Lit Fuse
「一触即発」
夜の第12発電所に近づいていくカップルがいた。女の方はぐったりとしており男は彼女を支えながら歩いている。そんな二人をレンズを通して見ている者が物陰に潜んでいる。アシュリーと呼ばれたミュータントらしき女は自分のために無理をせず「ミュータントX」に助けを求めようと言うが、男は自分が彼女を助けると行って慰めた。アシュリーは恋人を遠ざけ送電線に向かって両手をかざし始めたときに彼らの様子を窺っていた男が手に持つ銃を恋人に向けて彼女を止めようとする。しかし彼女は驚くがそのまま送電線に向けて再度両手をかざして電力を吸い始めた。急激な電圧に堪え兼ね切れた電線が空を切り銃の男をはね飛ばす。
ダブルへリックスで上空からパトロール中のシャリマーとブレナンはいきなり眼下の街の灯が消えていく様子に驚く。
はね飛ばされた男の様子を見るアシュリーの恋人エリックは男が死んだと思ったが、突然起き上がった男はエリックの首をつかみ再度銃を突きつけてアシュリーに一緒に来るように脅す。そこへ停電の原因を調べに来たパトカーのサイレンが鳴り響きアシュリーは恋人を置いて逃げ出し、彼女を逃した男もエリックを連れてその場を去った。
サンクチュアリでは悪戯に不安感を煽るような停電のニュースを流すプロクシーブルーの映像に眉を潜めるアダム、ジェシー、エマがいた。心配するへリックスのシャリマー達に電力会社から正式発表はないが彼らの地下世界では大量に電気を吸い取るミュータントの仕業であると言う噂が流れていることを伝える。エマが電力会社のシステムに進入してトランスEL社の調査により外部から停電を起こして400メガワットの大量の電力が奪われたことが判明したと報告する。アダムがミュータントのデータベースにより該当しそうな3人の電気系のミュータントのデータを引き出し、このうちの一人が変異により電気エネルギーの飢餓状態に陥って騒ぎを起こしたのだろうと推測した。
ジェノマックス社では電気を吸うアシュリー・エリオットを捕らえようとした男、クロスと言う名の腕利きの賞金稼ぎがエックハートに不手際を責められていた。エックハートはアシュリーの力を敵の電力を奪うための武器にしようと画策しているのだ。クロスは100万ドルの報酬という契約に対して責任を持つと豪語する。
夜の街を逃げるアシュリーにクロスに捕らえられたエリックから携帯電話がかかる。彼を見捨てて逃げたことを謝るアシュリーに彼は仕方がないことだと彼女を慰め、17号線付近の昔使われていたニコラス空軍基地の倉庫の檻に閉込められているとだけ伝えて電話を切ってしまった。アシュリーは恋人を助けに向かう。
サンクチュアリのアダムはブレナンに3人の電気系ミュータントの内誰かが変異によって起こされたエネルギーの飢餓状態のため際限なくエネルギーを吸う症状が出ていると説明する。同じ電気系のブレナンには他人事ではないと自身を心配するがいつもそばでアダムが検診している彼に同じ症状が起きるとは限らないと言う。しかしアダムは発電所を調べに行くと言うブレナンを止める。理由はブレナンは交流の電気系だが問題のミュータントは直流のためお互いが接近すれば爆発が起こる可能性があるため危険を冒さないようにサンクチュアリに留まってジェシーとともにデータチェックを命じた。
空軍基地の倉庫にやって来たアシュリーは倉庫の電子ロックから電力を奪って解錠し中に入る。檻に閉込められたエリックに駆け寄ると物陰からクロスが姿を現した。事情の分からないアシュリーにクロスはジェノマックスが彼女の力を欲していることをエリックが教えると、保身のために恋人が彼女を裏切ったことを知ってアシュリーは愕然とする。
発電所に作業員に扮して調査に来たエマとシャリマーは早速手がかりを見つける。エマは地面に焼け焦げた女物の靴跡を発見し、シャリマーはクロスが吸っていた葉巻を拾った。問題のミュータントは3人の内の一人の女性、つまりアシュリー・エリオットで別の男も一緒に現場にいたことが判明した。
エマ達が持ち帰った手がかりを分析している間にブレナンは階段で詩集を読んで時間を潰していた。それを見て意外そうに話しかけるジェシーにブレナンはアシュリー捜索には電気を餌に出来る自分が適任だと軽く言ってのける。ジェシーとその会話を聞いていたエマはアシュリー捜索に拘るのは彼女が魅力的だからではないのかとからかった。
アダムは葉巻にたっぷりと付着していたDNAから賞金稼ぎのニール・クロスの身元をデータベースから突き止める。車の回収屋から追跡業者へ転身し殺人罪で服役したが模範囚として釈放、しかしその釈放には裏でエックハートがフリーの賞金稼ぎとしてのクロスの力を求めたための工作と思われる。ジェシーがクロスの居所を突き止めればアシュリーも見つかるはずだ。金のためにミュータントを売るこの卑劣な男をシャリマーは自分が殴ってやると言ってニヤリとする。
ジェシーは金遣いの荒いクロスの電子マネーの流れをたどり買った品物等がどれも20年間使われていないニコラス空軍基地の格納庫に全て発送されていることを突き止める。早速シャリマーとジェシーは空軍基地に向かった。
エックハートは部下のヘンショーにクロスとの約束の100万ドルの入ったアタッシュケースを持たせ、サブダーマル・ガバナーの使用許可を求める部下に無傷でアシュリーを連れてくるように命令し、また彼女の捕獲の際にはいかなる電子機器も身に付けず彼女の半径45メートル以内に500ボルト以上の電圧を発する電線、発電所、変圧器等がない限りはその身は安全だと助言を与えた。ヘンショーはガバナーで力を押さえ込めば良いのではと尋ねるが変異を起こしている電気系ミュータントにどこまで効果があるか不明だと付け加えるエックハート。
空軍基地にヘンショー他数人のGSA隊員がやって来るとクロスは銃を用意して出迎える。ヘンショーは大金の入ったアタッシュケースと引き換えにクロスからアシュリーを閉込めている倉庫内の檻の鍵を渡す。隊員が鍵を開けアシュリーを連れ出そうとすると彼女は放電して抵抗する。ヘンショーが暴れるアシュリーにサブダーマル・ガバナーを使用しようとすると背後から銃声が起こる。クロスが要求額の半分しかない不満とともに全額持ってこなければアシュリーを渡さないと銃を構えるがGSA隊員が隙を付いてクロスを撃ち、ヘンショーは彼女の首筋にサブダーマル・ガバナーを打ち込む。外に出た彼らを待ち伏せしていたジェシーとシャリマーが隊員達を打ちのめし無事にアシュリーを保護して基地を後にする。
サンクチュアリに連れてこられたアシュリーはアダムに婚約者のエリックを助けてくれるように頼む。アダムが承諾するとそこへブレナンが入ってくる。アダムは危険だと警告し部屋から出ていくように言うがブレナンとアシュリーは互いを一目見た瞬間から魅かれあってしまった。アシュリーにはアダムの彼女の身体に起きている変異の説明すらも耳に入らない。ブレナンも又同じだった。その様子をアダムに呼ばれたシャリマーは訝しげに見つめている。ブレナンはエリックの救出を買って出てたが、アダムはブレナンの心の動きを見て取りそれは電磁気による影響で互いに近づけば危険だと説明してもブレナンは電気系同士の繋がりによるものだと返す。アシュリーもまたエリックのことを気遣いながらブレナンに心が動いていることをシャリマーに見透かされてしまう。彼女もブレナンに魅かれてしまったがシャリマーは電磁気のせいであるため彼に近づかないように宥めた。
エリックが基地の倉庫からアシュリーの携帯にメッセージを送っている。アシュリーのことを気遣いながらもやはり助けて欲しいという気持ちを隠せない...と言う話し方だった。電話を切るとエリックは先程までの深刻な表情とは打って変わって自分の演技をそばで聞いていたクロスに自分の分け前について再度交渉を始める。そう、彼は5万ドルの分け前と引き換えに保身のためにアシュリーを売ったのだった。そしてエリックが背を向けるとクロスは用が済んだとばかりに銃を取出しエリックに向けて発砲する...。
サンクチュアリでブレナンが落ち着き無く詩集を読んでいると実験室からアシュリーが出てきた。アシュリーはブレナンに近づくがブレナンは表面はアダムの言いつけを守るべきだと言いながらも彼女の出現を待っていたようだった。彼女がエリックのことを気にしながらもブレナンへの気持ちは抑えられないと同時にブレナンも言葉を濁しながらアシュリーのキスを受け入れる。しかしすぐにブレナンから電力を吸い取ってしまいアシュリーは慌てて実験室に逃げ帰った。
エリックからの伝言をサンクチュアリのコンピュータを通して聞いたアシュリーは早く助けなければと慌てる。しかし彼の声を音声緊張分析機にかけて分析したジェシーはメッセージを嘘だと見抜く。アダムも結果を見て罠だと気づくがアシュリーは信じようとしない。アダムはジェシーにシャリマーと出向きクロスを見張るように指示する。
アシュリーはブレナンにエリックを助けてくれるようにすがる。自分が行かなければ彼はクロスに殺されてしまうと必死に訴える姿に心を動かされたブレナンは彼女はとてもエリックを助けにいける状態ではないことを説明し納得させようとするが、救出に向かう彼女を止めようと触れた途端に電力が吸い取られアシュリーの首筋に付いていたサブダーマル・ガバナーが弾け飛んでしまう。アシュリーは我慢できずに力を放出しブレナンの身体ごと電力を体内に取り込んでしまった。ブレナンの落とした詩集を拾い上げへリックスでサンクチュアリを出ていこうとするアシュリーを実験室に戻そうとしたジェシーに彼女はブレナンの力を使ってジェシーを放電ではじき飛ばしその場を去ってしまう。
アダムとエマがアシュリーの変異を止めることが出来ないかどうか話し合っているとジェシーが倒れているのを発見したシャリマーが慌てて二人を呼ぶ。ジェシーに事情を聞いたアダムはへリックスで出掛けるアシュリーにコムリングで話しかけると、彼女はブレナンの詩集を片手にブレナンとは文字通り一心同体だと言いアダムの指示には従う様子は見せない。エマがブレナンの意識を感じ取り彼がアシュリーの中に閉込められていることを知る。ジェシーやアダムがエリックは裏切ったのだと言ってもアシュリーは信じず交信を切ってしまう。
クロスのいる基地の倉庫に着いたアシュリーはクロスにエリックが裏切ったことを知らされ、更にすでに変わり果てたエリックの姿を見て呆然とする。ジェシー達がサンクチュアリでクロスの携帯にアクセスしていると、クロスはエックハートに更に200万ドル出すようにふっかけていた。相変わらず電気に飢えているアシュリーはブレナンを取り込んだことで互いに抗体が形成され、それが反応しあったときに大爆発が起こってしまう。裕に街一つが焼け野原になるほどの威力を持っているのだ。アダムは取り戻したダブルへリックスで他のメンバーを発電所に向かわせアシュリーが電気を吸う瞬間に合図を送るように指示を与える。ジェノマックスではクロスの存在が目障りになってきたエックハートが部下のヘンショーにクロスを確実に殺すように命じていた。
ジェシーとシャリマーは発電所内に、エマはへリックスに留まりそれぞれが持ち場に着いたところでアダムはエマに電磁フィルターの準備をさせアシュリーが電気を吸収し始めたら発せられた火花をサンクチュアリのコンピュータで分離してブレナンをアシュリーから引き剥がす作戦を伝えた。シャリマー達が様子を窺っていると一台の赤い車が発電所に進入してきて、中からクロスがぐったりとしたアシュリーを抱えて出てきた。送電線の鉄柱のそばに彼女を立たせると電気を吸うように命令して彼女から離れ、電気に飢えたアシュリーは両手を上げると電気を吸い始めた。直後にシャリマーがアダムに合図を送るとエマがへリックスのステルスシールドを外し通信路を開ける。へリックスが上空に姿を現すとアシュリーと送電線との間の火花がへリックスに飛ぶ。その余波を食らって彼女の後方にいたクロスは空中に弾き飛ばされてしまった。アダムがエマに電極を逆にするように指示するとへリックス内に激しく火花が飛び交い稲妻が集中した床の上にブレナンの姿が現れる。ブレナンが意識を取り戻し冗談を言うとメンバー全員はほっと安堵の表情を浮かべた。
サンクチュアリに戻ったアシュリーはアダムに電気科学的なバランスを調整され電気に飢えることはなくなった。そこへ詩集を片手に実験室に入ってきたブレナンとアシュリーにアダムは5分だけ二人だけで話す猶予を与え、その後に隠れ家に彼女を送り届けると言って部屋を出る。アシュリーはブレナンに謝ると彼は持ってきた詩集『草の葉』を彼女に手渡して気にしないように気遣う。その本はアシュリーも好きな詩集だった。二人は融合したときにお互いのことを知りあったが互いのことは秘密にしあうことを約束した。
実験室を後にしたブレナンに突然シャリマー、ジェシー、エマが襲いかかる。ブレナンは3人の攻撃を何とかかわすが最後のアダムの手刀をかわすことが出来ず彼の寸止めに終わる。全員ブレナンの身体の調子を気遣って冗談で襲ったりしたが皆彼の帰りを心から喜んでいた。アダムはブレナンのお気に入りの詩集『草の葉』をプレゼントし「おかえり」と優しく言葉をかけるのだった。(終)