凍て雲―うぽっぽ同心十手綴り (徳間文庫)



凍て雲―うぽっぽ同心十手綴り (徳間文庫)
凍て雲―うぽっぽ同心十手綴り (徳間文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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秀作時代小説の新ヒーロー

 うぽっぽ同心十手綴りシリーズの4冊目。本書では時代設定も安永年間から約30年後と明確になり、著者の江戸の町の構想が筆に伝わるようになった。描写が細かくなり、風情が今まで以上に感じられる。濫作時代小説とは一線を画す出来である。
 本書に収められた4編では、一介の臨時廻り同心には真っ向からは太刀打ちできそうも無い巨悪や支配違いの事件であるが、これをどう解決するか、以下に決着をつけるかが読みどころある。スッキリとした結末が爽やかな読後感を誘う。また、4編とも子どもや少年少女がが登場するが、同情心を掻き立てるような描写は控え、お涙頂戴の人情物に逃げることがなく、好感が持てる。
 読んで損の無い時代小説の一つに数えられる。時代小説が好きな方、濫作時代小説に飽きた方にお勧めである。
読後感の良い4編

シリーズの4作目で、西国の大藩に関わる事件がテーマの表題作はじめ4編が収められている。

このうぽっぽ同心・長尾勘兵衛の探索は、悪人にお縄をかけて終わり、という訳ではない。
というより、捕り物小説でありながら、お縄にするシーンはほとんどない。
情けをかけて見逃したり、人知れず闇に葬り去ったり・・・そんなケースばかりである。
白州では裁くことのできない正義を貫き、事件の向こう側に隠れた本物の悪党を叩きのめす・・・その辺の締めくくり方がスッキリしていて、なかなか心地よい。

本作に収められている4編は、いずれもその点が踏襲されていて読後感も良かった。


なお、これに登場する悪党には、主人公と同じ町奉行所の与力・同心だったり、大名家のお偉いさんだったりすることが多い。
本作の4編目「野ぎつね」の場合は、火盗改め方の与力である。

しかし、彼らの上司である奉行や長官は、配下の悪業を表沙汰にする訳には行かない。
「わしにはやらねばならないことが山ほどある。腹を斬っている暇もないのだ」などと剛毅なセリフを吐く、頼れるお方なのである。
故に、主人公の勘兵衛の手柄も表に出ることはない。

ま、これを現代に当てはめれば、大企業や官庁の不正隠蔽の言い訳にほかならないのだが、それが正義のように思えてしまうから時代小説は不思議だ。



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