第一章『発端』
HAMEX−MEN編集部。
「いやー、僕、最近どうも体調が優れなくて。」
「あー、俺なんて、最近どころか、いつだって体調ガタガタよっつーか。」
「私も。」
「皆、規則正しい生活にはほど遠いからな。」
そこに。
「お前達、なにを不景気な顔をしているんだ?」

「あ、チョンキバヤシさん。」
「いや、最近皆、体調悪いよな、っつー話だよ。
チョンキバヤシはどうさ?」
「そういう事なら、俺も人の事は言えないな。
だが、健康管理もHMRの大事な仕事だ。皆も・・」
その時。
「あ、電話。僕でますね!」
意気揚揚と電話に向かうユウスケ。
「もしもし、HAMEX−MEN編集部です。
はい・・えっ!!?」
「!?」
「はい・・はい・・わかりました・・・。」
電話を置くユウスケ。
「どうしたんだ、ユウスケ!」
「品川支部からです・・・。
・・シマーノさんが・・倒れたって・・!」
「!!!」

HMR第5話 『ファイルbSシーズンズ 北へ。の謎を解け!の巻』
都内・某大学病院。
「ここに・・シマーノが。」
「とりあえず、病室に行ってみましょう!」
集中治療室前。
「あ、東京本部の方ですか。」
「ああ、品川支部の・・。」
「実は、シマーノのやつ、今面会謝絶なんですよ。」
「!!」
「そ・・そんなに悪いんですか!?」
「ええ。ここ2、3日がヤマだと、先生が言ってました。」
「一体、彼の身に、何があったんですか!?」
「それが、仕事中、突然倒れてしまって・・・
我々にもサッパリわからないんです。
最近、顔色が悪いのは気づいていたんですが。」
「・・・前回の調査で、彼には世話になっている。
我々の手でシマーノの身に何があったか、徹底的に調査しよう!」
「おう!」
「今回はシマーノの弔い合戦だ!HMR、緊急出動!」

第2章『謎のVTR』
HAMEX−MEN品川支部。
「これがシーマノさんのデスクか。」
「とりあえず、パソコンを起動してみようっつーか。
アッサク、やってくれっつーか。」
「うい。」
「こ・・これは!」
「どうしたっつーか。ああっ!」
「ギャルゲーの壁紙・・!」
「この、独特の繊細なタッチは、ハドソンから出てるドリームキャストのゲーム、
『北へ。』ですね。」
「他は仕事関係のものばっかりか。どうやら、こっちの調査は行き詰まったみたいだなっつーか。」
いっぽうそのころ。
シマーノの自室−
「シマーノには悪いが、勝手に調べさせてもらおう。これも彼のためだ。」
「カードがいっぱいあるな。む、アクエリアンエイジのレアカードだ。」
「エ、LDだ。こ、今度借りよう。」
「なにか無いか?シマーノが倒れた事に関係しそうな、なにかが・・。」
1時間後−
「くそ、これと言って手がかり無しか。」
「流石に疲れた。」
「ちょっと一休みしましょう。ビデオでも見ながら。」
そういって、ビデオのリモンコンを操作するユウスケ。
「ム、う、動かない。」

「まったく、機械音痴も良いところだな。俺に貸してみろ。」
「す、スンマセン。」
リサリサの操作で動き出すビデオ。
いきなり、スピーカーから軽快なマーチのリズムが流れ出す。
「一体、何のビデオだ?」
「わ、解りません。デッキの中に入っていたビデオなんですが・・・」
「この曲・・聞き覚えがあるな。」
「なんの曲だ、リサリサ!」
「一時期、世間を騒がせた、ドリームキャストのゲーム「北へ。」のテーマ曲だ。
しかし、なぜビデオから・・?」
「!・・・・これは!」
HAMEX−MEN編集部。
「とりあえず、職場の方は特に何もおかしな点は無かったっつーか。
そっちはどうだ?」
「ああ。自宅を捜索した結果、あったよ。
面白いものが。」
そういって例のVTRを取り出すチョンキバヤシ。
「それは・・?」
「東京ゲームショウ98にて開催された、「北へ。」のライブのビデオだよ!」
「ラ・・ライブビデオだって!」
「ゲーム関係のライブか・・今までロクな思い出が無いっつーか。」
「とにかく、見てみよう!」

そして・・・
「な、なんだ、このキレの良いダンスはーーーっ!!」
「歌は以前、聞いたことがあったが・・・まさか、こんな激しい振り付けが存在したなんて・・」
「スピード、モーション・・共に、SPEEDやMAX等のダンス系アーティストを、遥かに凌駕している!」
「・・・待ってくれ、みんな。」
「どうしたんだ、チョンキバヤシ。」
「こんな激しい踊りをしながら、歌を歌えるものなんだろうか?」
「・・・たしかに。」
「常識的に考えれば、ムリですよね・・!」
考え込む一同。
「・・・こうしていても仕方が無いな。
よし、俺はコピーしたテープを大学の研究室に持って行って調べて見る。
お前達も、独自に調査してみてくれ。」
「ああ、わかった。」
『第3章 ユウスケの仮説』
翌日−
「みんな、ちょっと良いか?」
「どうした、なにかわかったのか、リサリサ。」
「この激しい振り付けがどうしても気になったんで、コンピューターでシミュレートして、
運動量や消費カロリーを調べてみたんだ。」
「で、どうだったっつーか。」
「これだよ!」
「!?」
「エラー・・測定不能って事か!」
「・・・やはり、僕の思った通りだ・・!」
「どういう事だ、ユウスケ?」
「思いだしませんか・・・?あのビデオの事を。」
「あのビデオ・・・?」
「デ・ジ・キャラット声優オーディションビデオですよ!」
「!!」
「どんな人間離れした動きだって、コンピュータには朝飯前なんですよ!
このコンサートも、仮想現実・・つまりはヴァーチャルリアリティー技術によって作られた、
架空のイベントなんです!」

「〜〜〜〜〜〜ッ!」

呆然とビデオを見続ける4人。
「・・しかし、CGとは思えないほどのリアリティーだなっつーか。」
「たしかに。」
「け、けど、あの動きが人間に不可能である以上、
これが現実であるはずが無いじゃないですか!」
「・・・・・。」
「ん、待ってくれ、皆!」
「どうした、タイメイ。」
「今のシーン・・・。」
ビデオを巻戻すタイメイ。
「ここだ!よく見てくれ!」
「え・・・?」
「ああ〜〜〜〜〜ッ!」

「シ、シマーノ・・さん!?」
「どういう事だ、ユウスケ・・・!
このビデオがバーチャルリアリティーで作り出されたモノだとしたら、
ここにシマーノが写っている筈が無いじゃないか!」
「・・・どうやら僕は、とんでもない思い違いをしていたのかもしれない・・・!」

「あ〜あ、ユウスケの勇み足で、結局振り出しに戻っちまったわけかっつーか。」
「いや、だがこの会場にシマーノがいた事を発見できたのは、大きな収穫だな。
やはり彼が倒れた原因は、このライブにあると見て間違い無いだろう。」
その時。
『みんな〜っ、踊ってェ〜ッ!』
フォーシーズンズの一人、ゲームではヒロイン「春野琴梨」を演じる声優、
千葉妙子(南少出身)が、歌の途中、感極まって絶叫する。
「こうなったら・・・やはり踊ってみるしか無いようだな!」
顔を見合し、肯きあう4人。
会議室を片付け、スペースを確保。
「・・フォーシーズンが4人なら、我らも4人。」
「宿命的なモノを感じますね・・!」
「よし、いくぞ!」
30分後−−−
「なんて動きだ・・!」
「あ・・頭では解っていた事だけど、実際踊ってみると、改めてキツさが身に染みますね。」
「つーか、つーか、散々DDRで鍛えた筈の俺が、
・・・こうも、醜態を・・・さらす事になるとは・・」
脂汗を流し、床に這いつくばるタイメイ。
「しかも彼女達は、この踊りを踊りながら、歌まで歌っているんですよ。
・・・・やっぱり、不可能ですよ、そんな事は!」
その時、会議室の扉が開く。
「・・・なにをやってるんだ、お前達。」

汗ダクで床に倒れる4人を見て、開口一番、冷たい一言を浴びせるチョンキバヤシ。
「実は・・」
『第4章 チョンキバヤシの仮説』
4人から経緯を聞き、納得するチョンキバヤシ。
「・・・・なるほどな。
お前達の話を聞いて、全てが納得いったよ。」
「!?」

「どういう事だ、チョンキバヤシ!」
「解けたんだよ、フォーシーズンズの謎が!」
「!!」
「彼女達の、再現不可能な程に人間離れした動き。
しかも、それは間違い無く現実のものだった・・・。
この事が意味する事は、ただ一つ。」
「・・・・」
「フォーシーズンズは、強化人間集団だったんだよ!」

「〜〜〜〜〜〜ッ!?」
「し、しかし、今の世の中、強化人間なんてモノを作る必要が、どこにあるってんだ、チョンキバヤシ!」
「・・あるじゃないか、超人的な運動能力を誇る強化人間を必要とする事態が・・・。」
「・・・?」
「戦争だよ!!
ハドソンは戦争を起こそうとしているんだ!!」

「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

「じゃ、じゃあシーマノは・・」
「多分、お前達と同じように、あのビデオを見ながらダンスを踊ったんだ。
強化人間専用のダンスを・・・。」
「しかし、一般の人間にすぎないシマーノは、肉体に極度の負荷がかかって、倒れてしまった、
そういう事か・・!」
「ぼ、僕達も、あぶなくシマーノさんの後を追うところだったんですね・・・!」
「恐ろしい・・まさに死のダンス!」
「だがこれで、これ以上の犠牲者が出る事も無いだろう。
シマーノの尊い犠牲は、ムダではなかったよ・・・・!」
『第5章 重大な思い違い』
数日後−−
HAMEX−MEN編集部。
AM9:00
「いやあ、どうも最近寝つきが良くて。しかも、寝起きもバッチリなんですよ。」
「つーか、俺も俺も。体が軽いっつーか。
なんつーか、背負ってた重荷を降ろしたような、そんな感じだっつーか。」
そういって、シャドーボクシングを始めるタイメイ。
「うむ・・俺も食欲不振が直ったんだ。飯が美味くて仕方ない。」
「おはようデース!」
そういって、爽やかに登場するアッサク。
「おーアッサク、最近早いじゃねーかっつーか!
定時後の遅刻魔と恐れられた男が。」
「う、その話は止めてくださいよ。」
「アハハハハ」
そこに−−
「どうしたんだ、お前達。妙に楽しそうじゃないか。」

「あ、チョンキバヤシさん。」
「いやな、最近どうも、皆体の調子が良いな、という話をしてたんだっつーか。
春の陽気のせいかねー?」
「・・・・・」
「たしかに、皆顔色も良いですよね。」
「ああ。身体のどこにも不調が無いってのは、良いもんだな。」
「・・・・そうか・・・やはりそうだったのか・・・。」
「どうしたんですか、チョンキバヤシさん。」
「つーかつーか、まーた一人で深刻な顔しちゃって。」
「それが深刻なんだよ、タイメイ!
・・・どうやら俺達は、とんでもない思い違いをしていたようだ!」

「!?」

「ど、どういう事だ、チョンキバヤシ!」
その時。HAMEX−MEN編集部の電話がけたたましく鳴り響く。
「ム、こんな時に、誰からだ?」
「もしもし、HAMEX−MEN・・・!
な、なんですって〜〜〜ッ!?」
「どうした、ユウスケ!」
「シ・・シマーノさんが、病院から消えたって・・・!」
「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
「どうやら事態は一刻を争う様だな・・・
出かけるぞ!いっしょに来てくれ!」
国立図書館−−
AM11:00
「やはりな。思ったとおりだ。
これを見てくれ、皆。」
「これは・・太極拳の本ですね?」
「ああ。・・・お前達、この型に見覚えがあるな?」
「ん・・・・?」
「ああ〜〜ッ!これは!」

「同じだ!北へ。のダンスと!」
「・・よし、次だ。」
スポーツジム−−
PM13:00
「はじめまして、インストラクターの水野愛美(仮名)です。」
「よろしくお願いします。」
「ウヘヘ、美人インストラクターっつーか。」
「タ、タイメイさん、真面目にやってくださいよ!」
「さて、お前達。早速あのダンスを踊ってくれ!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
インストラクターとチョンキバヤシの見守る中、北へ。のダンスを踊る四人。
「はあ、はあ・・・」
「あ、あれ、おかしいな?」
「前ほど、疲労感が無い・・・」
「で、どうでしたか?」
「ええ、やはり、あなたの言う通りでしたよ。」
「!」
「・・オイオイ、俺達にだけ躍らせておいて、なにイチャイチャしてるんだっつーか!」
殺気立つタイメイ。
「フ、まあまてタイメイ。
それじゃあ、説明をお願いします。」
「ええ。今見せてもらったダンスには、ストレッチングの基礎から、高等な応用技術まで、
さまざまな動きが取りいれられてるんです!」
「!?」

再び、HAMEX−MEN編集部−−
PM6:00
「で、結局なにが言いたいんだ、チョンキバヤシ!」
「・・・これでもう、間違い無いだろう。
西洋科学、東洋科学の両面から見て、あの動きは身体を健康に導く作用があった。」
「ええ・・。」
「その事が導く答えは一つ!
北へ。のダンスは健康体操だったんだ!!」

「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
「あの独特のステップやモーションには、気の流れを整え、
血行を良くし、骨格の歪みを取る作用があったんだよ!」
「・・・戦争を起そうと画策しているとばかり思っていたハドソンが、
実は人類の健康を案じる、優良企業だったなんて・・!」
「ああ・・・」
「そ、そうか!解ったぞ!」
「どうした、リサリサ!?」
「あの歌の歌詞だよ・・・!」
「?」
「北へ行こうランランラン−−
どうもおかしな歌詞だと思っていたが、これには意味があったんだ!」
「それは一体・・・!?」
「北へ行こう・・きたへいこう・・鍛え行こうだよ!
つまり、タイトル『北へ。』は『鍛え』を暗示していたんだ!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
「あ、あの妙なタイトルに、そんな意味が込められていたなんて−−!」
「待ってくれ!それなら、俺達が最初に踊ったときに感じた、極度の疲労はなんだったんだ!?」
「そ、そうですよ!」
「・・・それは、お前達が不健康だったからだよ!
不健康な身体に、あのダンスは強烈すぎた・・そういう事さ!」
「!!」
「それが証拠に、今お前達の身体は健康そのものじゃないか!」
「た・・たしかに・・・!」
「あの健康体操を踊りつづけるフォーシーズンズが超・健康体なのは、当然の結果なんだよ!」
「待ってください!それじゃあ・・・!」
「?」
「それじゃあ、消えたシマーノさんは、一体何処へ行ってしまったと言うんですか!?」
「・・・タイメイ。確か今日は、3月31日だったな?」
「そ、そうだが、それがどうかしたかっつーか?」
腕時計を見るチョンキバヤシ。
「・・・・?」
スッ・・
突然、TVを指刺すチョンキバヤシ。
「!?」
「俺の考えが正しければ、答えはその中にある!」
「・・・・・・?」
「と、とにかくTVを付けてみよう。」
プッンと音を立てて、TVの電源が入る。
丁度、夕方のニュースの時間帯だ。
「こ・・これが何か?」
「・・・・。」
黙して語らぬチョンキバヤシ。
『・・では、次のニュースです。
本日幕張メッセで開催されている、東京ゲームショウの模様を、
中継でお伝えします。現場の八木さーん?』

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

■おわり■
※この作品はフィクションです。
※本編中で登場した健康体操「北へ。」のライブビデオは、こちらのHPで通信販売で購入出来ます。