メールマガジン 東と西のあいだにて
『L氏』
2003年7月21日
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☆★東と西のあいだにて★☆
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第5号 L氏 【発行】SK
『L氏』
◆1
中国人の友人に関する実話である。
ある夏の終わりの夕方、L君がパリの中華街のATMで
預金を引き出そうとしたところ、キャッシュカードが機械に没収されてしまった。
翌朝カードを引き取りに行ったのだが、銀行の係員は詳しい説明をせず、
返却を拒否してしまった。
L君には理由がわからない。
フランス南西部の田舎町でゆっくりと語学を勉強していたものの、
大学の合格を受けてパリに上ってきた。
最近引越しのために大きなお金の動きがありはしたが、充分な額は用意していた
はずである。
田舎の取引銀行に電話をすると、銀行員はL君を呼びつけるばかりで
明確な説明を与えてはくれない。
現金が手許にないL君はパリから動くこともできなかった。
結局インターネットを使い、残高を調べてみて、彼は意外な事実を知る。
その南西部の田舎町の取引銀行によって彼の口座が凍結されていたのだ。
◆2
L君は驚き、さらに考えた。
ひょっとしたら…、一つだけ思い当たることがある。
語学学校での最終日近く、L君は一通の手紙を受けとった。
請求書のようであったが彼には心当たりがない。
不審に思い、フランス人の教師に見せると、彼らは叫ばんばかりに驚いた。
なんとそれは国税局からの最終告知であった。
L君は所得税の納税を怠ったというのである。
L君は田舎で真面目に勉強している学生である。
語学学校の学生のビザでは通常働くことはできない。
所得税などを払う事態になるはずがないのである。
彼らは書面を分析した。
よく見ると、生まれ年が書かれておらず、誕生日の日付が数日違っている。
漢字表記の彼の名もフランスではアルファベットである。
運悪く同姓同名の人物がフランス国内に存在し、しかも誕生日が近いということで、
間違えられてしまったのだ!
◆3
L君は人違いであると国税局に手紙を書いた。
校長もL君の人物を証明する手紙を急いで書き添えた。
L君は戦々恐々としながらも、国税局に電話をかける。
名乗ると、「ああ、Lさん、あなたは有名ですよ」と温かく歓迎されてしまう。
2通の手紙は届いていた。
しかし時すでに遅しで、国税局はL君の銀行に圧力をかけて口座を止めてしまって
いたのだった。
国税局側も人違いとは納得していて、彼らの探すその別のL氏は、
パリ19区在住という詳しい情報まで与えてくれる。
そして一連の解除手続きの方法を指示してくれた。
◆4
大変なのは常にL君である。
国税局は銀行に解除依頼の手紙を出すが、執行されるまでに何日も待たなくては
ならなかった。
しかし以前のカードを使うことはできず銀行はL君に新たなキャッシュカードを
発行した。
そしてカードが届いたところで今度は暗証番号が手に入らないなどといって、
L君は延々と待たされるのである。
折り悪く、引越しの契約を済ませたばかりで、彼は不渡りの小切手を発行してしまった
ことになっていた。
こういった一連の手続きにかかる実に1ヶ月半ものあいだ、不運なL君は
自分のお金に触ることができなかった。
その間、肩身の狭い思いをしながら友人に借金をして暮らした。
そして最終的に凍結解除手続き料として、300ユーロ
(日本円で3万5000円くらい)が彼の口座から引き落とされていた!
■■あとがき■■
フランス人のいい加減さ、そして書類手続きがいかにのんびりしているか
少し伝わるといいのですが。
同時にフランスは外国人を受け入れる国です。
外国人の立場の弱さというものもこのエピソードには関係してるとは思うのです。
L君に落ち度は全くないのですが、彼の同国の人によって下
地は作られていたということなんですね。
この話はもう去年のものですが、どんなに手続きをしても待たされるばかりで
未だに手数料は払い戻されないとのこと。
理不尽です…。国税局に銀行の責任逃れの結果、やっぱりL君が苦い思いをするのです。
ちなみにこの文も本人の了解をもらって書いております。
少しづつ読書の方が増えて大変嬉しく思っております。
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東と西のあいだにて 2003年7月21日
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