
| War 1 : 艦隊司令官 | ||
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<青年将校ローデンス・レオン・ダート (右) とメルク・ラオン・ダート (左)> ローデンスはダート財閥の第2子でベルネス軍准佐、シグナス艦隊司令官、19歳。メルクはその妹で12歳。
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ローデンス・レオン・ダートは武器商人から成り上がったダート・コンツェルンの次男で、この年ベルネス軍の幼年学校を卒業してベルネス軍務省に入省した。 キャリア組であり、実家がベルネス星でも有数の財閥であることから、最初から准佐に任命され、小規模ながらも1個艦隊の司令官となった。あと10年もたたないうちに将官級に昇進することは誰の目にも明らかだった。 しかしこの数世紀、宇宙海賊討伐以外に戦争らしい戦争がなかった銀河に、戦乱の予兆が広がり始めていた。銀河の一部を領土とする異人類の連邦と銀河連盟加入諸国との間の軋轢が日ごとに拡大していたのだ。 原因は両者の意思の疎通〜不信感〜にあった。心底から理解し合えない状況が様々なトラブルを生み、互いに疎外しあう様になったが、経済圏が重なりあっていたため完全にたもとを分かつこともできず、度重なるトラブルから一触即発の状態にまでなっていた。 ローデンスはもちろんその状況を知っていて、いや、知っているからこそ軍部への入省を望んだのであったが、実際に戦争になればすぐにローデンスが(無能であるという)馬脚をあらわすだろうと誰もが思っていた。 ローデンスの副官のバラン少尉もその一人である。バランは今日、ローデンスのお供で、駐留しているベルネス衛星国のひとつ、メナース星総督府のパーティーに出席していた。 2人はパーティー会場で1人の男性とすれ違った。 「バラン、あれがオクト人か?…普通の人間と変わらないじゃないか。」ローデンスは副官にささやいた。 「ダート司令官、ご存じのようにオクトは遺伝子上は普通の人間と同じです。頭の中はまるっきり別ですがね。」 「だが、オクトは感情を全くもたない異人類。…あいつは、あのオクトの大使は、ほほえんでさえいたぞ。」 「感情はなくても、状況に応じて顔面筋を自動的に操作する装置を頭部に組み込んでいるのです。」 彼らが話題にしているオクト人とは、もともとは同じ人類であるが、頸部に電導神経系という無機脳を組み込んだ種属で、冷徹なほど理性的な(非人間的な)思考・行動をとった。細胞の核内のゲノム遺伝子は人類と全く同じだが、電導神経系の遺伝情報が子孫に細胞質遺伝するため、オクト人の子は (人類との混血であっても) オクト人となり、思考・振る舞いが通常の人類と全く変わってしまった。 感情を有しないオクト人は、人類にとっては無慈悲な存在であり、一方、オクト人から見た人類は、非理性的な原始人としか写らず、両者の互いに対する嫌悪感は隠しきれないほどにまで増大していた。 しかしこの時点では、人類とオクトはまだ儀礼上の交流を続けており、このような政府主催の催しには、オクト連邦の大使が同席していた。 | ||
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<アーマード・プラグ、ピアス> プラグとは宇宙船などの大型機構をコントロールするアンドロイドのことで、所有者の好みにより、女性型、男性型など多くの種類があるが、この時代には武装型、可変型などが好んで製作されていた。 ピアスという名のプラグは可変型のひとつ。
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「それより、司令官、つい先ほど出港命令が下ったとのことですが…?。」 「うむ、第12銀河腕の主要航路にあるレベータ星軍港へ艦隊を移動する。」 その言葉を聞いてバランは目を見張った。 「オクト連邦との最前線じゃないですか!? なんでそんなところに!?」 「私が望んだのだ。」平然と答えるローデンス。 バランは胸の中で舌打ちをした。これだから無能な、いや無能だけじゃない、自分を有能と錯覚したおぼっちゃまは困る。 バランは実は今の今までローデンスの下についたことを幸運とさえ思っていた。この財閥ご子息の下にいれば、武勲をたてることはないかも知れないが、少なくともこのご時世に危険になりそうなところには行かなくてすむ。そんな期待がいっぺんにふきとんでしまったのだ。 「し、しかし、あのお嬢さんもいっしょに連れていくのですか?」 「わざわざベルネスからここまでついてきたんだ。ここに残しておくこともできない。」 ローデンスが振り向くと、話題の主の少女が1体のプラグとともに近づいてくるところだった。 少女の名はメルク。ローデンスの妹で、まだ12歳になったばかりだった。女子師範学校の長期休暇を利用して、兄の旗艦にゲストとしてちゃっかりと乗り込んだのだった。しかも全身に装甲を施された見るからに機械のアンドロイド、ピアスを連れだっていた。 「お兄様、出港が決まったって本当?」ローデンスに話しかける少女。 「ああ、3日後にはレベータへ向けて出発するぞ。」 「ああ、良かった。この星にはろくに遊びに行くところがないから、いいかげん飽きてたところなの。…そのレベータってとこには、おもしろそうなところがあるのかしら?」 「さあな。…それより船に戻って準備をしておけ。」 「わかったわ。…じゃあ、ピアス、行くわよ。」 そう言って少女とプラグは、人の多いパーティー会場の出口へ向かって歩み去っていった。 |