

たけちゃんのラジオ情報
ビートたけしのオールナイトニッポン
昭和54年のツービート 〜 日付不明の放送より
佐藤公哉(相談役)
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オールナイト・ニッポン終盤の頃はお休みも多かったたけしさんですが、そんなときはそんなときで、貴重音源が放送されたりすることもあって、聞き逃すわけには行きませんでした。そういうときの放送のテープより(文責及び注:佐藤公哉)。
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塚越孝(ニッポン放送アナウンサー):いやァ、たけしさんがお休みということで、このオールナイトも一時間――。
高田文夫:あっという間ですね。
塚越:こっからが聞きものです。
高田:今まで、ほら、今までふたりずつ喋りました、(軍団を)ふたりずつ組ませて。どんだけふたり喋りが難しいかということをね、判らせようと思って。実はいいレコードがあるんだ、今日は。
塚越:『これがツービートだ』。
高田:今、ニッポン放送のレコード室から、埃被ったやつを持って来ましたから。
塚越:昭和54年10月6日、国立劇場演芸場にて収録されたものです。
高田:漫才ブームってのは、昭和55年ですよね。『THE MANZAI』が始まったのが。その前の年で、ちょうど初めてツービートが、メジャーにボーンと乗っかったときの。だからもう、いいネタが全部入ってる。で、聞きどころはね、実はビートきよしくんがすごくうまかったという。これは名人芸だよ。
塚越:これは正座して聞かなきゃいけませんね。
高田:懐かしいネタ、いっぱい入ってますからね。
塚越:謹んで聞かせていただきます。
高田:54年のツービート、聞いてみましょう。
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(出囃子に乗ってツービート登場)
たけし:どうも!ツービートです。ホントにもう最近は不景気な時代でございましてね。
きよし:もう大変ですね。
たけし:大体、不景気なときってのはお笑いとか漫才ってのは一番いいんですよ。
きよし:いいですよこれは。
たけし:特に我々の漫才なんか特徴ありますから。見ると心が暗くなるという、何とも言えない。
きよし:暗くなっちゃしょうがねえじゃねえかバカ!
たけし:しかし、芸人の世界も最近厳しくなりましてね。
きよし:大変なんですよ。
たけし:我々みたいな若手が御飯食べるったら、大変なもんですよ。舞台で千円稼ぐって言ったら、並の神経じゃないですから。
きよし:すごいんですよ。
たけし:こいつなんか千円やったら親だって殺しますよ。
きよし:殺すかそんなもの。
たけし:500円で女房売っちゃう男ですから。
きよし:売らないよ!
たけし:でもやっばり、芸界ってのは、裏での先輩・後輩の区別がうるさくてね。
きよし:きびしいですよ。
たけし:いい奴もいればヤな奴もいますからね。
きよし:いるいる。
たけし:ヤな奴ってのはすぐ怒ってなァ。
きよし:そう、私なんかこないだ楽屋でね、衣装跨いだだけで怒られたんです。
たけし:私だってこの間楽屋で、財布盗んだだけで怒られたんです。
きよし:当たり前じゃねえか。
たけし:その点、やっぱいい先輩はね、自分の財布取られても、他から盗みますよ。
きよし:いいかげんにしろ!楽屋泥棒の集まりじゃないって。
たけし:でも最近、寄席の方でもね、女の人のファンが増えましてね。
きよし:嬉しいですね、ホントに。
たけし:女の人でお笑い好きな人は大体頭いいですからね。
きよし:ああ、頭いい。
たけし:その代わり顔はマズイってのがありますけどね。
きよし:余計なこと言うなお前は。
たけし:今日のみなさんは例外じゃありません。
きよし:待てよ!何だ、例外じゃないってのは。
たけし:女なんか、顔なんてどうだっていいんです。
きよし:あっ、顔関係ありません、ホントに。
たけし:こいつんちの姉さんなんか並のブスじゃないですよ。
きよし:何!?
たけし:あんまりブスだって政府から補助金もらったぐらいのブスなんですから。
きよし:政府でお金出すわけねえだろ。
たけし:男だってそうですから。男は顔とかスタイルじゃないです。
きよし:関係ありません。
たけし:どんなパンツ履いてるか、それです。
きよし:関係ねえじゃねえか!
たけし:やっぱりBVDじゃなきゃいけませんよ。
きよし:何を話してんだ。
たけし:いや、しかし、こいつなんか顔悪いですけどね、漫才やらせたら下手ですよ。下手でも練習はしてません。田舎帰れば貧乏です。
きよし:待てッ!黙って聞いてりゃ、救いようがないだろ。
たけし:おまえもしかし、漫才、今日は一生懸命やんなきゃ駄目だよ。
きよし:一生懸命やってんじゃねえか僕は。
たけし:生活かかってんだから。
きよし:そりゃそうですよ。
たけし:私は道楽でやってんだから。
きよし:偉そうなんだよいちいち。
たけし:それで、お前んとこは貧乏なんだから。
きよし:お前んとこだって貧乏じゃねえか。
たけし:何だ、人んちのこと貧乏って。それじゃあれ持ってるか?
きよし:何だよ?
たけし:“ピンク・レディーのおしゃれセット”、持ってねえだろこの野郎!
きよし:関係ねえだろ!
たけし:大体、並の貧乏じゃないですよ。こいつんち、夏なんかあんまり貧乏で蚊取り線香も買えないんです。で、かわいそうだって買ってあげたんです。
きよし:あ、くれたんですよ。
たけし:あんまり貧乏で使い方知らなくてね、行ってみたら蚊に蚊取り線香ぶつけたりして。
きよし:ぶつけるか!どこの世界に、蚊に蚊取り線香ぶつけるバカがいるんだバカモノ。
たけし:で、畳にゴキブリホイホイ撒いてて、ばあさん引っかかってこんなになっちゃって。
きよし:引っかかんねえっつうの!
たけし:ケツ蹴っ飛ばしたって言うじゃねえか。
きよし:そんな悪いことするわけねえだろ!
たけし:こいつんちは二年間、家族中何も食べてないですからね。ケツにクモの巣張っちゃったりして。
きよし:汚い話してんじゃないよバカモノ。
たけし:しかし、今日なんかだいぶお客さん来てますけどね、これからの季節ってのはね、寒くなったり暑くなったりしますから。
きよし:陽気がコロコロ変わりますよ。
たけし:特に、今日来てるおじいちゃんとかおばあちゃんは体気をつけて下さいよ。
きよし:あ、気をつけて下さいよ。
たけし:今日は中が暑くて外が寒いですから。
きよし:そうそうそう。
たけし:外出た瞬間に。
きよし:ね。
たけし:ポックリ、なんてありますからね。
きよし:やめろ!落ち着いて見てられねえじゃねえか!
たけし:ただ言っただけじゃねえか、健康を考えてんじゃないか。私なんかおばあちゃん孝行ですから。
きよし:ホント孝行してるのか?
たけし:ウチなんかおばあちゃんいますけどね、私がわざわざお風呂焚いて入れてやってるんですよ。
きよし:自分で焚いて?偉いねえ。
たけし:おばあちゃん、右手に生卵持たせて、「おばあちゃん、卵が茹るまで上がっちゃ駄目だ」って。
きよし:自分が茹っちゃうわ、そんなものは。
たけし:しかし、漫才も今、健康が一番ですからね。
きよし:そう、体が第一ですね。
たけし:こうやって、ふたりいるから初めて漫才ができるんですから。
きよし:あっ、これはホントですよ。
たけし:どっちかいなくなったら漫才になりません。
きよし:だから僕はこの人には感謝してる訳です。
たけし:感謝してますか。
きよし:この人がいなかったらひとりでできません。
たけし:私だってそうですよ、こいついなかったらひとりでできますから。
きよし:そうそう……って待て待て待て、いねえ方がいいんじゃねえか。
たけし:でもお前、最近顔色がいいじゃないか。
きよし:判るかね?
たけし:何かいいことがあったのか?
きよし:ちょっとね。
たけし:親でも死んだか?
きよし:バカなこと言ってんなよお前は。
たけし:ちょっと太ったんじゃない?
きよし:判る?
たけし:糖尿か?
きよし:嫌らしい言い方すんなよお前。
たけし:でも、これからの季節ね、風邪とかそういうものをバカにしちゃいけませんよ。
きよし:これはそうなんですよ。
たけし:風邪こじらせたら大変なことになりますからね。
きよし:ウチの親父なんかこないだ風邪こじらせまして、放っといたら肺炎になりました。
たけし:ウチの親父だってそうですよ。こないだ風邪こじらしちゃって、放っといたら今ペンキ屋やってますよ。
きよし:関係ねえじゃねえか。
たけし:何だ、ペンキ屋が風邪引いちゃいけないって法律でもあんのかこの野郎!しまいにはお前んち塗っちゃうぞこの野郎!
きよし:塗っちゃうとか塗っちゃわないとかの問題じゃないじゃないか。
たけし:あと、お子さんはね、切り傷なんかね、今ばい菌がすごいから気をつけた方がいいですよ。
きよし:あっ、僕なんかこの間ね、指先切ったんですよ。放っといたらヒョウソになりましたよ。
たけし:私だってこの間ナイフで指先切っちゃったんですよ。放っといたら治りましたよ。
きよし:いや、治っちゃ――。
たけし:治っちゃいけねえって法律でもあんのかこの野郎!
きよし:今そういう話してんじゃないだろ!
たけし:お前はガタガタうるさいよ、大体。でもやっぱり今はね、病気でもね、薬とか医者に頼っちゃいけません。
きよし:そう、大変なんですねー。
たけし:今一番いいのはね、自然に治す方法とか、中国治療ってのが一番いい。
きよし:何だい、中国治療って。
たけし:針とかお灸ね。
きよし:あ、針、僕やったことあるんですけどね、よく効きますねあれ。
たけし:私も針でね、こないだ胃潰瘍悪かったんですけど、針で治りましたよ。こいつだって顔悪かったんですけど、針で治りましたよ。
きよし:治るかそんなもの。
たけし:でも、今は針でどんな病気だって治りますから。例えば歯が痛い場合があるでしょ、これだって針で治りますから。
きよし:歯の痛みも?
たけし:歯が痛い場合は目に針を刺すんです。目の痛みで歯の痛み忘れますから。
きよし:ちょっと待てよ!じゃ目の痛みはどうすんだ!?
たけし:知らないよそんなもの。
きよし:無責任な男だなァ。
たけし:うるせえなァ。あと、おじいちゃんで心臓が悪い人。動悸が激しい場合があるでしょ。そういう場合は心臓に針を打つ。すると動悸が止まっちゃいますから。
きよし:死んじゃうじゃないかそれじゃ!
たけし:あとね、人前で顔が赤くなっちゃう人。赤面対人恐怖症。そういう場合は足に太い針を二本打つ。そっから血が抜けて顔がだんだん青くなって来ますから。
きよし:そんなのばっかりじゃないか!
たけし:あと五円ハゲね。
きよし:あっ、神経性のハゲね。
たけし:ハゲの場合は、ハゲの中に針を五十本ぐらい打ち込むんです。で、針の頭マジックで黒く塗るとね、こっちから見たら判りません。
きよし:判るわ!黙って聞いてりゃ。
たけし:あと、犬とか猫に噛まれた場合ね。噛まれた場合は、噛んだ犬に針を打つんです。
きよし:関係ねえっつうの。
たけし:すると二度と噛まなくなりますよ。
きよし:そんなのに打ったって自分噛まれたところ治るわけねえじゃねえか。
たけし:しかしやっぱり、今はね、東京の子なんかかわいそうで、体力がなくなっちゃってるでしょ。
きよし:体が弱いですね。
たけし:何故かって言うと、遊ぶとこがないからね。
きよし:表出ればクルマが多いですよ。
たけし:今年は交通事故、去年の倍ぐらいありますよ。
きよし:だから怖いです。
たけし:もう、交通標語は去年と今年で違います。
きよし:あっ、いろんな標語がありますね。
たけし:今年はすごいです、交通標語だって。「注意一秒、ケガ一生、クルマに飛び込め元気な子」とかね。
きよし:あるか!?そんなの。
たけし:あるんだからしょうがねえじゃねえか。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とかね。
きよし:怖いよ!
たけし:「気にすんな、どうせばあさん先はない」とか。
きよし:やめろバカ!どうしてそんなことばっかり言ってんだ。
たけし:いや、そんなこと言ったって、私はおばあちゃんに親切ですから。
きよし:ホントに親切にしてんのか?
たけし:こないだおばあちゃんに銀座で道聞かれまして。親切に近道を教えまして。
きよし:これは偉いですね。
たけし:おばあさん、喜んで高速道路をてくてく歩いて行きました。
きよし:駄目だよそれは!クルマにはねられて死んじゃったらどうする!?
たけし:でもね、クルマ社会と言えば、やっぱりクルマってのは必要ですけどね。今クルマ乗ってると女の子にモテますから。
きよし:あっ、女性が寄って来ます、ホントに。
たけし:私なんかクルマ持ってますけどね、こないだ四谷のあそこで、女の子三人引っかけました。
きよし:三人も引っかかったの?
たけし:ふたり重傷ひとり即死。
きよし:クルマでぶつけてんじゃねえか!
たけし:でもやっぱり、暗い夜道を運転するときなんかは、クルマを運転する人は気をつけた方がいいですよ。犬とか猫が飛び込んで来て嫌な気持ちしますから。
きよし:急に前出て来ますからね。
たけし:私もこないだ群馬の方でクルマ乗ってたら、バンパーにドカンと当たりましてね。私ペットが好きですから、犬でも轢いちゃったのかなァと嫌な気持ちで外出たんですけどね、良かったですよばあさんで。
きよし:良くないじゃないかバカモノ!どーしてそういうことばっかり言ってんだお前は!
たけし:ホッとしました。
きよし:ホッとすんなそんなことで!悪い男だな、しかしお前。
たけし:でもやっぱり東京の子なんて、砂場行ってもちょっとしかないしね。
きよし:ねー、もう、遊ぶとこがない。
たけし:ウチの姉さんの子供なんか、夏、こう立ってるだけで倒れちゃったりね。ちょっとしたことで体参っちゃうんですよ。こないだなんか、頭に釘打っただけで参っちゃいましたからね。
きよし:怖いな!
たけし:それで、親の言うことは聞かないしね。
きよし:全然聞きません、今の子は。
たけし:姉さんの子供なんか姉さんの言うこと全然聞きません。こないだ姉さんとふたりで外歩いてたら、向こうからクルマが来た。飛び込め、ったって飛び込まないですからね。
きよし:飛び込む訳ねえだろ!
たけし:飛び込みゃいくらかになるじゃねえか、お前。
きよし:死んじゃったら元も子もねえだろ。
たけし:で、何か買ってやっても飽きて捨てちゃうしね、今の子供ってのはね。
きよし:こないだだってそうですよ、まだ動くおもちゃ捨ててありましたからね。
たけし:こないだだってそうですよ、まだ動くばあさん捨ててありましたからね。
きよし:散歩してんじゃねえか、おばあさんが!
たけし:うるせえないちいち、お前は。
きよし:何で捨ててあるんだ、おばあさんが。
たけし:お前はいちいちうるさいよ。私は大体東京生まれでございましてね、こいつはね、うるさい割に山形県出身です。
きよし:いいじゃねえか山形。
たけし:知ってます?日本のガラパゴスと言われている。
きよし:言われてるわけねえだろ。
たけし:あっちのニワトリは未だに飛ぶんですよ。
きよし:飛ぶか!
たけし:魚、陸地歩くんですから。
きよし:シーラカンスじゃねえんだ。
たけし:お父さん、去年まで人食い人種やってたんですから。飛行機飛んで来ると、みんな出て来て拝んだりして。
きよし:拝まないよ!
たけし:おじいちゃんは偉い人でね。
きよし:あ、おじいちゃんはすごいですよ。
たけし:おじいちゃんは山形で有名な人です。山形県で最初に立って歩いた人です。
きよし:直立猿人だっつうんだよ!
たけし:テレビなんか未だに力道山映ってるんですよ、こいつんちは。
きよし:黙って聞いてりゃ……。
たけし:ラジオは『君の名は』やってんですから。
きよし:齢いくつなんだ、お前は!
たけし:齢って、お前だってイイ齢……こいつは、最初のコンビは横山エンタツさんですよ。
きよし:アチャコか、それじゃ!
たけし:漫才師で軍服持ってんのこいつだけですよ。
きよし:持ってねえよそんなものは!
たけし:乃木将軍の写真見ると涙ぐんだりして。
きよし:知らないよ。
たけし:ジープ乗ったガイジン来ると、チョコレートくれって手ぇ出したりして。
きよし:黙って聞いてりゃ言いたいことはがっかり言いやがって。
たけし:工場のサイレン聞いただけで防空頭巾持って走り出したりして。
きよし:やめろ、バカ!
たけし:条件反射がすごい。新幹線のこと丘蒸気っつって。
きよし:言うわけねえだろ!
たけし:鉄砲のこと種子島って言ったじゃねえか、お前んとこ。
きよし:黙って聞いてりゃ。山形をバカにしてんだろ。
たけし:でもやっぱりね、山形と東京の違いってのは、遊ぶとこあるってのは違ったな。
きよし:あ、遊び方が違ったな。
たけし:大体、野山駆けずり回ってますからね。
きよし:走りました、僕ら。
たけし:私のとこなんか親の教育が違いますからね。ウチのお父っつぁん九州男児でね。男は男らしく育てなきゃいけないんですよ。ケンカしたって何したって怒りませんよ。その代わりケンカして負けると怒られる。「男がケンカに負けていいと思ってるのか、もう一回行ってやって来い」とかね。
きよし:なるほどね。
たけし:「勝てなかったらお父っつぁん手伝ってやるからいっしょに行こう」と。
きよし:はァ、ふたりで行っちゃうんだ。
たけし:中学生のときなんか番長ってのがいまして、ふたりでかかって行って、ふたりともノサれたりして。
きよし:弱いんじゃないかおまえの親。
たけし:いたずらして近所のガラス割ったってね。男の子なんだから、ガラスの二、三枚、何てこっちゃないと。何だったら町内中のガラス割って来い、なんてよく言われました。
きよし:はァー、じゃ、自分ちの割ったら?
たけし:それは半殺しですけどね。
きよし:どんな親父だ!?
たけし:その点、優しいのはおっかさんでね。
きよし:お袋さんってのはいくつになってもいいもんですよ。
たけし:私なんか夜遅くまで遊んでますとね、ウチのお袋が迎えに来てね。「たけしちゃん」――私、たけしって言いますからね――「たけしちゃん、御飯だから早く帰りなさい」なんてよく言われまして。
きよし:あっ、それだったら俺だって言われた。「きよしちゃーん」――。
たけし:「盗んだら早く逃げなさーい」。
きよし:泥棒だよそれじゃ、お前。
たけし:でもやっぱり子供時代ってのは体鍛えなきゃ駄目ですな。私なんかスポーツ万能ですからね。やってないものないですから。特にもう、水泳ね。
きよし:水泳、僕だってやってましたよ山形で。
たけし:お前はやってるわけないってーの。お前、山形が泳げるわけねえじゃねえか、そんなの。
きよし:泳げるよ俺だって。
たけし:お前、風呂行くんだって酸素ボンベ背負ってるっていうじゃねえか。顔洗ってて溺れたってやつで。
きよし:溺れないよ!
たけし:歯磨くのに浮き袋してこうやってたじゃねえか。私なんか水泳は得意です。ウチの親父がペンキ屋ですから。
きよし:関係ねえっつの!
たけし:ペンキ屋の倅が泳いじゃいけねえって法律でもあんのかこの野郎!
きよし:いちいちそればっかり……。
たけし:得意なのはクロールね。クロールって、足をこうやってやって、腕こうやって――。
きよし:犬掻きだよそれじゃ。
たけし:仕事ないときは、後楽園プールの監視員やってたんです。
きよし:アルバイトやってたんですか。
たけし:日赤のバッジ着けて。「ほらほらほら、そこ!」
きよし:あ、いい声してんねぇ。
たけし:「おう!そこの、この野郎、このブス!」。
きよし:ブスって何だお前!?
たけし:「ブス、そこ泳ぐなお前は、伝染ったらどうすんだ!」。
きよし:伝染るか!そんなもの。伝染るわけねえだろ。
たけし:「駄目だばあさん、そんなとこで泳いじゃ。もっと深いとこ行って沈みなさい」。
きよし:いいかげんにしろ!死んじゃうだろうよ!
たけし:だから、今の子なんてのは体力ないから、秋の運動会でもね、今PTAがうるさくなっちゃって、騎馬戦とか棒倒しとかやんなくなっちゃったんですよ。
きよし:あっ、昔はよくやりましたね。
たけし:騎馬戦ってのは、牙出して、早くりんごを剥いた方が勝ちっていう。
きよし:あるか!?そんなの。
たけし:あと、玉転がしなんてのもね。
きよし:あっ、玉転がし知ってるよ。
たけし:運動会ね。こんなでかい玉を、中にばあさん入れてごろごろ転がして。早くくたばった方が負け、とか。
きよし:玉ん中におばあさん入れるわけないだろ。
たけし:PTA参観ってのがあったじゃねえか。あと障害物競走ね。
きよし:障害物、ありましたね。
たけし:檻の中にライオンとか虎放しといてね。おじいさんに肉の塊持たせて歩かせるっていう。
きよし:自分まで食われて死んじゃうじゃねえか!
たけし:でもやっぱ、休憩時間で一番楽しいってのは、フォークダンスってのがありましたね。
きよし:あっ、生徒がグラウンドに集まりましてね。
たけし:男と女が輪になって。右手にフォーク持って、目ぇ突っつき合ったりして。
きよし:何ィ?
たけし:みんな血だらけで踊ったりして。
きよし:学校の先生がやらせないよ!そんなことは。
たけし:やらせたんだ、東京じゃ。山形は違うんだ、大体。教育が全然。
きよし:何が教育が違うんだよ。
たけし:山形じゃ教育は農林省がやってるっていうじゃないか。
きよし:農林省って何だ!?文部省でやってるよ、ちゃんと。
たけし:あとやってたのは野球ね。
きよし:あ、野球って言えば僕だって山形でよくやってましたね。
たけし:(パチン、ときよしさんを叩いて)嘘をつくんじゃない。山形、高校野球か?
きよし:高校野球やってたんです。
たけし:打ち方真似すんじゃない(パチン)。山形、野球なんか伝わってないだろこの野郎。
きよし:野球伝わってるよ。
たけし:あっちは三角ベースでやってるっていうじゃねえか。
きよし:何だ、三角ベースって。
たけし:ファースト、セカンド、ホームだっていうじゃねえか。
きよし:サードまでなきゃ野球できないだろ。
たけし:サード付近は猪走って危ない、ってやらせないっていうじゃないか。
きよし:いないよもう、猪なんか。俺だってやってたもん、ピッチャーで。
たけし:お前んとこはルールが違うだろ(パチン)。
きよし:何だいちいち。
たけし:こいつんとこは審判チョンマゲ結ってるんですよ。
きよし:何?
たけし:陣羽織着て、ストライク=良し、ボール=駄目っていうじゃないか。
きよし:100年前の野球やってるんじゃないんだよ!
たけし:でも、野球って言えば、高校野球が何と言っても一番いいですな。
きよし:高校野球ね、もう、見てて楽しい。
たけし:夏の甲子園なんか、みんな泣いたりしてね。表彰式なんかね、興奮しちゃってね、わけ判んなくなっちゃって。
きよし:「放送席、放送席、聞こえますか?こちらはインタヴュー・ルームです。ただいま優勝致しましたツービート学園のキャプテンをお呼びしておりますので、ひとことインタヴューしてみたいと思います。北野キャプテンどうぞ」。
たけし:「オス、オース、オース、オス」。
きよし:「キャプテンね、優勝した原因は何だったと思いますか?」。
たけし:「やっぱりあの、決勝戦に勝ったことじゃないかなと思ってます」。
きよし:「当たり前じゃないですかそんなの。キャプテンね、どの辺で『勝ったなー』って思いましたか?」
たけし:「やっぱり、あの、九回ゲームセットを聞いたときに『勝ったかな?』って思いましたね」。
きよし:当たり前だっつうんだよ。「キャプテンね、試合始まる前に、監督に何か言われましたか?」
たけし:「負けてもいいから絶対勝て、って言われました」
きよし:「何だそりゃ。キャプテンね、野球以外で一番好きなものは何ですか?」
たけし:「やっぱり吉野屋の牛丼です」
きよし:いいかげんにしろ!そんなこと、高校野球の選手が言うか。「キャプテンね、全国高校野球連盟を代表致しまして、佐伯会長より皆様にひとこと御挨拶がございます。会長どうぞ」
たけし:「ピップ・エレキバン」(苦笑)。下手なギャグをやらせんなこの野郎!
きよし:おまえはしかし、何を考えてやってんだ(苦笑)。
たけし:俺はもう情けなくなっちゃった。お前、名人何とかって題が付いてんのに「ピップ・エレ――」、やれるか!
きよし:やってんじゃないか!
たけし:情けないなァお前は。
きよし:俺が「会長どうぞ」って言ったら挨拶すりゃいいだろ。
たけし:お前はうるさいよいちいち。お前んち塗っちゃうぞ、終いには。
きよし:それはいいっつうんだよ。
たけし:終いには歌歌うぞ俺は。
きよし:歌?それだけは勘弁して(苦笑)。
たけし:俺の歌聴いてヤクザが謝ったっていう。
きよし:やめろよ。
たけし:でも、野球もいいですけどね、やっぱり自分でやらなきゃ駄目ですね。やっぱりね、マラソンやるとかね。
きよし:あ、マラソン今流行ってますね。
たけし:私なんか朝六時に起きて町内一周ですよ。
きよし:あっ、早朝マラソン。
たけし:もう、町内一周して帰って来ると、牛乳と新聞がいっぱいになっちゃって。
きよし:泥棒じゃねえか!
たけし:いいじゃねえか、一挙両得なんだから。
きよし:両得ってことはないだろう。
たけし:お前なんか得意なものも何もないじゃないか。
きよし:得意なものはありますよ。雪国生まれ、スキーが得意じゃないですか。
たけし:何?
きよし:スキー。
たけし:貧乏人がスキーできるわけねえだろこの野郎(パチン)。スキーの板買うんだって200円や300円はすんだぞ。
きよし:もっとするわ!二万、三万はするんだ。
たけし:そんな高いスキーがあるわけねえじゃねえか。
きよし:お前、昔は木だったけど今は違うんだよ。
たけし:今はコンクリートか何かでできてるのか?
きよし:家建ててんじゃないんだよ。今はグラスファイバーってあるんだよ。
たけし:ほら、情けない発音。お前高校出てんのか?グラスファイバーのfは下唇噛まなきゃ駄目だ。グラス・ファイ・バー、こういう風に言わなきゃ。
きよし:はァはァ、下唇噛めばいいわけね。グラス・ファイ・バー。
たけし:噛め、って言ってるだろ。
きよし:噛んでるっつうんだよ。
たけし:血が出てねえじゃねえか。
きよし:いいかげんにしろ!血が出るほど噛むのか!?
たけし:ガイジンは血だらけで喋ってるんだぞ、お前。
きよし:嘘だよそんなの。
たけし:そんないい環境にいたのか?お前。
きよし:任せなよ、ウチに帰ったら大変ですよ。ウチのパパがすごい。
たけし:(パチン)“パパ”が吹き矢持って東京見物来るけねえだろ!パパが何やってんだよ。
きよし:パパがスキー・ホテルやってんじゃねえか。
たけし:あれは民宿って言うんじゃねえか。
きよし:名前がホテルだからいいだろうよ。
たけし:“ホテル”の三畳間に六人ぐらい雑魚寝しましてね。畳からきのこなんか生えちゃって。トイレなんか紙ないですよ。縄張ってあってこれですから。
きよし:バカなこと言ってんな!
(お囃子と共に退場)
―――――――――――――――
高田:いやァ、ホレボレしますねえ。どうかね東くん。
そのまんま東:ホントに、きよし師匠はね、この頃全盛期だったんでしょうね。
高田:はっはっはっ!
東:力強いですよねえ。いいですねえ。ひとことひとこと、きよし師匠のひとことに優しさがありますね。
高田:「俺はアチャコか!」って(笑)。「黙って聞いてりゃ」って、黙って聞いてないんだよさっきから。
塚越:お客さんの笑い声が、ほとんど男性の声だったですね。今とはお客さんの層が違うんですね、全然。
高田:やっぱ感動だったからね、ツービートとして出たときには。男のファンがドーンと来てましたからね。ちょうど、漫才ブームが来る直前の、54年のテープですよね。
東:勉強になりました。
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