日本政府にIT政策・電子政府構想の転換を求める決議
(2003年6月7日)
出典:aml他
 JCA-NETは、この1年間、「住基ネット」およびこれに代表される政府の「IT政策」に強い関心を寄せ、これらに反対する市民運動をインターネットを通じて支援してきました。また、必要な場合は、JCA-NET会員からの技術的な情報などの提
供を行なってきました。
 この経験からJCA-NETは、インターネット利用の促進を通じて市民的な活動を支援する通信NGOとして、以下の問題について日本政府に強く警告します。
 同時に情報通信の専門家とインターネットの利用者にむけて、IT政策の早急な転換を政府に促す多様な活動、とくに市民社会が最新の情報通信技術を理解しこれをコントロールするために必要とされる情報の積極的な提供に取り組むよ
う、JCA-NETは強く呼びかけます。

 1.住基ネットは、トップダウンによる統一的・均質的セキュリティ構築に失敗している

 総務省は住基ネットの構築にあたって統一的・均質的なセキュリティ構築をトップダウン方式で行なう方針を採用していますが、現在の状況は、トップの地位にある総務省が自治体のセキュリティ対策実施状況を的確に把握できないことも含めて、明らかにこの方針採用が失敗だったことを示すものです。
 住基ネット・電子政府の推進にあたって、政府は、多様な情報技術水準にあり、また財政状況も多くは厳しい状況にある地方自治体にセキュリティ確保の困難なシステムの導入をトップダウンに強く求める一方で、実際のセキュリティ確保については必要な水準の実施が全ての自治体で実現可能であるのかの妥当性を検証することなく、責任を各自治体に押し付けています。これは、単一組織によって運営される旧来型の情報通信ネットワークの設計・管理運営の手法を、全ての自治体と各省庁をつなぐ、最終的な責任が分散される情報通信システムへと適用したことからくる混乱です。
 総務省は、住基ネット・電子政府が単一組織によって運営させるものではなく多様な自治体・省庁その他関係機関がノードとして参加する分散開放型システムであることを認識し、早急に各責任主体が相互の信頼を確保した上で接続を行うことを前提とした抜本的なセキュリティ再構築を行うべきであり、その最初のステップとして現在の住基ネットをただちに停止するべきです。

 2.電子政府における「プライバシー」は、あまりにも軽視されている
 IT政策が採用している「個人情報保護」の考え方の最も大きな特性は、個人情報を取り扱うシステムが単一の主体によって所有・運用されていることを前提として、個人情報をその単一主体の所有・保有になる「情報資産」ととらえるところにあるものと考えられます。「個人情報保護」は、もっぱら「情報資産」の防衛、つまりセキュリティ上の課題とらえられ、「システムのセキュリティが確保されているから、個人情報は十分保護されている」とされています。
 この結果、住基ネットから電子政府に提供される個人情報の「利用」によって引き起こされるプライバシー侵害・人権の侵害は、システム的にも制度的にまったく「防御」されていません。
 政府は、「プライバシー」の主体が「個人情報の当事者(本人)」であるとする現在の市民社会の常識を理解し、「相互信頼にもとづく個人情報の提供・利用」と十全な自己情報コントロール権を、IT政策の根幹に取り入れ、健全な「個人情報の有効利用」の環境を構築すべきです。

 3.国によるネットワーク規制・監視の強化拡大は、インターネットの発展を阻害する
 すでに施行されている盗聴法やネットオークション規制、いままさに成立した出会い系サイト規制法、そしてサイバー犯罪条約批准のために法制審議会で議論されていて近い将来に出てくるであろう諸法案といった形で、政府のネットワークの規制・監視においては、特定のコンテンツや利用形態に対して「事業者が利用者の認証を行うこと」を強制したり、利用者間のコミュニケーションに必ず事業者が関与していることを前提とする法的枠組みが、インターネットに押しつけられ、強化され続けています。これらはインターネット上での自由な創造性と実験を抑圧し、インターネットを利用した新しい市民社会の発展を阻害する結果をまねきます。
 政府は、インターネットの特性とその創造的な発展を支えてきた市民的諸原理の有効性に依拠したIT政策・ネットワーク規制政策へと、ネットワーク規制の基本方針を早急に転換すべきです。

 2003年6月7日
 JCA-NET 2003年度総会決議









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