香乱記〈上巻〉



香乱記〈上巻〉
香乱記〈上巻〉

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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『香乱記』(上、中、下)

毎日新聞朝刊掲載時にコツコツ読んだので、全巻を読み終えたときの充実感が強い作品です。
劉邦と項羽が主役として取り上げられがちな秦末の動乱を、義を貫いた田横を唯一の英雄として書き上げており斬新でした。
田横は当時の主要人物として知っておくべきであることは間違いないです。
天命とは。

 天命とは。人が人として生きるとは。
 宮城谷氏は、様々な人間の生き様を通し問いかける。
 田横、秦末の斉人。「王になる予言」の下、歴史の表舞台に現れる。兄二人に続いて斉王となり斉国の独立のため戦う。
 この時期、中国の人口は半減したといわれる。それほどの激闘の中で損害を受けたのは兵士だけではない。田畑は荒らされ、収穫物を略奪され、子弟を亡くした民の嘆きはいかばかりであったろう。そうした民を慰撫し、ともに生きようとしたのが田横であった。しかし、そうした努力も劉邦に欺かれることで、無に帰してしまう。
 だが、本当にそう言い切れるのか。結果はどうあれ、田横が民の心に残したものがあったに違いない。確かに、歴史上の勝者は劉邦であるが、上に立つものとしての器量、人間としての魅力はどうだったであろうか。はたして民から慕われ、民の支持を受けることがあったであろうか。私の知る限り、宮城谷氏は劉邦を長編の主人公に描いていないはずである。
もうひとつの“項羽と劉邦”の物語

項羽と劉邦という華々しいドラマの影にあった、斉という国そして田横兄弟にスポットライトを当てた名著です。
項羽が劉邦につけ入る隙を与え、韓信が攻め込み、そして竜且が倒れ...これらの有名なストーリーが斉の国側のカメラから映し出される新鮮さをたっぷりと味わえます。
比較的ハッピーエンドの多い宮城谷さんの作品の中で、最も悲劇的な小説ではないかと感じています。
仲間との出会いと成長、そして縦横無尽の活躍。そして訪れる死。
エンディングで少し救われた気持ちにはなりますが、それでも志半ばで倒れた英雄の姿にいたたまれない気持ちになります。
これは宮城谷さんの作品の中でも異質で、且つ新境地を切り開いた小説です。是非必読を。
次が待ち遠しい〜

「王になる」という予言を賜った田横達。清廉潔白、いかにも王となるに相応しい人間が、王になるのは当たり前・・・と思いきや、そう、この時代には、項羽も劉邦もいたのだった!だとしたら、彼らは王にはなれない???
宮城谷さんはこれからどうやって、全ての魅力的な人物を書ききるのか、わくわくする。

宮城谷さんの特技である、「漢字の使い方」、更に「動乱の時代」「男の魅力」、「悲恋」と読み応えのある本だと思う。



毎日新聞社
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