国立大学受験資格を認めることを求める声明
(2003年3月19日)
出典:aml
 文部科学省は、2003年3月6日、一部の欧米系のインターナショナルスクールの卒業生のみに大学受験資格を認め、アジア系学校をはじめとする民族学校には、引き続き大学受験資格を認めないという方針を決定し、中央教育審議会大学分科会でこの方針を発表しました。
 社団法人自由人権協会は、このような文部科学省の決定は、従来厳しく指摘されてきた国立大学受験資格をめぐる人種差別をさらに助長するもので、最善の利益を追求すべき子どもの人権を正面から踏みにじるものであると考えます。それゆえ、当協会は、文部科学省に対し、今回の決定を撤回し、すべての外国人学校卒業生に対する国立大学受験資格を認める措置を取るよう求めます。
 外国人学校卒業生に国立大学受験資格を認めない従前の文部科学省の取り扱いは、日本国憲法のみならず、日本が批准する国際人権条約にも明白に違反することが、これまで内外でくり返し指摘されてきました。
 1998年には、国連の自由権規約委員会が「朝鮮人学校の不認定を含む、日本国民ではない在日韓国・朝鮮人マイノリティに対する差別の事例に懸念を有する。」(最終見解13項)と指摘し、子どもの権利委員会が「韓国・朝鮮出身の児童の高等教育施設への不平等なアクセス、及び、児童一般が、社会の全ての部分、特に学校制度において、参加する権利(第12条)を行使する際に経験する困難について特に懸念する。」(最終見解13項)とそれぞれ強い懸念を表明していました。
 また、2001年には、国連の人種差別撤廃委員会が、同様な強い懸念を表明した上で、日本に対し、「韓国・朝鮮人を含むマイノリティに対する差別的取扱いを撤廃するために適切な措置をとることを勧告する。また、日本の公立学校にお
いてマイノリティの言語での教育へのアクセスを確保するよう勧告する。」(最終見解16項)との勧告を行い、また社会権規約委員会も「それが国の教育課程に従うものであるときは、締約国が少数者の学校、特に在日韓国・朝鮮の人々の民族学校を公式に認め、それにより、これらの学校が補助金その他の財政的援助を受けられるようにし、また、これらの学校の卒業資格を大学入学試験受験資格として認めることを勧告する。」(最終見解60項)との具体的な勧告をくり返
してきたものです。
 今回の文部科学省の方針は、形式上、民間評価機関の認定を受けたインターナショナルスクールの卒業生だけに大学受験資格を付与するというものです。それによれば、その基準に合致する16校のみに資格を与え、アジア系学校を中心とする24校には資格は与えられないこととなります。
 しかしながら第1に、この方針は、「少数者の学校、特に在日韓国・朝鮮の人々の民族学校を」を引き続き差別の中に放置するもので、日本の条約上の義務を何ら果たすものではありません。
 第2に、英語系の教育機関に一部存在する「民間評価機関」は、けっして普遍的に存在するものではなく、日本にとってもなじみのない制度です。このような一部の「民間評価機関」を区別の基準として用いることには何ら合理性が存在しま
せん。
 第3に、この方針が発表された後の文部科学省関係者の発言として、「いま北朝鮮系の朝鮮学校に受験資格を認めれば、北朝鮮を利することにつながりかねない」(「朝日新聞」2月21日)など、方針決定の背景に政治的・外交的な意図があることが伝えられています。これが事実であるとすれば、この方針は、子どもの教育への参加の権利という基本的な権利を、外交的手段に追随させようとするものであり、子どもの権利の最大限の確保をその任務とすべき文部科学省の自己否定といわざるを得ません。
 そして第4に、今回の方針決定に際しては、検討の対象となった高校教育を行う外国人学校の基礎調査において、上記40校の他に、すでに全国に13校存在するブラジル系学校がまったく忘れ去られているなど、手続的にもまったく粗雑なものと指摘せざるを得ません。
 以上の次第で、当協会は、数多くの深刻な問題を持つ、文部科学省の今回の決定を撤回し、すべての外国人学校卒業生に対し、平等に国立大学受験資格を認める措置を取るよう強く求めます。


 2003年3月19日
 自由人権協会










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