『UFOキャッチャー』
昔から遊んでいた仲。
今更俺は何を求めるわけ?
いつものようにナミさんと遊んで
そろそろ夜も深くなってきた頃
俺とナミさんは友達と別れて2人でいた。
「ナミさん。」
「ん〜?」
「この後どうする〜?」
「ん〜・・・。」
酒が回って足が覚束ない彼女の後を追って
俺とナミさんは人ごみ漂う通りをとぼとぼ進む。
夜のネオン。
俺たちにしたら、こんなんどうでもいいわけ。
ただその時々が楽しけりゃ、なーんの文句はありません。
俺にしてみればナミさんの隣にいられるだけでいいんだが・・・。
「なぁどこいくの〜?ナミさーん。」
「何よ〜、そんなんあんたが決めれば〜?」
「・・・そうだけどさぁ。」
ナミさんが勢いよく振り返る。
やっぱり飲ませすぎたか、顔が赤い。
「ん〜・・・あ、これにしよっ!!」
「へ?」
ナミさんが俺の斜め横を指差す。
つられて俺もその指先を辿っていくと
目の前に見えるのはゲームセンター。
「ゲーセンですか。」
ナミさんは首を大きく振る。
「そっ。ゲーセン。ダメ?」
「・・・だめじゃないけど。」
俺が半ばあきらめ気味でOkすると
ナミさんは俺の腕をおもむろにつかんで
そのままゲーセンの自動ドアをくぐる。
この暑い夜にゲーセンのクーラーの風は気持ちよかった。
汗ばんだ俺のスーツに涼しい風が吹き抜ける。
「ちょ、ちょっとナミさん、どこ行くの!?」
爽快感を感じてる場合じゃない。
酔った彼女はふらふらとあっちへこっちへ。
何で俺はこんなに世話のかかる人を好きになったんだ?
節操なしにもほどがあるだろ、俺。
1つ下で、酔うと手に負えなくて
あろうことか、それがもう何年も続く俺の片思いなんだから
切ないのにもほどがあるだろう。
早く俺に振り向いてくれよ、ナミさん。
「サンジ君っ。」
ナミさんが振り向く。
・・・ってそうじゃないだろ。
広い店内の向こうのUFOキャッチャーのコーナーで
ナミさんが俺に手招きをする。
あ〜来た。
このパターンはあれだろ?
ナミさんはガラスケース越しの黄色いクマのぬいぐるみを指して
へらへら笑いながら、俺の予想した通りの台詞を投げる。
「コレ取って〜。」
やっぱり。
俺はナミさんに近づきながら弱音を吐く。
「ナミさん知ってるだろ?俺昔からこの手のやつには相当ダメなんだって。」
俺の弱音を吹き飛ばすかのような笑顔で強気な発言。
「大丈夫よ、私が取ってって言ってんだから早く取ってよ。」
「・・・俺今持ち合わせ少ないよ?」
「じゃあ一発で取ればいいじゃない。」
「・・・そんな無茶苦茶な。」
けらけら笑うナミさんに俺はまいるばかり。
しぶしぶポケットから取り出した300円を投入口に入れて
俺の肩に手を置くナミさんを意識しながら
「何にすんの?」と問いかける。
聞いても意味が無いのは目に見えてるわけだが・・・。
「ん〜、じゃあその笑ってるやつ。」
「・・・あれ?」
ちょうど真ん中の方で挑発的な目とスマイルで
俺に取れるもんなら取ってみろと視線で言い張るこのクマ。
ありがたいことに、割りに簡単に取れそうなやつ。
「そう。あれ。取って。」
「・・・ったく、しゃーないなー。期待しないでくれよ?」
俺が赤く点滅すつボタンを押そうとしたとき
ナミさんは「じゃあ」と始める。
ボタンを押すタイミングを失った俺は
ナミさんのほうを振り返る。
「何?」
ナミさんはさっきの酔いに似つかないような真面目な顔で言う。
「もし一発で取ったらさ」
「うん。」
「サンジ君の気持ちに答えてあげる。」
「・・・。」
その言葉に俺は一瞬固まった。
とりあえず、今言われた言葉を整理してみる。
だんだん冷静でいられなくなる俺にナミさんは微笑む。
おいおい、ばれてるぞ、俺。
「何固まってんの?早く取ってよ。」
「あ、あァ。」
ショーケースの中で俺が狙っているクマは相変わらずスマイル。
だが、そのスマイルもだんだん悟られてるかのように見えてくるんだから
俺、相当動揺中?
とにかく俺は1つ目のボタンを押して
クレーンを右へと動かす。
「ナミさん、何で知ってた?」
ふっと出てきた言葉。
そこが、今一番気になるところ。
「ん〜結構前から知ってたよ?」
「・・・まじすか。」
「うん。」
俺は失言したまんま少し奥へとクレーンを動かすために
2つ目のボタンを押す。
これがまた絶妙なとこで止まる。
「ね、これ、いいんじゃない?」
ナミさんが弾んだ声で言う。
クレーンがその間にクマの頭を挟んでそのまま持ち上げる。
「悪くない・・・かな?」
「うん、落ちるわよ。たぶん。」
落ちる。
その言葉に俺は一瞬反応した。
落ちるってどういうこと?
「なぁナミさん。」
「ん〜?」
今度は俺から。
「落ちたら、ナミさん、俺に落ちてくれる?」
薄い沈黙の霧が俺とナミさんを包む。
クマは順調にホールへと向かう。
失敗する気配も無く、徐々に距離を縮めていく。
「・・よ。」
「え?」
「いいわよ。」
振り向いた俺に笑いかけながら
「いいわよ。」とまた言う。
俺がその先を続けようとしたら
音楽が鳴り響く。
景品が落ちたらなる音。
「「あ。」」
俺の声とナミさんの声がダブる。
落ちた。
ナミさんが景品口からクマを取り出す。
ショーケース越しで見たときのスマイルと違って
嬉しそうに笑うクマ。
「落ちちゃったね。」
「あァ。」
「まぐれ?」
「・・・たぶん。」
呆然と立ち尽くす俺たち。
本当に落ちちゃったからこの先どうすればいいのか
途方も無いほど何も言葉が出てこない。
「・・・ナミさん。帰ろっか。」
「・・・うん。」
すっかり酔いの醒めたナミさんは
ゲーセンに入る前とは違って
ふらふらもせず、へらへらもせず
ただ2人並んでネオン街をひたすら歩く。
「さっきのって」
「ん?」
「さっきのって冗談だよな?」
「・・・。」
虚しいほどに周りの雑音だけが通り過ぎて
俺たち2人だけ異様に冷め切っていた。
「ごめん、今のなし。」
「・・・何で?」
「へ?」
取り消そうとした俺に「何で」と聞くナミさん。
拍子抜けした。
「落ちたじゃない、コレ。」
黄色いクマ。
「そうだけど・・・。」
「じゃあ、いいんじゃない?」
「・・・まじ?」
ナミさんは頷く。
「だからさっきからいいって言ってるじゃない。」
「あ、そか。」
勢いだけで俺の手を握ってそのまま俺は引っ張られる。
2人ネオン街を歩く。
落ちてくれる?って聞いたけど
最終的に落ちたのはやっぱり
俺?
犬の遠吠え:ちょっとかわりネタで。笑)突拍子もなく思いついた話だったんで
ちゃっちゃーと書いてアップです。・・・こらぁいかんだろ。アップしてよかったのか
悪かったのか微妙ですが、お許しくださいませ〜。ふかぶか〜。
えぇ〜っと・・・UFOキャッチャーで落ちたのはサンジらしいです。アハ)
07.22.03