いやはや、製作に関わって Return
自己満足100%な他愛の無い開発苦労話です。読まなくてもよろしいかと。


画:絵観様


・「チーフトラッププランナー」という仕事
実はこの役職名はテストプレー時にエンディングのスタッフロールを見て
初めて知ったわけでして、当時は「アクション部長」と呼ばれてました。
今まではゲーム製作では大抵、背景部分やその周辺を担当してきましたが、
この役職は、自分のアクションゲーム好きが興じて社内募集に立候補しまして、
他に候補者がいなかったので私に決定致しました。
(後から聞いた話では、立候補者がいなかったら必然的に私になっていたとの事…。)

当然、初体験の仕事。勝手の分からない仕事です。
まずはやはり基本構想を練らなくてはいけないので様々なゲームを参考することに。
広く意見を求めるために社内掲示板で
「参考になりそうな、発売済みの良いアクションゲームはないか?」と募集したところ、
なんと候補にあげられるゲームの大半はメガドライブではないですか〜!
確かに良質アクションが多いメガドライブですが、私のメガドラ好きは社内でも
有名なはずなのに、なぜあえてそこで出すかな〜!

で、研究のために勤務時間後も薦められるがままに、泊り込んで様々なゲームをプレイすることに。
セガサターン…「マジカルホッパーズ」「プリンセスクラウン」…。
プレイステーション…「風のクロノア」「ミラクルジャンパーズ」
「スパイロ・ザ・ドラゴン」「クラッシュバンデクー」「テイルコンチェルト」…。
そしてメガドライブは、「ロケットナイトアドベンチャーズ」
「リスター・ザ・シューティングスター」「アイラブ! ミッキーマウス」
共通点の多い「アリシアドラグーン」「モンスターワールドIV」
なぜか「魂斗羅・ザ・ハードコア」そして「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」…。
他にもN64のゼルダ等、まだまだ遊んだのですが、今回影響があったのはのはこんなものでしょう。

余談ですが、とあるBBSにて「マジカルホッパーズを参考にしたに違いない」と
鬼を首を取ったように書かれたことがありますが、
遊んだ方はお分かりの通り、基本コンセプトの一つに
「当時の2Dアクションを3Dに再現」があったため、
ゲーム部分はもっぱら旧世代機を主に参考にしてました。
まぁ潜在的に影響を受けた部分は否めませんが。
ただ、「参考にする」=「パクる」ではありません。
これら先駆者を越えなくてはいけませんから、良い作品を見てしまうほどアイデア出しが困難になります。

さて、私の役職を人に説明するのは非常に大変でして、
大雑把に言えば「ゲーム中に出てくる仕掛けを考案、配置」、
もちろん自分一人でやった訳ではなく、スタッフの方々と考え、
それらのアイデアを生かすべく取りまとめるお仕事をメインにしておりましたが、
これがまた捕らえ方によっては非常に多岐にわたってしまう仕事であり、
トラップの挙動のチェック、敵の大きさから移動距離の設定、
はてはポーチのジャンプ距離の決定にまで携わる事に。
プログラマ、企画、グラフィックの方々の間を何度も往復したもんです。


・「奥行きのある」ジャンプアクションとの葛藤
ジャンプアクションが減少の傾向にある昨今、調べてみれば
いわゆるマリオ系のジャンプアクションで奥行きがある物は非常に少ないと言う事が分かりました。
技法は3DでもTV画面と操作の基本は2次元。
ソニックやクロノアは、2次元なので2方向にさえ操作をすれば自在に動けるという
単純故の楽しさ、手軽さが魅力です。
高いところにあるコインはジャンプをして取り、崖はジャンプをして飛び越えれば良い。
…しかし3次元となるとそうはいきません。
高いところにあるコインは奥行きを持っているためにどこに浮いているか分からなかったり、
凹凸の激しい地形での動く足場の位置把握に苦労したり…。
様々な議論がされましたが、結局は取りやすいコイン、乗りやすい足場を心掛けて
配置する事で回避、あとはギミックが落とす影とレーダーによって位置把握をしてもらう事で落ち着きました。


・ギミックのアイデア出し
まず最初に、全ステージを通して共通のギミックを設計しなくてはなりません。
各面共通になるため、ごく基本的な挙動のものを中心に候補を挙げました。
同時に社内でも広く募集。なかなかに楽しいアイデアが集まりました。
最後まで非常に我々を困らせたのが移動する床の中途半端なサイズ。
壊れる床を始めとした様々なギミックは大抵2m単位の構成でした…が、
動く床だけなぜか1.5m四方。
この中途半端なサイズの初期設計が後々様々な問題を起こす原因に…。


・ステージの設計
さて、いよいよステージの設計。
2Dと違って奥行きの利点を存分に前面に押し出さなくてはなりません。
それはアクションとしての利点はもちろんの事、演出面でも同様です。
まずはステージのイメージを固めるべく、グラフィック班の方々と近くの図書館へ向かい、
絵本や画集を大量に借りてきてアイデア出し。
もちろんゲームとして通用し、なおかつ3Dでの再現が可能な題材でなくてはなりません。
12のステージは明確なテーマを持ち個々に差別化をしなくてはなりません。
かといって、基本テーマである「季節」から大幅に逸脱してもいけません。まさに暗中模索…。
とにかくデザイナーさんにボードを起こして頂き、それを参考にしながら大きな構成を考えます。
大きな構成とは、全体が円形、とか、山を越えると平野に出る…と言った形です。
机上の空論では何も始まらないので、取り合えずは「ワイルドウインド」をサンプルに作成、
これを叩き台に様々な要素を皆で検討しました。


・敵、パフェット、そしてギミックとの絡み…
やはりまずは単純な動きの物からアイデア出し。
歩く、ジャンプする、上に弾を吐く、下に弾を吐く…。
最初はさらに複雑な動きのものを考えていましたが、
配置する時に汎用性が効かなくてはいけないため、最初は単純な物から決定することに。
同時に、パフェットのアイデアも並行して出します。
当然、前に出したギミックのアイデアも生かさなくてはいけないため、慎重に検討を重ねます。
たとえば「爆発」という要素によって何が起こるか。そしてどこで使うか。
爆発する敵、爆弾を吐く敵。それに伴い、爆弾と言う要素を作り、どのように動くか検討。
その爆弾や爆発を生かせるギミックを作成…。
…と、決定事項が増えるに従って細かいルールも少しづつ決定していきます。
しかしこの、何気ない「細かいルール」というのが結構くせものでして
「敵を倒したらアイテムはどのタイミングで落とすか?」
「穴に落ちたら復帰するのはどこか?」
「スイッチのON/OFFの定義、連動出来るギミックは?」
など、ちょっと考えただけでもかなりの量がある事に気付きます。


・いざ配置!
とにもかくにもステージを作成して実際に動かさない事には楽しいかどうかすら分かりません。
サンプルステージに早速ジャンプ台や壊れるを配置してみます。
テストを繰り返しながら、ジャンプ台の最大ジャンプ距離や、壊れる床の壊れるまでのタイミング、
動く床のスピードや停止時間等の非常に細かいパラメータを
プログラマの方にお願いして調整していきます。
途中、採用を検討していたコイン要素を加える事に決定。
また、それに伴いコインが大量に問えるボーナス面を採用、
そのボーナス面に入るための季節パフェットの能力決定、
そしてスコアアタックを熱くするためにコイン連続取得ボーナスも取り入れたりと
作るに従って様々なアイデアが出てきます。
まさに一番アクションゲームを作成して楽しい瞬間です。
並行してアクション面企画の方々と、作成済みのギミックや敵の挙動を複合して活かした
アイデアを出せる限り断片的に出し、ためておきます。
宝箱の開け方やパフェットの使わせ方など、これらの細かい単位のアイデアを
難易度と面の雰囲気に合わせて各面に盛り込みます。
ある程度ギミックを配置した後、流して走ってみてタイムを計ります。
長過ぎず短過ぎず…な距離を調べるためです。
…が、この作業は後半に行くに従ってあまり意味のない作業である事に気付きます。
それは…詰め込み過ぎて短く作るのが不能になってしまったからです。


・地獄の難易度調整
簡単かつ楽しくするのは思った以上に大変な作業でした。
例えば崖の距離。2D時代のように1マス分等の大きな単位がある訳ではありません。
いえ、実際にはあるのですが、作りが根本的に違います。
3Dツール上で崖の長さを調節して跳び易いかテストプレイ→さらに微調整を繰り返します。
ギミックの挙動も私の管轄内でしたので、移動距離や速度の微調整を何度も何度も繰り返し
飛びやすい位置、距離を導きます。
また、制約も多く存在します。
例えば移動する床は、移動範囲内にポーチが進入しても安全な場所に配置しなくてはなりません。
壁や床に挟まれてしまうと誤作動が生じるからです。
これらの調整を遊びやすい状態になるまでひたすら繰り返します。
途中、鋭いツッコミが様々入ります。
「パフェットの使い所が少ない」「テンポが悪い」「コインの位置が把握しにくい」「分かりにくい」
…聞けば当たり前のように思える要素も、他の要素に気を取られると忘れてしまうもので
それら全ての要素をかなえるべく、ひたすら調整、再配置、変更の繰り返しです。
そしてその地味な作業を繰り返した後、ようやっと1ステージずつ完成していくのでありました。
なお、各ステージの難易度調整裏話は別コンテンツにて。


・そして唯一にして最大の後悔
ゲーム制作と言うのは100%満足で終わると言う事は皆無のようでして、
発売後に「ああすれば良かった」というのが、どうしても出てきてしまうもの。
しかし一番後悔しているのは…それは何度かお会いしていたというのに
菅野よう子さんのサインを貰えなかった事!