1 昨年8月5日に第1次稼働を開始した住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)について、日本弁護士連合会では、同年10月11日に開催した第45回人権擁護大会において、個人の自己情報コントロール権保護の観点から、個人情報の統一的管理につながるとして、その稼働停止を求める宣言を行った。
多くの自治体は住基ネットに疑問ないし不安を抱いており、福島県矢祭町、東京都杉並区、同国立市が住基ネットに参加せず、横浜市が段階的参加の状態にあり、さらに長野県が県独自のネットワークの構築を検討し、県として住基ネットから離脱することを志向している。札幌市でも、住基ネット見直しを選挙公約に掲げた上田文雄新市長が誕生し、市民の中にも住基ネットへの疑問が広がりつつある。
そのような中、今年8月25日から、全国3200余の市町村が相互に個人データを交信し合う第2次稼働が開始した。
2 しかし、住基ネットがかかえる本質的な問題は何も解決されていない。
第1に、住基ネットは国民不在のネットワークである。住民票コードは国民を管理監視の対象と位置づける手段となり得るものであり、個人の自己情報コントロール権を否定し、個人の尊厳(憲法第13条)を損なうおそれがある。
第2に、住基ネットは全国の市町村が望んで作られた制度ではない。国の行政機関等の便宜のために市町村の意向を聴取することなく、市町村に責任と費用を負担させる制度としたものであり(地方財政法2条2項)、市町村の自治権(憲法92条)を侵害している。
第3に、住基ネットは財政健全化の観点から必要不可欠な費用対効果の検討がまったく行われておらず、地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に反するおそれがある。
第4に、住基ネットの稼働の前提となる個人情報保護制度が整っていない。今年5月に個人情報保護の社会的基盤となる個人情報保護法案や行政機関個人情報保護法案などが成立したが、その内容には各種の問題がある上、未だ施行されていない。個人情報保護条例を制定していない市町村は未だ2割以上に及んでいる。
第5に、住基ネットのセキュリティについて、総務省は再三「万全だ」と説明してきたが、そこでいう「住基ネット」とは、財団法人地方自治情報センター(以下「地方自治センター」という。)と都道府県の住基ネットCSまでを指しているに過ぎず、3200余の市町村の住基ネットCSは含まれておらず、セキュリティ対策を再検討しなければならない状況にある。
3 全国の市町村は、国と都道府県と市町村が法的に対等な立場にあること、したがって、法解釈権限についても三者が対等であることを、はっきりと自覚すべきである。何が正しい法解釈で何が正しい運用であるかは、自らの責任において判断すべきである。
都道府県、市町村は、住基ネット事務が個人の自己情報コントロール権に深く関わる自治事務であることを踏まえて、セキュリティ問題をはじめとして、住民が真に望む利便性、担当職員の職務上の負担、維持管理費用などを、自らの責任において検討し見極めるべきである。
4 今日の集会に参加した私たちは、各都道府県、各市町村が、住民に十分説明しその意向を尊重しつつ、住民の権利利益を守る立場から、住基ネットへの参加・不参加を再検討することを望み、私たち個人はそのような自治体に対してでき得る限りの協力をするものである。
2003年(平成15年)10月2日
住基ネット問題に関する札幌シンポジウム参加者一同
TOP APPEAL-TOP RAPPEAL-TOP