たけしの遺伝子
たけしRADIO
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 テリーとうえちゃんのってけラジオ
 北野武監督ゲスト 1回目 〜 2001年1月24日の放送より
佐藤公哉(相談役)

うえやなぎまさひこ:さて、テリー伊藤さん、そして私、ニッポン放送アナウンサー・うえやなぎまさひこ、男ふたりでお送りしているですね、『テリーとうえちゃん・のってけラジオ』に。

テリー伊藤:来てくれましたよ遂に。

うえちゃん:この方がいらっしゃいました。御紹介します。北野武監督です。

北野武:どうも。

テリー:嬉しいですよね、まさか来てくれると思わなかったですよね。

北野:いやァ、ほら、前にTBSか何か、TMCで、伊藤……あの、テリーさんが、「いやァ、『バトル・ロワイアル』すごかった、あれ、見た中で最高だった」って、ムカッ腹立ててさ。

テリー:そうなんです。その時「冗談じゃない」って怒ってたんです。

北野:それで、宣伝するって言うから、深作さん呼んでさんざん宣伝したなんて抜かしやがったから、「冗談じゃねェ、俺の客全部持ってかれたら、俺の映画誰も入らねェじゃねェか」って。

うえちゃん:押してはいけないスウィッチ押しちゃったんですね。

テリー:そうなんですよ。『バトル・ロワイアル』がいい、って誉めたら何かあまり浮かない顔してたんですよ。

北野:ただでさえ若い奴なんか金がねェのに、『バトル・ロワイアル』みんな見ちゃうと、俺んとこに来ねェじゃねェか。こりゃ許して置けない、と思って。

テリー:そうなんですよ。

うえちゃん:良くないのがね、映画よく知らない人が、ごっちゃにしてる人もいらっしゃるみたいなんですよ。

北野:「BR」って書いてあるから、あれ『BROTHER』と勘違いしちゃうんだよ。

うえちゃん:あーそうか、『BATTLE ROYALE』ね。

北野:たけしの映画、なんて言ったら、俺両方出てるから、困っちゃってるんだよ。

テリー:冗談じゃないですよね。

北野:冗談じゃない。

うえちゃん:ということで、今日はきっちりとね。

テリー:お願いします武さん。

うえちゃん:今週の土曜日からですからね、きっちりと『BROTHER』についてね、やりましょうよ。

テリー:あの、ぼくらはね、実は先週の土曜日、うえちゃんといっしょに見て来ましたけど、すごいですね!

北野:ヴィデオで見せろ、って言ったらしいじゃない。

うえちゃん:この男がわがままなんですよ。

北野:家でヴィデオなんかで見られちゃ、それでネエちゃんか何かとふたりで――。

うえちゃん:俺はいちいちいちいち試写会に行くステイタスの男じゃない、って言ってるんですよ。

テリー:いや、武さんに怒られてるんですよ、次の日。

北野:どうせ早回しで犬か何かに見せて、それで「良かった」なんて言われたらかなわない。

うえちゃん:ウチの犬が喜びまして、とか。

テリー:武さんに「バカヤロウ」って怒られましてですね。あれはね、実は音が大切なんだと。

うえちゃん:久石譲さんの音とか、SEとか拳銃の音とか。

北野:拳銃の音をわざわざロスに録りに行ったっていう。実際に遣った拳銃を全部並べて、弾入れて全部撃って、その弾を全部つけたんだから。

うえちゃん:実弾を撃った音なんですか。

北野:あれがホントの音だ。

うえちゃん:はァー。

北野:大変だよ金かかって。

テリー:でもあれ、すごいですよね。ぼくね――武さんにいろいろおいおい話してもらうと思うんですけど――日本の映画じゃないみたい、という感じがしたんですけどね。

北野:やっぱ、何だろ、外国の空気が違うのかな。ロスで撮ると、フィルムの感光度もいろいろ調節したんだけど、外国だよね。まァ景色が外国だ、ってこともあるけど。

テリー:あと、意外と、日本の映画が外国に行くと、結構何か妙に外国のもの入れちゃったり。

北野:もうね、それは向こうのね、コーディネーターって言うかロケハンの会社があってね、台本読んで、まず台本のストーリーに合わせて、ロケーション・ハンティングの会社が選んで行くわけ。

うえちゃん:それは、アメリカ側がやっぱり。

北野:アメリカのスタッフがいるわけ。

うえちゃん:アメリカの感覚で、日本人が来るんだったら、っつって。

北野:うん、しかも完全なステレオタイプでね、ロスに降りた、じゃあ空港は間違いなくそこだけど、じゃあその主人公がどこ歩こうか、と思ったら、チャイニーズ・シアターって書いてあるんだよ(笑)。ふざけんなって。手形あるとこを何で日本のヤクザが歩かなきゃいけないんだ、って。チャップリンの手形の前歩いてどうするんだ、冗談じゃねェ普通のとこにしろ、ってそれの連続なの。打ち合わせで、もう合わなくて。空撮とかやんない?って。

うえちゃん:広いロスの画から撮って、って。

北野:そうそう。

テリー:だから、ぼくらが見たことないようなロスですよね。何か、結構殺伐としたような。

北野:要するに。ロスでも人通りのないような情けないとこ、っつったら、そのロケーション・ハンティングの人たちが「そんなとこで撮ったことないし、ロケにあんたたちは日本から来たんでしょ」って言うから「そうだよ」って言ったら、「いかにもロスだ、ってとこ見せたい」って言うから「いや、俺は『どこで撮ってもいい』ってとこにしてくれ」って言ったの。わざわざ、ロスに来たってとこを見せる必要はないし。だから、非常にあの「えっ、こんなとこで撮るの!?」ってとこばかしわざと選んだんで、ちょっと最初トラブったけどね。向こうが、「あの、それはハリウッドの映画のやり方じゃない」とか言って。端からその気もないじゃない、だって。だから、ロスにロケーションに行っただけ、って感じなんだよね。

うえちゃん:ねえ、見たことのないロスの街並って感じがしたけど。それとさっきの、拳銃の話が出て来たんですが、あれ、持ってらっしゃる拳銃とかマシンガンも、あれ全部実弾込めたら出るって聞いたんですけど、あれホントなんですか?

北野:あれ、もうすごいですよ、まずその、ガン・コーディネーターの会社があるでしょ、ガン専門の。すると、立派に戦争ができるよ、ってぐらいの工場だから。でェかい工場があって、「これ何?」って言ったら「ああ、ヴェトナム戦争の映画の時は大体このM-16ライフルだ」ってワーッと並んで。「これ全部本物ですか?」って。全部本物。だから、第二次大戦のやつも本物が並んでて、それで「お前の今度の映画はギャング映画だから、俺が選んだのはこれだけ」って百丁ぐらい出して来て。これはチェコ戦で何とかだ、とか全部並べて、「どれ使うか?」って言うから「これ全部本物か?」ったら「全部本物」って。それに空砲にするだけだから、って。で、向こうが選んだのと、俺こっちがいい、とかやって、ダーンってやったんだけど、空砲でもこんなになるし。

うえちゃん:空砲って反動があるんですか?やっぱし。

北野:ものすごいですよ。それであの、映画をやる時には、拳銃を使う時にはものすごいチェックをするから。鉄屑でも死んじゃうんで。要するにかけらが入っただけで死んじゃうんで。ブルース・リーの倅が死んだんだって、弾が入ってたわけじゃなくて、筒の中にちょっとごみの破片が入ってて、それがドーンと出るから。だからその、「今日は拳銃を使う日です」って言うと、ミーティングが朝一番にあって、拳銃触れる人はコーディネーターと役者だけで、渡す時に確認する奴がふたりいて、それからプロデューサーとかがいて、銃身とこ懐中電灯で当てて、何も入ってないね、って――弾なんか元々入ってないな、って渡して、カメラの前でこんな厚いの着けて、ドーンってやったらすぐに持ってかれて、「渡しました」ってチェックばっかり。だから、なるたけ怪我人が出ないっていう、絶対大丈夫なようにしといて。三重ぐらいのチェックがあるから。

うえちゃん:寺島進さんもね、こんなことをね。

テリー:あんまりね、内容言っちゃうと怒られちゃうんですけども、こめかみにね、当ててるシーンとかありましたよね。

北野:あれは本物は使えない。

うえちゃん:あ、そういう風に決まってるんだ。

北野:あれ、本物の空砲でも頭吹っ飛ぶから(笑)。

テリー:そうかァ。

北野:このぐらいで撃って、空砲で撃っても吹っ飛ぶよ。

うえちゃん:風圧みたいなので。

北野:うん、ブワーンって出るから。大怪我するから。

うえちゃん:そうなんですかァ。

北野:だから、ものすごいおっかない。

うえちゃん:武さんの監督のやり方って、日本人の監督さんも「あんな早く撮る人って」いう風にびっくりされてる方が多いんですが、アメリカの方も驚いてたんじゃないですか?

北野:大体ほら、編集マンがいるから、ひとつのシーンで10テイクぐらいやるのね。手元に行ったり顔行ったりアップやったり。まァ、あとキーのマスターのテイクも何回も映画撮るんだけど、でもそれは編集マンが台本見ながらラッシュ見て「どうしてこれ手元がないわけ?」ってやられると怒られちゃうんで、それ用に撮るじゃない?でも使わないカットもあるんだけど、編集俺だから、俺がいらないカットは撮ったってしょうがないんで、端からふたりツーショットって決めたらそれだけでいいわけでね。で、俺が自分で編集で入れるっつったら、手元は撮るけど、必要ないんで。だからやんなくて済むんで。それで、またリハーサル長いんだけど、俺いきなりリハーサルやって、はい本番、なんてやってるから、すごい早いって驚いてたよ。役者が「ちょっと待ってくれ、気分が……」どうのこうのって言うから、「もっとやる気になってないと」って。「いいんだよそんなもの、早くやれ」って。

テリー:はははは。

北野:「それじゃなきゃ犬猫の、犬や猫の映画撮れないじゃねェか」ったら「それは何ですか?」って言うから、「犬に『こういうシーンだから悲しい顔せい』って言った奴はいないんだから、悲しい音楽かけて尾っぽ振りゃいいんだ、それで」って。役者が「我々は犬以下か」って言うから「同じようなもんだ」とか言ってたら、ヤな顔してたけどね。

テリー:はははは。ラスト・シーンなんかも、一発?
北野:あれもリハーサルなしの一発勝負。

テリー:ねえ。

北野:あれ、日にちが落ちて来て、ガーッと撃って来るんだけど、制作保険なんかかかってるから、保険会社が受け取るわけ。一日日にちが延びると、何千万か保険会社が出すわけ。台本見て「これなら撮れる」っつったら。だから保険会社の人はいっつも来てるの、こうやって。ヤな顔してじーっと見てるわけ。延びたら金取られるから。で「早く撒け」って時もあるんだけど。

うえちゃん:陽が沈む前に早く撮ってくれと。

北野:俺、初日に、夕方までかかるシーン、午前中で上がっちゃったのね。ワン・テイクだから「はいオッケー」って。「はい終わり」って言ったら保険会社が飛んで来て「お前は天才だ!」とかって。

テリー:ははははは。

北野:「何てすごいんだ」って抱きしめちゃって。

うえちゃん:ハグされたりなんかして(笑)。

北野:そう、「金払いたくねェんじゃねえか、お前なんか」って思ったんだけど。そしたら、最後になったら、あのシーンはラストなのね、砂漠で。そしたらもう、陽が落ちて来てさ、イライライライラしてるわけ。明日もう一回これやり直す、っつったらまたスタッフの金から全部かかるんで、こうやってやってたから「早くやっちゃえ」ってやったら、うまいこと出来ちゃったけど。

テリー:ぼくはあの映画見ててね、もちろんヤクザ映画なんですけども、武さんのヤクザは、ヤクザとはまた別に侍っぽい、そういう感じがちょっとしたんですよね。

北野:基本的には、古典的なヤクザの人たちってのは、日本の軍隊と同じだけど、やっぱり自己犠牲とかさ、武士道の、死に対する美化とかさ、そういうところからこう、組をでかくしてのめり込んだわけで。だから、今はどういう時代になってるか判んないけども、基本的には、自己犠牲と死に対する美化みたいなものを全面に出して、ジャパニーズの古いヤクザはこういう生き方をするんだ、っていうのを外国に持って行くともっと際立つのね。

テリー:そうなんですよね。

北野:いきなりガンガンやっちゃって。

テリー:だから、ホントぼく見ててね、たぶんこれは外国の人が見てても、ヤクザ映画とは言いながら、侍のね、「あっ、これはちょっと時代がズレてたら侍映画だな」っていう感じがしたんで、たぶんこのラジオをお聞きの皆さんも、ヤクザ映画云々じゃなくて、日本人の魂みたいなのが入ってますよね。

北野:ちょっとしたね。それはいいことか悪いことか判んないけど、スピリッツとしては。ほんのちょっと悪いなァ、とは思う。第二次大戦の特攻隊なんかそのアレだから、悪いかも知れないけど、でも日本人の中に、ちょっとね、美化された部分があって、ちょっといいだろ、ってのはある。

うえちゃん:えー、いよいよ1月の27日公開でございます。今日のニッポン放送・『テリーとうえちゃんのってけラジオ』、北野武監督にお越しいただいております。一回お知らせです。



(CM)



うえちゃん:今週の土曜日、1月27日いよいよ公開、北野武監督『BROTHER』なんですけども、今日は『のってけラジオ』に武さんにお越しいただいております。あの、ヤクザの話をさっきふたりでされてましたけども、あんまり見たことないですけども、黒人の人が指切られそうになって、そのシーン撮影しようとしたらその人が逃げちゃった、って話が(笑)。

北野:逃げちゃった、台本見て。

テリー:はははは。

北野:ホントに詰めるわけねェだろ、って。いや怖い、って。とにかく刃物って異常に怖がるよね。ガン社会だから、刃物ってね、一瞬にして死なない、って感じがあんのかな。痛さがずーっとこう、持続して死んで行く、って感じがあるから。すごい嫌がる、刃物は。

テリー:あの、うえちゃんなんかも見てて、「痛い映画だなァ」って。痛いですよね!?痛いシーンがかなり。

北野:いや、暴力映画ってなってるけど、暴力ってのは痛く見せなきゃいけないんだ、ホントの痛さは。それは想像力だけどね。だけど、痛くない暴力映画って、要するにアニメとかゲームみたいに、マネするってのは、嫌悪感のある痛さってのはマネしないだろう、ってのは俺の――青少年が暴力映画を見た時にどう判断するか、に対する自分の意見であって、それを痛くないように描くからマネするんだけじゃねェか、って。

テリー:痛さが、逆に見る方が――。

北野:こりゃ痛いな、って思ったら、自分で嫌悪感があってマネしないだろう、ってのがあって。でも、痛さが感じない暴力ってのは、マネされる可能性があるってのはね。だからわりかし俺はそれに対しては、暴力映画だなんて言われると、それは別にそうかも知れないけど、別に若い奴に対しての変な悪影響は絶対ねえ、って言ってるんだけど。

うえちゃん:あの、武さんが足立区で小さい頃住んでた時に、結構荒くれ者の人たちがケンカしたりとか刺したりってのを、ちっちゃい時にずいぶん見た、っていう風におっしゃってるんですけど、あれホントにあのすごいシーンって、ちっちゃい時ご覧になってるんですか?

北野:まァ、前の映画で言ってたんだけど、ラーメン屋入ってて、ちょっと、ウチの近所の怖いおじさんが若い衆連れてたんだけど、ラーメン食いながら「いいか、ラーメンのそばの箸はな、相手の目の幅で食うんだ」って言った時には、すげェおっかねえなァ、って(笑)。「そんぐらいのこと考えなきゃこの世界やってられねェ」なんつって、オイラ「うえー、カッコイイなこの人」って思ってたんだよ(笑)。

テリー:そういう雰囲気のシーンがいくつかありますよね。今回の中でも。

北野:だから、暴力ってすごい突発的なことだからね。だから、今からやるぞ、やるぞっていう暴力なんてちっとも大したことじゃなくて。急に出てかないとダメなんだよね。

テリー:そこですよね!だからホントにね、まばたき出来ないみたいな映画だ、ってとこがありますよね。

北野:いきなり来るからね。

うえちゃん:で、必ず呆然と立ってそれを見てる鮨屋の店員さん、とかって、ポンというショットが、あの鮨屋とぼくらは同じですからね。呆然と客席で「おい、殺しちゃったよ」みたいなところがね、ありますからね。

テリー:ヒットしそうですね。

北野:いやァ、だからね、『バトル・ロワイアル』のね……。

うえちゃん:(笑)根に持ってる!

北野:あれに全部金使ってねェだろうか、と思ってね。

テリー:お客さんがね。

北野:深作さんが一千万もらったって聞いて――。

テリー:結構もらってましたよね!?深作さん。

北野:俺に何にも話してねえでやんの。

テリー:ひどい話ですよね!?

北野:俺一応主役だぜ、あれ。俺の描いた絵なんか持ってっちゃって。

うえちゃん:うん、最後にね。

テリー:そうですよね。

北野:「あの絵くんないか」って言うから「あげますよ」って、あれ五百万ぐらいで売りゃ良かったなホントに、損しちゃったよ。

テリー&うえちゃん:はははは。

テリー:俗っぽい話ですけど、この映画の見どころとか、見方とかを、ラジオのお聞きの皆さんにちょっと。

北野:うん、いや、基本的には日本の撮るアクション映画よりも、使ってるものも全部本物だしね、音とかね。あと、日本人が外国人と共演した映画ってね、カッコ悪いんだよみんな。下手するとね、同じ東洋人扱いされるからね、日本人がカンフー使ったりなんかしてるのね。アチョーとか言って。だから今回やるのは、日本人の方が絶対カッコイイように撮ろうとして、とにかくメインの奴は全部ヨウジ・ヤマモトの服着させて、もっと暴力的で激しいようにしたの。そうじゃないと敵わないからね。実際はね、アメリカの役者と並んだ時にね、日本人が少しセコく見えるんで、ジャパニーズの方が絶対すごい、っていう風に意識して作ったんで、わりかし、ナショナリズムじゃないけどね。

テリー:それはありますよ。だから見終わったあと痛快な気持ちになりますよね。

北野:日本人も捨てたもんじゃないっていう感じ。

テリー:そうそう、結構元気になる感じがして。

北野:その、何か、下町の悪者自慢みたいなね。お前より俺の方が悪かった、とかね。お前より俺の方が貧乏だった、って、殴り合いのケンカしてるだけだけど、それ恥ずかしいことだと思うけど、そうじゃなくて、やっぱりね、ジャパニーズは怖いだとか、そういうのだけ出れば。

テリー:あと、今武さんが言いましたけど、ファッションの方もちょっとチェックして欲しいですよね。

うえちゃん:シルヴァーのブレスレットとか、指輪してとか、そんな、ちょっとあんまりね、見たことないですよね。

北野:あれ、だってね、全部でねえ、衣装代三千万だよ。三千万で、ウチの社長が踏み倒したんだから。
テリー:ははははははは、ははははははは。

うえちゃん:それはまた……。

北野:かわいそうだぜ、ヨウジさん。

うえちゃん:じゃあ、誰が一番悪かったかって――。

北野:森社長。踏み倒したって言ってたもん。

テリー:じや、ここでですね、一般の方から質問来てますので。XX市にお住まいのxxさん、24歳のエステサロンに勤務の方からいただいてまして。

北野:怪しいなそれ。

うえちゃん:ふはははははは!

テリー:怪しくないですよ!

うえちゃん:人の商売つかまえて「怪しい」って(笑)。

北野:「サロン」って変なことしてんじゃないの?

テリー:「『BROTHER』はヤクザの話だそうですが、武さんの映画ではどうしてヤクザのテーマが多いんですか?」。

北野:今の若い人って、生きることがさ、ものすごい、アメリカの文化や何かで、楽しく生きる、とか豊かに生きる、ばっかしやってて。でも、必ずそこに死というものが同時に進行してるのに、死ってのは毛嫌いしてるじゃん。だから、暴力ってのは、幸せな家庭でいきなりお父さんが病気で死んだ時に、それはいきなり暴力的にパニックになるじゃない。それと同じように、幸せな家庭でも何でも、常に暴力、って言うか死というのが常に側にあるっていうのを考えると、一番身近に死がある奴って、ヤクザか警察官かなァ、っていう感じがあって。それで、死をテーマに描くと、ヤクザになるんだけどね。おまわりさんでもいいんだけど。

テリー:そういうのってやっぱり、死ぬっていうことを今回の『BROTHER』の中でもね、ヤクザの連中がみんな常にね、背中合わせに持ってますよね。あれはやっぱすごいな、って感じがしますよね。xx市にお住まいのxxさん、44歳のドライヴァーの方からいただいております。武さんへの質問。「年間、どれぐらいの映画を見るんですか?もし昨年のNo.1があったら教えて下さい」。

北野:年間、ヴィデオで二本かな。

うえちゃん:見ますねー……って見てないじゃないですか。全然見てないじゃないですか(笑)。

北野:俺、だって、外国行って黒澤さんと小津安次郎と溝口健二知ったんだもん。黒澤さんは名前だけ知ってたんだけど、『七人の侍』って言われた時どうしようか、って思ったんだもん。

うえちゃん:「黒澤作品について北野監督はどう思いますか?」って聞かれますよね。

北野:聞かれると、「ああそうですか」って、日本帰った時にヴィデオ集めて「ああ、これすごいなァ」って。

テリー:黒澤さんの作品ではどれが一番好きですか?

北野:基本的には、何とか砦の……。

テリー:三人?

北野:『三人』(『隠し砦の三悪人』)と、それから映像は『デルス・ウザーラ』かな。『デルス・ウザーラ』は名作だと思うけど、ストーリーがつまんなかっただけで(笑)、映像はすごいなァと思った。あと、『夢』ってのあったでしょ。あれは客に夢見させてどうすんだ、っていう(笑)。みんな劇場で寝てた、ってのはあるけど。『まあただよ』ってのは客が『もういいよ』って言ったっていう。

テリー&うえちゃん:あはははは!

北野:そういうこと言ってると怒られるでしょ。

テリー:怒られます、次行きます。じゃ最後の質問です。xxにお住まいのxxさん、35歳公務員の方からいただいとりますが、「おすぎさんや水野晴郎さんの評判って、武さんでもやっぱ気になるんですか?」ということで。

北野:いやァ、俺はねえ、あの、水野先生のね、『シベリア超特急』ね、特にパートUなんかはね、日本の歴代の三部作に入るね。『北京原人』、それから『REX』(笑)。

テリー:入りましたか!?

北野:『シベリア超特急』、あと『みんな〜やってるか!』(笑)。この四つさえ揃ってればね、これほど見ながら酒のうまい映画はないよ。

テリー:やっぱり『シベ急』はいいですか。

北野:『シベ超』はいいね!『シベ超』は、「この続きは『シベ超3』で」って出た時にはね、這いつくばった、嬉しくて。おすぎとピーコなんてのは、どうでもいいぜ、あんなもの。いい加減な奴だから。「私はこの映画を宣伝するために生まれて来たんです」なんて、その前は何だったんだバカヤロウ!って。

テリー&うえちゃん:はははははは!

北野:「私はこの映画を宣伝するために生まれて来たんです」って、下らねェこと言ってんなこの野郎、と思って。

テリー:でもあれですよ武さん、今回のはあれですよ、ぼくなんかも見させてもらって、そんなにカルトじゃないから、誰にでもエンターテイメントでで見れるから、みんなに見てもらいたいですね。

北野:うん、わりかしエンターテイメントに、なっちゃったんだけどな、結局。その、アメリカの映画のやり方が、抜き撮りだからね。いきなり頭からドッてゃって、どう話が変わるかっていうような面白さが、ライヴ方式で撮るとあるんだけど、そうじゃなくて日にちの問題とか――。

うえちゃん:契約契約で、前もって出せと。

北野:あの、このシーンはこの部屋で何シーンあったら、全部連続で撮って行かないとね、その日のうちに。

テリー:なるほど。

北野:だから、つながんなくなっちゃうじゃない。だから、ちゃんとその通り撮ったんで、まァ始めの仮台本から見ればエンターテイメントだなァ、ってことで。予想通りの映画、楽しませる映画だな。

テリー:ねえ、すごいですよね。アレですか、ハリウッドで映画撮ったんですけども、やりやすかったですか?

北野:やりやすいよ。アメリカ人働かないって、嘘だぜあれ。

テリー:あ、そうですか?

北野:みんなアメリカ人って働かないって思ってるじゃん。とんでもない、あれ自分の仕事やったらあとは遊んでるだけで、早いもん。ただ、日本人がひとりでやる仕事を四人に分けてあげるっていうところだから、照明さんひとりの仕事が、四人で運ぶ奴とか照らす奴とかセッティングする奴とか、全部違う会社がやるんで、自分の仕事が終わったら一切手を出さないのは、人の仕事を取ってしまうんで。こっから荷物を運ぶでも、その運ぶ人たちにやらせないと、ADとかアシスタントの助監督がこうやってやったら、それはその人の仕事なんで。

テリー:やってもらっては困ると。

北野:何すんだ、俺のとこ取るな、っていう。だから、終わったら煙草吸ってるし、ガム食ったり鮨食ったりして遊んでんのは、遊んでんじゃなくて自分の仕事が終わったから。あと、責任の所在が判るんで、ここにあったものが何故なくなったんだ、ったら、動かした奴に決まってるんだから。責任の所在も判るし、だから、働くけど金が四倍かかるわけ。金さえ使えば、アメリカはやりやすい。だって、外で撮影する時おまわりさんが出て来て交通遮断しちゃう。で、実際のハリウッド映画で、映ってるものは全部役者とクルマだから。日本だと交通渋滞で銀座か何かに行って隠し撮りするけど、あれないんだから。あれ、150台のクルマ持って来て、ナンバー・プレート付けて、実際の役者が運転してワーワーやるシーンで、映ってるフレームの中のものは全部映画のもんなんで、問題全然ない、うん。ただ金はかかる。

テリー:金かかりそうですね。じゃあ皆さんに入ってもらって。

うえちゃん:1月の27日、全国ロードショーでございます。ぜひ。

北野:入ってくんなきゃ。

テリー:最後に、ラジオをお聞きの皆さんに、武さんの方から、PRして下さい。

北野:入れこの野郎!

テリー:ははははは!

北野:入りやがれ!どうなってんだ一体。

テリー:入って下さいよ、武さん泣いてますから。

北野:入った人には抗菌まな板が付いて来る。えっ、どうだ!

うえちゃん:ということで、『BROTHER』監督、北野武さんにお越しいただきました。ありがとうございます!

テリー:ありがとうございます!

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