く消耗するため生理的に飢えた感じとなり、栄養的に濃厚であると感じられるような濃い味を本能的に嗜好するためである。

 

生活環境と嗜好

温度:温度が低いほど、塩辛いものが好まれ、高いほど酸味があるものが好まれる。この現象は直接の気温には左右されず、その地区の生活環境における気温に支配される。

 

時代と嗜好

 日本において、嗜好は濃厚な味からより淡泊な味へと変化している傾向にある。これは、栄養状態や環境、特に冷暖房の普及の度合いなどが深く関わっている。

 

年齢と嗜好

 年齢によっても嗜好は異なる。一般に年をとると淡泊なものを好むようになる。その理由は成長期に人間は生存のほかに成長に要する余分の栄養が必要であり、そのために、栄養が多いと感じる濃厚な味を嗜好するようにあるからである。そのため、若い頃はは油気の多い料理を嗜好し、年をとると淡泊な味を嗜好するようになる。

 

労働と嗜好

 労働の強弱と質の違いも味の嗜好の違いとなってあらわれる。汗を流すような肉体労働が強いほど塩分の多いものを要求するようになり、精神的な労働が強いほど、甘い味もものを欲するようになる。

 

おいしさと心理学

 おいしさを左右するものとして心理的なものは大きな影響力を持っている。因子としては食卓の雰囲気、料理や食器の色彩、料理の形、選択の自由性、食品に対するイメージなどがある。

 

食卓の環境:そこにいる人の過半数の人に食欲があることが大切である。鶏の実験によると、空腹と満腹な鶏が同数の場合、集団は空腹のほうに引きずられるが、満腹な鶏が1匹でも多いと引きずられない。

 

:一般に明るい色、特に赤、オレンジ、黄などの暖色は人間の消化作用や食欲を促進する自律神経を刺激し、地味な色や寒色は食欲を減退させる傾向がある。特に黄緑は食欲減退の傾向が強いので、緑の野菜を調理するときは気をつけねばならない。

 

料理の形:コロッケなどでは、女性の体の寸法比率からきたといわれ、人間の目に大変美しく安定して見えるといわれる黄金比率 5:3(厳密には1.618:1)に近い形のものがおいしいと感じられることが統計的に証明されている。安定感が安心感につながりおいしいと感じられるのだと思われる。

 

選択権:自分の食べたいものを自由に選択できるかどうかということもおいしさに左右する。自由選択権があることはおいしさに対し、プラスにはたらく。

 

イメージ(数):数字、1〜10では5が一番おいしく感じられ、4が一番まずく感じられる。4や9が一般に死や苦に通じるとして忌み嫌われているのが食べ物の味にまで影響しているのである。これらは日常の習慣に非常に合致する。