山下奉文 ―昭和の悲劇



山下奉文 ―昭和の悲劇
山下奉文 ―昭和の悲劇

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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乃木と山下、明治と昭和

山下は文句なく「昭和の英雄」である。
ただ、「組織に生きる者」として、組織の論理の中での英雄であった。
明治の乃木と比べたとき、その差は歴然としている。
滅びゆく敵軍に対しても深い悲しみと慈しみをもって接した乃木と、
敵軍の将校相手に喜々として机を叩いて「Yes or No?」と迫る山下とを見比べた時、
「有能さ」などでは量り得ない、乃木の「徳」の大きさに明治を、
それに替わる山下の「組織の論理」に昭和を、著者はそれぞれ思い浮かべるのである。

何よりも山下本人が、そのことを、つまり、乃木に比べて結局は職業軍人である自分の小ささと、
そうでなければ「英雄」にはなり得ない昭和陸軍の限界とを、痛いほどにわかっていたのだろう。
本書を読むと、昭和の山下が英雄であり、明治の乃木が無能の将軍である、
と結論付けた今の平成の世に、暗澹たるものを感じる。
福田氏は、そのような大きな近代日本史の書き換えを、保田與重郎、江藤淳などの成果を踏まえながらも
政治的運動ではなく、一人の文学者として声低く、独力で達成しようとしている。

石原莞爾、乃木希典と連なる福田氏の評伝。
続けて読むと、「昭和と昭和天皇」の姿がうっすらと浮かんでくる。
福田氏はおそらく、昭和天皇を終着点に見据えて、一連の軍人について筆を進めているのではないか。



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