『天国から来た男たち』〜私的感想

この約2時間の作品を,観るために,既に何度か映画館に行きました。
観れば観るほど,それぞれの俳優さん,それぞれの場面に,どんどん愛着が湧いてきて,時間とお金の許す限り何度でも観たくなってしまう。
しかし,本当に私が,この作品を何度でも観たいと思うのは…,実は
あるひとつの場面ゆえ,その場面が観たくて,その為に繰り返し劇場に足を運んでいる…,と言っても過言ではありません。
それは勿論…遠藤憲一氏演じる「海野」の,あの最期のシーンです。
何度観ても展開は解っていても,大泣してしまう。映画の場面として素晴らしい圧巻であり,三池監督がこの作品に込めたかった,ある種の観念のようなものがギュッと凝縮されている“核”とも言うべき場面であることも確かですが…,あの海野に感銘を受けている自分の…その涙に,私は,ごくごく個人的な感慨を持っています。

なぜなら… あの海野を観ていると,私は,どうしても,みっちーを思い出してしまうのです。
人間的に,みっちーが,ああいう人であるとは全く思いませんが,ステージ上の存在として“歌”に向かっている及川光博というひとは,とても,ああいったひとだと,私は感じるのです。

数え切れないほどの銃弾を浴び,敵に向かって「Gooooood!」と満面の笑みで親指を突き出す海野。全身血に染まっての“アイラブユー”…死に際,渾身の力を振り絞って敵に体当たりしていく彼の姿を観ていると、どうしても,私は,1万7000人の前で,枯れる喉で『ペンフレンド』のラストを何回でも歌い直した,みっちーを思い出してしまうのです。

銃弾の前に踊り出た瞬間,海野の脳裏にあったのは,幸平や吉田,奈美恵のことだったかも知れない。だが,太郎が唱える般若心経の響きの中で,彼が繰り返した瀕死の叫び〜“裏切らない!”は,<世界>に向けた<祈り>のようなものであったのではないかと,感じられるのです。

『”君”だけに』という二人称に託し,「1対数千ではなく、1対1として聴いて下さい…」と,あの曲の前に,目を閉じるようにして伝えられた彼の呟き。それが、直接的な“君”という個人から繋がる、個と個の集合体である数千人、そして、その場には居合わせていない,彼方の人々へ…拡がることを希んでいるかのように,深い<想い>を込めて絶唱されたあの歌,そして彼の声…。

実際に届くか届かないか、意味があるか意味がないか,結果,世界に大きな変化をもたらせるか否か。それは、重要なようで、重要ではない。そこに声があること、叫びがあり想いがあり,世界を変えようとする<意志>があることが、何よりも重要なことのような気がするのです。

そんなわけで,『天国〜』のエンケンと,及川光博は,(私の中では)なにか,とても芸術的な領域でリンクしているのです。

(須東 美紅)

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