山形大学に対する国家賠償請求訴訟共同声明
(2003年9月8日)
出典:aml他
 私たちは、二〇〇〇年一一月二八日に、山形大学学生が山形大学(成沢郁夫学長 当時)及び国を被告として提訴した国家賠償請求訴訟において、山形地裁が、山形大学の一連の違法行為によって著しく侵害された学生の人権と名誉の回復を行なう判決を下すよう、同地裁に申し入れる。
 二〇〇〇年四月二五日、山形大学学寮に住む学生四名が、「寮内清掃員に対する監禁・強要」容疑で、山形県警によって逮捕され、学生寮の強制捜査が行われた。この逮捕は、山形大学学長が、自らの大学で学ぶ学生を告発した直後に行なわれたものである。しかし、そもそも事件の発端は、寮内清掃員が、寮自治会の会議資料やノートなどの個人情報物をたびたび盗み出していた事にある。
 そこで学生が、その対応策として、清掃員の窃盗行為を防犯カメラに撮影し、清掃員と話し合いを行ったところ、清掃員は「山形大学学生部厚生課長から、学生の動向を調査するよう命じられ、日常的に盗みを繰り返していた」と証言し、罪を認めた。ところが、山形大学は、この学内不祥事について、学生の当然の調査要求にかかわらず、学生の撮影したビデオテープの受け取りすら拒否するなど、事件についての必要な調査を十分に行わず、「動向調査の事実は一切無い」とする見解を発表した。しかし、地元テレビ局がこの動向調査事件を詳細に報道し、事件が公になった後に、山形大学学長は、突如として、学生を犯罪者として刑事告発した。
 この山形大学学長による告発は、その機会があったにもかかわらず、学生側への意見聴取及び事実調査が全くなく行われたものであり、しかも、学生が、窃盗を行った清掃員に対し正当かつ当然な追及を行ったに過ぎない事を考えれば、告発の正当性に強い疑念を持たざるを得ない。現に、学生が無実である事は、逮捕後、二二日間の取調べの後、不起訴釈放されたことによって完全に証明されている。むしろ、山形大学が清掃員に指示した窃盗行為こそが、組織的な動向調査のための、不当な生活監視・不正な情報入手であり、れっきとした人権侵害に当たる。
 つまり、この事件は、そもそも加害者である大学が、無実かつ被害者の学生を告発し、犯罪者に仕立て上げたものである。そして、山形大学学長による告発は、自ら行った人権侵害の事実を隠蔽(いんぺい)するための虚偽かつ犯罪的告発であったと言える。これにより、自らの人権の回復を求めた学生が、さらに不当逮捕されるという二重の被害者となったのである。
 その後も、山形大学が全く調査要求に応じないため、同年一一月二八日、学生側は山形地裁に提訴した。
 また、この事件は、舞台となった山形大学学寮の閉寮問題の渦中において起きたものである。山形大学は、学寮における管理権を乱用し、従来認められてきた学生の自治権を侵害したため、学生側との対立が起きた。さらに山形大学
は、寮を閉鎖することによって、学生の自治権そのものを剥奪(はくだつ)しようと計画し、対立は激化した。この対立状態において、山形大学は、大学に異議を唱える学生の動向調査に手を染め、しかもその事実を隠蔽するために、虚偽の告発行為に及んだのである。
 一般に、行政当局に公権力の行使が委ねられている以上、公権力の悪用・乱用に対する異議申し立ては民衆の権利であり、それを抑えつける事は、公権力による弾圧行為に他ならない。ところが、近年、山形大学当局に限らず行政当局及び国は、この基本的な権利を規制しようとしている。その事は、矢継ぎ早に法制化された「盗聴法」「住民基本台帳法」「個人情報保護法」、与党から現在提出されている「人権擁護法案」等に現れている。これらは、捜査当局をはじめ行政側による恣意的(しいてき)な運用が可能となることによって、民衆への監視目的による運用や、行政当局の不正を暴く事すらも「違法行為」と規定される強い懸念がある。その一方では、小泉政権による「構造改革」の名のもと、リストラ推進政策による生活破壊、年金制度改悪、医療費の負担増加など、高齢者や病気で苦しむ者といった社会的弱者の切り捨てまでもが“痛み”と称して行われている。とりわけ、大学においては、大学法人化による授業料の大幅値上げが計画され、相次ぐ自治寮の廃寮が行われるなど、経済的弱者の切り捨てが行われている。
 繰りかえすが、このような権利侵害に対する異議申し立ては、民衆の権利を守るために在り、民衆の普遍的な権利である。だが、山形大学による事件は、この権利が著しく侵害されている事を示している。それは、近年、政府が進める、
「有事法制」下における社会を先取りしたものに他ならない。この行き着く先は、正当な異議申し立てが「違法」とされ、行政による弾圧行為が「合法」とされる社会に他ならず、もはや、戦前への回帰とすら言わざるを得ない。
 本来、教育機関には、民主主義・人権・平和といった民衆の権利を教え、擁護(ようご)する義務があり、公権力は、その教育のためにこそ用いられなければならない。しかし、山形大学は、公権力を、自らの不正隠蔽のために悪用し、被害者の学生を不当にも逮捕させた。これは、教育機関による権力犯罪に他ならない。もし、この事件が放置されるならば、公権力の不正に対し異議を唱える者は、もはや誰もが逮捕されてしまう。
 このような社会の到来は、本来、誰も望んでいないはずである。そのためにも、この山形大学当局の行った横暴な人権侵害は、法によって、必ずや裁かれなければならない。
 私たちは、今回の国賠訴訟において、教育機関・山形大学による人権侵害、権力犯罪を厳しく処断する判決を下すことが、裁判所における社会正義の実践に他ならないと確信する。よって、山形地裁には、国側による違法行為の隠蔽を絶対に許さず、徹底した証拠調べによる公正な審理を行い、著しく侵害された学生の人権と名誉の回復を行なう判決を下すよう強く求める。

 二〇〇三年九月八日   
 共同声明賛同人一同 
 
 山形地方裁判所民事部
 畑中 裁判長
 坂本 裁判官
 小林 裁判官 殿










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