島津奔る〈下〉 (新潮文庫)



島津奔る〈下〉 (新潮文庫)
島津奔る〈下〉 (新潮文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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痛快な池宮史観に拍手

この作品の面白さは、作者が包む歯に衣着せぬ歴史観にある。

先の四十七人の刺客の時も、数ある忠臣蔵伝記とは一味違った視点で描いているが、
変に英雄視せずに現実的に沿った評価を公平に与えている所に
魅力を感じた。

比較される、
報道出身の司馬史観との違いは、熱にあると思う。

司馬作品が冷徹なまでの客観的なリアリズムを追求して
ルポルタージュの様に物語が作られるのに比べて、
映画出身の池宮作品は、
主人公を軸にした主観的な群像劇に仕上がっている。
その間に、様々な背景や批評が挟まれる。

個人的な話、
どちらが優れているかは論外だが、
実写で観たいのは池宮作品である。
勇猛果敢、比類なき島津の戦ぶり

 下巻のメインは関ヶ原の合戦。望まぬながら、西軍に属してしまった主人公、島津義弘。戦音痴の石田三成に、夜襲の打診などの助言を悉く無視され、苦汁を飲まされつつも、苦心して築いた人的ネットワークを駆使し、必死に島津家生き残りを模索する。

 そして向かえた関ヶ原の合戦。小早川秀秋の裏切りにより壊乱する西軍の中、寡兵ながら、軍容を整え、領国に帰還するため死を決し、雲霞のごとき東軍の中を、強行突破を試みる島津家家中。その際に義弘が家臣に口にする台詞がしびれる。 「聞いての通りじゃ。わしは帰ると決めた。/その方らの一命を、ここで使い捨てる。/後ろへ退るのは愚である。相手の意表を衝く。前に突き進む」

 勇士たちの活躍に血沸き肉踊る。余計なものを一切そぎ落とした名文。最初から最後までクライマックスの連続という感じで、ハラハラさせられる。
 
 以上の点を持って本作は、スリル満点の傑作小説であると評せられる。
戦争に負け、駆け引きで勝つ

 無敵の島津軍。
 関が原でも注目の的。
 徳川が勝つと感じながらも、石田側で参戦する。

 じっと、戦況を睨み我慢を続ける。

 そして、最後の決断により、島津は動き出す。

 ただ、動くだけではない。
 戦後の交渉を有利に運ぶにはどうするのか。
 多くの思考が頭に中を駆け巡る。

 その動きがよく伝わります。

 そして、なぜ関が原で負けた中で島津藩だけが加増されたのか。
 これには、大きな気づきがあります。
思ったほど・・・・・!

一気に読んでしまったが、予想できる筋書きで、思ったほどおもしろいとは思わなかった。
司馬遼太郎の作品の焼き直し、司馬作品を一捻りした感じである。しかし、これをやってみたくなる気持ちがよく分かる。
関が原は、どうしても謎であり、謎解きをしてみたい、題材なのであろう。
負けてなお勝つ

関ヶ原で西軍に属し、結果として敗軍の将になった義弘は、負けてもなお負けなかった。その薩摩魂には学ぶところがたくさんある。関ヶ原の島津軍は思わず著者の創作なのではと思ってしまうほど、無茶なことをしている。史実をもとにしているのだろうから、驚きとしかいいようがない。



新潮社
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