「うまほ〜っ」
ウソップは嬉しそうにいそいで手をジャブジャブ洗い、椅子に座る。
椅子に座ったと同時にサンジが扉を開けて戻ってきた。
「まだ食ってねぇのか?」
戻ってくるなりサンジがウソップに言う。
「ああ、お前に「イタダキマス」って言わねぇとな。」
嬉しそうにウソップはサンジを見てから
「いただきます。」
と言って、クッキーに手を出した。
サンジはクッキーを口に入れたウソップをさりげなく横目で見ながらウソップの横に座る。
「うっめぇ〜っ!!」
ウソップは本当に美味しそうにクッキーをどんどん口の中に詰め込む。
「そうか、うめぇか。」
サンジはニカッと笑ってウソップの方に体ごと向きを変える。
「あぁ、うめぇぞ。これただのクッキーか?」
「あ・・・、あぁ、カントリークッキーって言ってな、普通のクッキーよりも少しシットリさせてデカく作ってある。うめぇか?」
サンジは確認するようにウソップに聞きながら、自分もクッキーを手に取り、一口食べてみる。
「うめぇよ。マジで。ルフィたちに食わしてやらなくていいのか?」
「お前が部屋にいる時に、みんなは先に食った。他のヤツらにも大好評だったぜ。」
サンジは思わず笑いそうになってしまい、席を立ってウソップと自分の分の水を持ってテーブルの上に置いた。
本当は他の仲間たちには違う味のクッキーを作った。このウソップ用特製クッキーはウソップの為だけのもの。
ウソップは、水を持ってきてくれたサンジの足元に気付いた。
まだ、片方のつま先の靴底部分がペラペラしている。
「お前、違う靴ないのか?そんなの履いてちゃ危ねぇんじゃねーのか?」
ウソップは片手にはクッキーを持ちながら、片手ではサンジの靴を指差しながら言う。
「ん?あぁ、さっき荷物ん中見たんだけどな、見あたらねえんだ。まあ、普通に過ごすには充分だからよ。
次に降りたトコで新しいの買ってくる。」
そう言いながらサンジはまたウソップの横に座りウソップの方を向いてクッキーに手を伸ばす。
「おめぇ、ずいぶん食ったなあ。何個食った?」
「わかんねぇ。腹も減ってるからいくらでも食えるぜ。」
ウソップはお皿に手を伸ばして、また1つクッキーを掴みそれを美味しそうに口の中に入れる。
「4.5個は食ったなあ・・。そんなにうめぇか。」
サンジが笑いをこらえながらウソップにもう一度聞く。
「うめぇって言ってんだろ?ってゆーかなあ、さっきの昼メシはなんだよっ!!あんなキノコメシ、俺が食えるはずがねぇっ!!」
「・・・、食ってんぞ。」
サンジはもう笑いを我慢できないと言ったカンジでボソッと呟いた。
「なに?」
ウソップはまた一口クッキーを食べてから、なんのことだか分からないという顔をしてサンジを見た。
「このクッキー、キノコたっぷり入ってんぞ。」
「っ!!!!!!!」

おさり様の素敵絵。キッチン内のウソップとサンジさん。


ウソップはびっくりして目を丸くして手に持っている食べかけのクッキーを見てから、
まだ口の中に入っているこなれたクッキーを吐き出そうとしている。
「ばっ!ばか野郎!てめぇ!!出すなよっ!ちゃんと飲み込めっ!!」
サンジは焦って、ウソップの口に自分の手を押し付ける。
ウソップはサンジの手を振り払おうと首を振ったり、サンジの手に自分の手をかけてひっぱったりしている。
「今まで美味いって食ってたんだろっ?!それくらい飲み込めっ!!」
ウソップは涙目になりながらなんとか口の中のモノを飲み込んで、その後すぐに水を一気に飲んだ。
少し落ち着いてからウソップは、サンジを見て
「騙したな・・・。」
と言うが、サンジはクッキーをほおばりながら、
「何を騙したって言うんだよ?」
と相手にしない。
サンジは持っていたクッキーを食べ終わり、水を一口飲んでから、煙草を取り出し火をつけて一服する。
「美味いって食ってたじゃねーか。キノコ。クッキーの下地にすりつぶしたキノコ混ぜて、いろいろ味付けして・・・、
けっこう苦労したんだぜ。、それ作るの・・・。どうやったらお前がキノコ食えるかいろいろ考えてよ。
せっかく、市場でいいキノコを見つけたんだ。・・・・お前にも「美味い」って食ってほしいじゃねーか。」
今度はウソップの顔を見ないで、紫煙がゆらゆらと上がっていくのを見ながらサンジは言った。
「・・・・・・・・・・・」
ウソップはそのサンジを見て何も言えなくなってしまった。
サンジが自分の為に、いろいろ試行錯誤して作ってくれた。もうそれだけでも充分だった。
サンジがそこまで自分のことを考えてくれているだけでウソップは満足してしまいそうだった。
確かにそれにキノコが入っているって聞くまでは本当に美味しく食べていた。
ウソップは、黙って残り1つのクッキーを取り、口に入れてよく噛み締めながら食べはじめた。
サンジはそのウソップの行動に驚いてウソップの食べている様子をただ眺めている。
最後の一口を口に入れ、よく味わってから飲み込んで
「美味かったぞ。ご馳走様でした。」
とウソップはサンジにむかって小さく頭を下げた。
サンジが何も反応しないので、頭を上げ、上目遣いでサンジを見ると、
サンジの手が自分の口元にむかってのびてきた。
ドキドキしてウソップが硬直しているとサンジの手はウソップの左頬に触れ、ウソップの頬についていたクッキーのカケラを取った。
「食べ残し。」
と悪戯げにサンジは微笑み、そのカケラのついた指を舐める。
そして
「片付け、手伝えよな。」
と言って席を立ち、お皿を持ってシンクへ向かう。
「お・・・、おう。」
ウソップは今のサンジの行動にかなり動揺していながらも、二つのグラスを持ってサンジを追う。
今まで気がつかなかったが、キッチンの奥には、明らかに失敗したとわかるクッキーが何個も置いてある。
「サンジ・・・・」
ウソップはそこまでサンジが自分にしてくれたことに改めて気付き、そのままサンジを抱きしめたいと思い、
思わず「サンジ」と言ってしまった。
「・・・・??」
サンジはウソップの様子がいつもと違う事に気付き、あえて返事はしないでウソップを覗き込んだ。
ウソップは、サンジに覗き込まれ、なおも鼓動を早くさせて、
「あ、あそこのクッキーは誰の分だっ??」
と、失敗作を指差してサンジから視線を逸らしごまかす様に言った。
サンジはそんなウソップを見透かしたように口端で微笑してから
「あれは、ルフィの分だ。」
と答えた。



夕食のメニューはキノコなしのメニューだった。
時間はもう夜中になっている。今日の見張りはウソップ。
ウソップは1時間くらい前にサンジがキッチンを出て、男部屋に戻ったのを確認した。
「もうそろそろいいかな・・・。」
そう思い、ウソップは見張り台から降りて静かに甲板を歩き、音を立てないように男部屋に降りた。
思ったとおり、みんなぐっすり眠っている。
ウソップはサンジのハンモックの所へ行き、サンジの寝顔を覗き込んだ。
ぐっすり寝ているサンジの寝顔を暫く見て、
「ありがとな。」
と心の中で呟いてからサンジの靴を持って、また静かに甲板に戻り、見張り台へ登っていった。
そしてサンジの靴底のペラペラを見て、
「なんだ、これくらいならすぐに直るじゃねーか。」と1人呟き、
既に用意しておいた工具を出して、ペラペラしている靴底を、もう片方の靴底と同じようにする。
「よしっ!直った。これでまた、当分持つだろっ。」
そう言って、サンジの靴を抱えて見張り台を降り、男部屋に静かに向かった。



E N D