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TOZAI☆★東と西のあいだにて★☆
メルマガ第17号 真夜中の訪問者
                              
    
                             
                                          
                                        2004年1月29日
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                                       ☆★東と西のあいだにて★☆
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    第17号    真夜中の訪問者    【発行】▼SK
 
 
こんにちは! 
SKという名前は大凶らしいのです。ですから大吉らしく改名をすることにしました。
SKです。よろしくお願いします!
 
ある日本の人とおしゃべりをしていたときのこと。
「パリって寒くないよね。」と言われてしまいました。
ええ?と耳を疑う▼SK
だって自分は寒くて寒くていつもしっかり着こんでいるのですもの!
聞けばその人は東北地方出身。
南の方で育った自分とは感覚が違うのでした。
日本の細長さを感じた一瞬でした。
 
今号は最初にお断り書きいたします。
つまり、お食事前だったらゴメンナサイ。。。。
 
     『 真夜中の訪問者 』
 
◆1 ご対面
 
秋の初めのある深夜、シャワーをあびたすぐあとにテレビのスイッチを入れた。
その夜中にはフランスの人気若手グループのコンサートが流送されていた。
髪を乾かしながら▼SKはすっかりごきげん。
いっしょに鼻歌などをくちずさんでいた。
そんなとっておきの時間、ブラウン管に集中されていた視界のはしを、
とつぜん横ぎっていった「なにか」。
 
タオルをもったまま、▼SKは固まった。午前2時。
その人差し指くらいの大きさの茶色く丸いなにか、は床の上を転がっていく。
ツツツ、ツツ。ツツツ、ツツ。こんなリズムで動いていく楕円形のなにか。
そしてそのあとを同じリズムでヒモのようなものがついていく。
 
まさか、まさか、ひょっとして、ひょっとして、
ネズミ?!これが噂のネズミちゃんなの??
なぜウチにいるの???
 
SKは日本でも温暖な地域の出身。
ネズミの被害にあったことはそれまで一度もなかった。
というよりろくに見たこともなかったのだ。
それがフランスの小さなステュディオの中でどっきりの鉢合わせをしてしまう。
予期せぬ真夜中の訪問者にパニックに陥ってしまった。
 
翌日、おとなりのおばあさんに、さっそくその件を報告する。
本音をいえばネズミちゃんには静かにお取引願いたい。
ルームメイトを募集したわけではないので勝手に居つかれても困るのだ。
 
お隣さん「それは退治しなきゃダメダメ。出どころは近所の小学校よ。
先生がパーティーをしようとある日お菓子を用意していたんですって。
次の日戸棚を開けたらなーんにもなくなっていたってさ。
もちろん犯人はネズミ。アッハッハ。」
と豪快に粘着テープのついた紙の罠(ゴキブリホイホイみたいでした)を
セットしてくれた。
(ちなみに自分にはこのお隣のおばあさんの、独特の節回しのフランス語が
けっこうわかりません。)
 
SKはなんとなくネズミが怖かった。
昔ヨーロッパで大流行した病気のペストはネズミが媒介していたという。
なんだかバイキンもつれてきそうだし、
自分の食べものにも注意を払わなくてはならない。
寝ているあいだに脚をかじられたという話も聞いたことがある。
パリに来てネズミのせいで引越しをしたという話も聞いた。
 
◆2 おっかない居候
 
すぐに台所の大掃除をはじめる。意外と荒らされた跡はなかった。
と安心した矢先、ひっかかれたような不思議な破れ方をしたビニール袋を発見。
これが噂のネズミのかじった跡か…。としげしげと眺める。
中身を一口食べてやめたようだ。
日本の切干大根はどうやらフランスのグルメなネズミのお口には合わないらしい。
留学生にはぜいたく品だというのに!
 
日が経ったが罠にかかる獲物はいなかった。
敵もさるもの、頭がいいなぁなんて感心しつつ内心ほっとしていた。
というのも死体を片付けなくてはいけないかと思うと
気が重くて仕方がなかったのだ。
ステュディオはあまりに小さくて同じ家に住んでいると思うと気持ちが悪いが、
退治も後片づけももっといやだ。
 
食べるものがなくなって、外に逃げ出したんだわ
現実から逃げたいあまりに自分の都合のいいように考えていた。
というのは先日のご対面のときにネズミの顔を見てしまっていたからだった。
 
ネズミって意外とカワイイ。
これで色でも白かったら専門店に売ってあるペットのネズミと何が違うの?
というほど小さく愛らしい体躯をしていた。
さらにウォルト・ディズニーは屋根裏部屋でネズミに餌をあげているうちに
ミッキーマウスを思いついたという話が頭の中をぐるぐると回る。
 
こんなかわいいネズミちゃんに手をかけるなんてダメ!
という心の声の一方で
こんなかわいい格好をしたネズミちゃんこそが病原菌を運ぶのよ!
というもう一つの声がする。葛藤していた。
この葛藤の一番の解決方法は、とにかく出て行ってもらうことだった。
 
洗濯バサミのような定番の形のネズミ捕りがある。
なぜおとりとしてチーズを使うのだろうか?
日本でもこの図はイメージされることがあると思うがチーズはもともと
日本の食べものではない。
それはネズミはヨーロッパで大量発生した動物だからだ。
チーズはヨーロッパの名産物。
冷暗所に保存してあればそりゃあもう、ネズミも喜んで忍びよるというもの。
毛が生えているのも寒いところに生息しているからなのだ。
(ちなみに温暖な地域にはゴキブリがいっぱいいます。
南に行けば行くほど体が大きく元気になるというおそろしい虫ですね。。。
それでもいかにもキモチワルイ体つきをしているので
一見かわいいネズミよりは罪が軽いかもしれません。)
 
◆3 優しくしていたら
 
そんなある夜、ぎょっとびっくり再びネズミちゃんと鉢合わせをしてしまった。
こちらも驚いたが、あちらも身をひるがえして逃げ出してしまった。
去っていくその後姿を見つめながら▼SKは思った。
「横幅が増えている!ウチで太ったの?
それともキミはこないだのネズミのダンナさん?」
 
これは困った、と知らない顔を決め込んでいたはずがさすがに焦った。
ウチで家族をもたれてはまずい。なんとかしなくては。
とその夜からネズミ(たち?)は騒ぎはじめたのだ。
 
借りているワンルームタイプのステュディオは本当に小さくて
寝室に簡易台所がついているようなつくりになっている。
ネズミはどうやら台所とその後ろの壁のあいだの
人の手の届かないところにいるらしい。
手は届かないが(手を伸ばすのもはばかられるが)なにせ同じ部屋にいるので
音はばっちりと聞こえる。すっかりなめられたものだ。
電気を消すたびにがさがさと何かを物色する音が響いた。
 
そしてある日、突然がりがりと変わった音が始まった。
どうやら食べるものがなにもなく、
壁だか家具だかなにか固いものをかじりはじめた様子。
静かな夜中にこの不気味な音の響くこと響くこと。
こちらがうとうとするとあちらががりがり。
起き上がるとその間は静かにしているが、安全な場所と知っているせいか
場所をかえずにやりすごす。
こんな夜が続いた。幾晩も明け方まで眠れなかった。
 
◆4 リベンジ 
 
ついに意を決し、本格的ネズミ対策プロジェクトを開始する。
まず大型のスーパーマーケットに行ったのだがなんの製品も置いていなかった。
そしてデパートへ出直すことに。
ネズミ対策用品は園芸用品コーナーにあった。
このコーナーはなんとペット売り場のすぐ脇だ。
ネズミ退治用品をなぜペット売り場の横で買うの?
矛盾を抱えながらも商品を選ぶ。
 
そこで学んだこと。フランスで見られるネズミは大きく分けて2種類ある。
茶色いイエネズミと黒いソトネズミだ。茶色い方が小さい。
秋のはじめから冬にかけて人家に生息し、巣をつくるとあった。
うちのネズミだ!秋のはじめに出没したし、茶色だったしまったくその通りだ。
今ごろ子どもがいたらどうしよう。ネズミは多産なはず…。
ちなみに黒いネズミは畑などに生息し、生命力は強いとあった。
 
死体の後片付けという罪悪感にさいなまれそうな処理を
できるだけ避けたいと願い、超音波のコーナーへ。
アジア製の10ユーロ(1300円くらいかな)と
ドイツ製の120ユーロ(14000円くらい!)の2種類があった。
アジア製のほうは一種類のネズミの嫌がる超音波を定期的に出すそう。
そしてドイツ製は3種の音波を不定期に交換しながら流すとのこと。
 
お店の人いわく、10ユーロの製品だとはじめの3週間くらいはネズミが
出ていっていなくなるが音に慣れたらなんと戻ってくるとのこと!
お、おそるべしネズミ。
つつましい留学生の▼SK、ネズミのために1万円以上を出すのかと思うと
さすがにくやしかった。
結局10ユーロの機械と強力毒餌という缶を買ってネズミの待つ家に帰る。
 
四角く小さなこの機械はコンセントに直接つなぐようにできていた。
30秒に一度、プチ、プチ、と音がなる。
人体には害はないらしい。
使用中は確かにネズミの動きを抑えられたような気がした。
しかし小さなステュディオでは自分の注意をも散らしてしまう。
SKは部屋中に毒餌をまいた。
かわいいネズミちゃんだと甘やかしていたツケが
睡眠妨害となってまわってきた、もう容赦はしない。
この餌、麦をけばけばしい赤に着色したような形状なのだが、
直接肌に触れないようにと厳重に注意書きがしてある。
が、たまたま指先についてしまった。
そのとたんに指がしびれたのにはもうびっくり。
強力すぎてネズミは食べるのだろうかといぶかしく思うほどだった。
 
一週間して真夜中の物色音がなくなった。
彼らがどのようになっているのか想像するのはやめておく。
自分で掃除をするのは不可能なので今は大家さんの返事を待っているところだ。
大家さんにとってもどうやら気の進まない仕事らしい。
 
丁寧にお取引願ったのに聞かないからよ!
とは言いわけしつつもなぜかミッキーマウスを直視できなくなった自分がいる。
もう来ないでね、ネズミちゃん。
 
■■あとがき■■
 
フランスではネズミの被害についてはしょっちゅう聞きますが、
ゴキブリについてはそうでもありません。
気候って生態に影響をあたえるんですね。
 
励ましのお便りをくださったあなた、本当にありがとうございます。
こんな話でちょっと申しわけないです。
でも大変だったんです。
眠れないってつらいですよね、一時は本気で引越しも考えたんですから!
 
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東と西のあいだにて           2004年1月29日
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