Fool for Love
「シャリマーの恋」
夜、とあるクラブにて。若者の熱気が溢れる盛り場でシャリマーが人を待っている。何人もの人が彼女に話し掛けてくるが肝心の待人は現れない。助けを求めて来たミュータント、ドナはシャリマーと同じ野生系ミュータントであるため、シャリマーが彼女を宥めて安全な場所へ連れていく任務についたのだった。そのことについてリングの通信機を通してアダムと話していると時間に遅れたドナが現れる。直ぐに隠れ家に連れていこうとするシャリマーにドナは身を隠す必要はなくなったと言って突然断った。ジェネティック・セキュリティーに追われる危険を話してもドナは聞かずに去ってしまう。後を追おうとするシャリマーの前に彼女をナンパしようと男が近付いたため彼女は光る獣の目を見せて脅かしてドナの後を追うが、既に店を出て黒い車に乗って姿を消してしまった。
誘った男の車に乗って店を後にしたドナは人気の無いところで男とデートをしていた。しかし突然ドナの体を異変が襲い、苦しみ出した彼女は野獣の目を光らせうなり声をあげ、心配する男を殴り倒すと側にあった高いフェンスを飛び越えて走り去ってしまう。
サンクチュアリではアダムとシャリマーがドナの心変りは典型的な否定で自ら破滅の道を進もうとしていることを懸念している。ジェシーからドナの名前がジェノマックスのシステム上にあることで奴等が彼女を狙っていることが報告された。しかしミュータントに隠れることを強制出来ないため彼等はもう一度説得しようと試みる。
エックハートの部屋に一人の女性ジェノマックス社員が入っていく。有能な監査人のベルで社内の内部監査の結果、設備費と大型コンピュータの不正使用や改竄された請求書から社内で無許可の研究が行われている節があることを発見したため、上司にも報告せずにエックハートの社内メールアドレスに直接連絡を入れたのだった。ベルは必ず犯人を捕まえることをエックハートに約束して部屋を去る。
ジェシーとブレナンがサンクチュアリのホログラム道場で格闘訓練をしているとエマが参加したいと言う。しかし精神鍛練ではないのでエマには無理だと二人は断る。機嫌を損ねたエマはジェシーに後頭部へ衝撃を受けたイメージを飛ばして、ブレナンの仕業と勘違いしたジェシーはブレナンに報復をするが、二人とも階段を降りていくエマの様子を見て彼女の仕業だと知る。
再度ドナを説得しようと彼女のアパートを訪れたシャリマーはアダムの指示でドナの部屋を調べる為に侵入する。ジェシーとブレナンはドナと一緒にいた黒い車の男のことを調べるために例の店に来ていた。そこへエマが手伝うと言って店に入ってくる。乗り気のしない二人を放っておいてエマは店の従業員にテレエンパス能力で記憶を掘り起こさせて男の乗っていた車のライセンスナンバーを思い出させた。
ドナの部屋に忍び込んだシャリマーは部屋に隠れていた男に突然襲われる。彼女が身をかわすと男は常人ではない動きで攻撃を仕掛けてきた。その身のこなしと光る獣の目から男もシャリマーと同じ野生系ミュータントと判る。お互いに警戒した激しい格闘から徐々に相手に同じモノを感じたかのように格闘を楽しむ二人。最後にシャリマーの蹴りによって部屋にあったベッドの上に飛ばされた男の上にシャリマーがまたがって押さえ付け、ドナの部屋で何をしていたか詰問する。男はドナの知り合いで「治療」を施していると言う。シャリマーがその「治療」について詳しく聞こうとした時アパートの隣人が騒ぎを聞き付け警察を呼んだことが分かったので、二人は取りあえずその場を引き上げることする。だが男はシャリマーに魅惑的な印象を残していったのだった。
ミュータントXの本拠地に戻ったシャリマーの説明を元にアダムがホログラム映像でモンタージュを作成している。そのデータを全てのデータバンクで検索すれば男の正体が判ると言う。彼女が嬉しそうに男の特徴を話している姿を見て、アダムは男の瞬間的な野生系の魅惑に彼女が夢中になっていることを見抜き、難しい体内での科学変化の為に相手の存在の魅力に舞い上がっている状態だと説明した。だが難しいことは置いておいてもシャリマーは男に人目惚れの恋をしたしまったのだ。
監査人のベルが先程シャリマーと戦った男のコンピュータ内をチェックしていると男がコンピュータのハードディスクに異常は無いと言い、ベルの真意を探ろうとする。ベルはその場を誤魔化し立ち去るが男はベルの行動に自分の身に危険を感じる。
アダムがシステムスキャンでドナの治療をしていた男の身元を割り出した。男の名はリチャード・サンダース、博士の資格を持つジェノマックスで研究助手をしている者だった。リチャードが敵方にる者だと知ったシャリマーは驚くが、アダムはジェネティック・セキュリティのダミー企業であるジェノマックスの社員全てが関わっている訳ではなく大多数は知らずにつとめている場合もあると言う。シャリマーはジェシーにジェノマックスの社員証を偽造させて自ら乗り込みリチャードにジェノマックス社の本当の姿を知らせようと焦る。アダムは危険だと言って彼女を止めようとするが、シャリマーは自分は子供ではないと聞かずに行ってしまう。
ベルはエックハートに無許可の研究を行っている者を突き止めたと報告する。容疑者のコンピュータに仕込んだ囮ファイルが開かれた時に彼女自らアクセスして容疑者の犯罪行為を暴く計画を整えていた。エックハートはベルの野心的な態度を見て考え、容疑者を自分で逮捕するように指示を出し、彼女の部下としてジェネティック・セキュリティの隊員を数人つけることにする。
ドナを乗せた車のナンバーからアダム達は彼女のデートの相手がジャック・ミッチェルだと言うことを突き止める。ジャックにドナと何があったのかを探るように指示を受けたブレナンとジェシーは自分達2人だけで行くと言ってまたエマの機嫌を損ねてしまう。
ジェノマックス社ではベルの仕掛けた囮ファイルにアクセスする者がいた。リチャード・サンダースだった。確認をしたベルは早速リチャードを逮捕しようと行動を開始する。ジェノマックスへ偽造社員証を使って単身乗り込んで来たシャリマーはリチャードに、ドナにどのような治療をしたのか尋ねた。普通の人間になりたがっていたドナにリチャードは突然変異した遺伝子を元に戻す血清を開発して投与したこと、治療は数週間かかり遺伝子が再編成されるとミュータントととしての能力はなくなると言う。その時リチャードのコンピュータのセキュリティが突破されて彼の存在が監査人に知られてしまった。リチャードは素早くディスクをコピーしてベルの部下を倒してシャリマーと共に逃げ去ってしまう。
エックハートはベルからリチャードを取り逃がしたと言う報告を聞いていた。ベルはリチャードがミュータントであることは知らなかったと弁解するが、エックハートは第一線で活躍するのなら敵のことをもっと知っておくべきだと諭す。しかしベルはこのことはエックハート自身も知らなかったとし、リチャードのファイルからやっと彼の情報を得たと言うベルの態度をみて、エックハートはまた彼女が野心の為に彼の気を引こうとしていることを読みとった。リチャードの研究内容は残ったハードディスクからその半分の内容が明らかになった。エックハートはベルにリチャードを捕らえて残りの半分も手に入れるように指示を出す。
ジェノマックス社を抜け出して来たシャリマーとリチャードはドナのアパートに隠れることにした。ジェノマックスの追ってを警戒しながらもシャリマーはリチャードと共にいることが嬉しくてしょうがない。そんなシャリマーを不審がるリチャードに彼女はアダムに言われたことを話した、野生系の魅惑にハマったと。しかしリチャードは自ら開発した血清を打ってミュータントとしての能力を捨てる決意を語る。シャリマーは今はもうミュータントではない自分を想像出来ないと言うが、彼は自分がミュータントであることをどうしても受け入れられず、自分自身の手で遺伝子治療を行うべく努力して博士号を取りジェノマックスに入り込んだのだ。それでもシャリマーはミュータントである自分達は病気ではないというが、リチャードによれば「普通の人」ではないと言う。今の「特別」である状態に対して「普通」の生活に憧れることはないのかと聞くリチャードに彼女は時々思うと答える。だが、今は違うと。そして二人はそのまま部屋のベッドに倒れ込む。
指示通りの街でジェシーとブレナンはあの夜ドナと一緒にいた男、ジャック・ミッチェルを探し当てた。ジャックの車にワイパーに置かれていた駐車違反勧告の紙を車に乗ろうとやって来たジャックにジェシーが手渡してドナの話を聞こうとした隙をついて、ブレナンが放電で車の鍵に細工をしてしまった。ドナの行方を尋ねるジェシー達にジャックはあの晩いきなり獣のように襲い掛かって来た以外何も知らないと突っぱねる。ジャックが隠し事をしていると決めつけている二人は更に質問を浴びせるが、そこへまたもやエマが登場してジャックの心を読んだ結果彼は嘘もついてないし何も隠してないと言う。2度のエマの登場で何となくエマの言いたいことが分かってきた二人はジャックへの質問をやめにして立ち去る。その際ブレナンはジャックの見ていない隙に彼の車のドアに放電してセキュリティアラームを作動させて悪戯をしていく。
リチャードと至福のひとときを過ごしたシャリマーに彼は彼女にも血清を打つことを勧め、何ものにも邪魔されない「完璧」な時間を継続させようと提案する。十分に納得出来ないなら勧めないが、「完璧」な恋は一生に一度だけかも知れないとのリチャードの言葉はシャリマーの心を激しく揺り動かされた。
サンクチュアリの実験室でアダムに体調を整えられ、電圧の調節がしやすくなったブレナン達の元へシャリマーがリチャードから受け取った普通の生活を望むミュータントにとっての「魔法の薬」である血清を持って来た。アダムもブレナンも薬を調査するまでそれがミュータントにもたらすモノは幸か不幸か判らないと言うが、その言葉をシャリマーは自分を止めとうとしている言葉と受けとった。ブレナンは二人の雰囲気を察し後は二人で相談しろとその場を去る。シャリマーはリチャードと二人で普通の女として幸せな生活を送りたいと望むが、アダムは決心する前にここでの生活等色々なことを考量して欲しいと話す。だが大きなものを失う恐れもあることを考慮して、3日は自分の心に真意を問いかけることが大事だとアドバイスする。
ミュータントの実験施設を見下ろせるエックハートの部屋ではベルが彼女の知り合いの検死官から、最近DNAを変えられたミュータントの遺体を発見した情報を報告している。興味を示したエックハートはその遺体を自分の研究室に運び込むようベルに命令する。
エマが一人でホログラム道場内で格闘訓練をしているとジェシーがやってくる。実はエマを調査のメンバーに加えようとせず彼女をないがしろにしてしまったことを謝りに来たのだが、ジェシーが言い出す前にエマはその心を読み取ってしまっていた。観念したジェシーはお詫びに彼女と一緒にトレーニングを始めることにした。そこへシャリマーが血清を打つかどうかで賭けをしようと提案しにブレナンがやって来る。ジェシーは始めはそんな彼の提案を酷いと言いながら掛け率を変更すればOKと言う。しかし人生でもっとも大切な決断をしようとしている友人の問題を賭けの対象にすることそのものにエマは怒って道場を去ってしまう。
研究室に運び込まれたドナの遺体を見ているエックハートとベル。ドナの死因は原因不明の中枢神経系の機能停止と診断が下されていた。ベルがドナのDNAをジェノマックスのシステムで調査した結果、リチャードの研究内容と一致したことが判明したのだった。
ドナのアパートではリチャードが自分自身の最後の治療を終えたところだった。シャリマーにも彼と同じ価値観を持つようになれば3週間後には彼女ももうミュータントではなくなる。リチャードはシャリマーの意志を尊重して決して無理強いをすることはなく、血清を使わずに二人が上手く行く方法を探ることもできると話すが、シャリマーはリチャードを失いたくない一心でアダムの言葉や全ての葛藤を振り切り血清を打つ決心をする。しかし彼女が血清を打った翌朝急にリチャードが苦しみ出す。彼の研究に間違いがあったようだ。
ジェノマックスではベルが取り逃がしたリチャードを捕らえるためもう一度チャンスをくれるように食い下がっていた。エックハートは監査役と言う事務方のベルにはジェネティック・セキュリティの作戦指揮は遥かに複雑で手に終えないと諦めさせようとするが、ベルは自分は監査人で終わるつもりはなく指揮に必要な素質は十分にあると言い張るため、もう一度だけやってみるように命令を下した。
アダムがシャリマーが持ち帰った血清を分析した結果、体内で制御不能なDNAの崩壊をもたらしミュータントとしての能力を失うことが分かった。しかし実はそれだけではなく次に中枢神経系の機能停止を招き死に至らしめることが判明した。そこへジェシーがプロクシーブルーからもたらされた情報を報告し、身元不明の遺体が見つかったことと遺体のDNAが変えられていたことが報道により、アダムがそれがドナだと気付くのに時間はかからなかった。ブレナンがシャリマーにこのことを知らせようとするが、彼女の通信リンクは途切れていて連絡がつかないとアダムが言う。だがエマはシャリマーの居所を明かさないと約束していたこと、二人がドナのアパートに隠れていることを告白する。アダムは3人をアパートに向かわせ、その間に治療法を探った。
ますます具合の悪くなるリチャードを見て唯一の頼みの綱であるアダムに助けを求めるシャリマー。アダムは彼をすぐにサンクチュアリに連れてくるように指示を出す。だがすぐにアパートを出たリチャードとシャリマーの前にジェノマックスのベルとジェネティック・セキュリティの隊員二人が立ちはだかる。必死にリチャードを守るシャリマーの元にジェシー達が到着した。発砲してくる隊員の銃弾をかわすためにブレナンとエマはジェシーの後ろに隠れ、全面に出たジェシーは体密度を濃くして銃弾を跳ね返す。その後ろからブレナンがタイミングを計って放電により一人づつ隊員を弾き飛ばして片付けてゆく。見事なフォーメーションによりセキュリティの隊員達を倒した後、事態の急変に混乱しながらも隊員の落とした銃でリチャードを渡せと脅すベルを、残るエマが一発のキックで片付けてしまった。4人は早速リチャードをサンクチュアリに連れ帰った。
アダムの実験室にて。自分の死を予告する青ざめたリチャードを何とか助けて欲しいと縋るシャリマーに、アダムはもう手後れだと断言する。悲しみに暮れるシャリマーから目を逸らせるブレナン達。リチャードは自分の骨髄から抗原を作り彼女に投与した血清を中和することでシャリマーを救うことができると教える。そのことを聞いて更に悲嘆にくれた表情を見せるアダムの口から、彼女を助けることでリチャードの死期を早めてしまうことになることを聞いたシャリマーの涙は止まらない。そんなことは出来ないと言うシャリマーを遮りリチャードは彼女を救いたい気持ちからアダムに治療を依頼し、アダムも承諾する。ジェシーもエマもブレナンもいたたまれずにその場を離れていった...。
さらなるリチャード連行に失敗したベルはエックハートに自分に下された評価は当然だと認め元の監査人にどもれるように哀願したがジェネティック・セキュリティでは後戻りは出来ない宣言され、エックハートの部屋から臨めるミュータント達の実験施設での過酷な現実の悲劇が彼女を待っていた...。
リチャードの提案によるアダムの治療が始まった。リチャードとシャリマーはお互いに診察台の上で見つめながら手を握りあって最後の別れをかわす。生まれてはじめて他人を愛する幸せを知ったリチャードの、握りしめる手の最後の力が抜けていく瞬間を遺されたシャリマーは見つめながら止めどもない涙を流している...。
サンクチュアリ内を流れる池の水に弔いの蝋燭を浮かべてそれを見つめるシャリマーに、アダムは彼女を支える仲間は側にいて見守っていることを伝えた。