

殿に関するみんなの色々
「BROTHER」監督スペシャルインタビュー
二代目 立川錦之助
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すべての道は「笑い」に通ず
__BROTHERは5年後越しの企画ということですが、完成したときの気持ちはどんな感じでしたか?
北野武監督(以下 略)
完成したとき...、編集したときと音楽つけたりとかしてるときは、次の映画のこと
ばかり考えていたな。後はもう、プロデューサーとかそういう人が、がんばって宣伝とか
売ってくれって感じだね。
__出来上がった作品に対しては、「できあがっちゃったもの」という感じなのですか?
基本的には、映画を撮り始めたら、作業が終わってるところがあるんだよね。
それが撮り終わると、編集っていう作業がまた面白いんだけどね。
実際撮りあがって編集しようと思ったら、思った通りになってなかったりするから、
どうやってごまかすとか。そういうのがちょっと、面白いっていうかね。
あと、大体出来たら、出来上がる直前とか撮影の時から、
「次にこういうのがやりたい」っていうのが多いんだよね。
__ちなみに次回作というのは。
久しぶりにっていうか、俺はほとんどやんないんだけど、
次は男と女の話をやろうと思ってるんだよね。
絶対出来ないと言われてるんでね。
__今回、アメリカのスタッフと一緒でしたよね。いろいろと勝手が違った点はありましたか?
あるいはエピソードとか?日本の感覚と大分違うと思いますか?
まぁ、それは全てだけれども、ただ、言葉は殆ど問題ないのね。
映画用語を使えばいいだけだから。それ以前に、うち(北野組)の作業が異常に早くて
ほとんど1テイクだからね。むこうが信じられないみたいだったね。
日本語が出来る助監督が、事前にまず(北野組の)撮影を下見に来て、
むこうに帰ってスタッフに「異常に早い」って言ってたらしいんだけど、
でも実際これほど早いとは思わなかったってね。
.....ただ、アメリカ人て働かないのかな、と思ったんだけど、やっぱり働くんだよ。
ただパーツ分けがすごいから、自分以外の仕事に手を出すことは絶対だめなんだよ。
日本だと照明がやる仕事は、運んだり、セッティングしたり、暗幕掛けたり、
やるのは全部一人の照明マンだけど、向こうだと4つに分かれてるんだよ、会社が。
日本で一つでやることを、4つの段階でやるから、早いわけよ。
で、早く撮り終えると散歩したり煙草吸ったりしてるんだけど、
それ見て日本人は「外人働いてねーな」って思ったんじゃないかな。
だけど(彼らは)自分たちの仕事に関しては絶対にミスできないから、物凄い神経質。
アメリカのクルーっていっぱいいるから、その人達その日にクビにしても
パッと次が来るから、平気でクビに出来るの。
だからそういうことでは、絶対ミスしないってことが前提なわけだよ。
その「ミスしない」ってことは、自分達はミスしたくないから、徹底的に打ち合わせには来るわけ。
日本だと、助監督がするような仕事でも、俺に聞かないとダメなわけね。
それから、日本だったらとても考えられない、っていうか、全然気にしてないことなんだけども、
最初の、空港で俺が立ってるシーン、カメラテストで「よーいスタート」
ってやったら、車がダーッと走ってて、人がワーワーいるんだ。
で、またもう一回やったら、同じ人たちがまた同じ動きするのね。
「あいつら邪魔してんのか」って言うと、
「いやあれ全部役者ですよ」って(スタッフが)言うから。
だからあの映画に写ってるのは全部役者なんだよ。
日本だと、隠し撮りして、「逃げちゃえ」ってところをだよ。
「あーこれは金かかるな」って。
(米スタッフは)パーッとセッティングして、早いんだけど、労力としては大変だと思うよ。
(日本では)全然気にしなかったからね。エキストラの動きなんて。
空港の前に一般の、本当の素人の間に役者おいといて、
「遠くの方から望遠で撮っちゃえばわかんないだろ」っていうんじゃだめなんだよ。
そういうのは、すごい、ショックだった。
__今回の映画で、ヤクザ、マフィア、登場しますけれども、
ジャパニーズヤクザの美意識などお考えですか?
あの中にある美しさというか。
ヨーロッパあたりだと、(俺は)わりかし呼ばれるじゃん。
で、「ソナチネ」あたりからずっとヤクザのことばかり聞かれて、いやになっちゃって。
俺も考えるのがめんどくさいから、「典型的なこういうヤクザは今いないよ」
って言うんだけれども、「ある時期の、典型的な『これがヤクザだ』っていうのを俺は撮るから」って。
で、ヤクザの美意識っていうのも、「これがヤクザだ」っていうんじゃなくて、
基本的には自己犠牲とか、一心同体っていうのはほとんど武士道から持ってきて
取り入れちゃった文化だから、それは、ヤクザの本来の物ではないけれども
実際はそれがヤクザの世界として、昔はね、あったとはよく言うけどね。
で、「この映画どうですか」って言われると、まぁ、「バカなヤクザが死に場所探して
アメリカに渡って、死んだっていうバカな話でございます」と言うんだけど、
「バカな奴でございます」っていう言葉事体がヤクザの世界では以外と理解されるとこあるじゃない。
「ちょっといいだろ」っていうかさ。
「一人で勝手に死んでよぉ、バカだろ?それがいいんだよ」っていう、
そのへんがこう、微妙なとこだね。
__全面からただよってくる静けさに、死というテーマが漂っている感じがするのですが。
あの、映画のにおいってのがあってね、深作(欣二)さんなんてのは画面から汗が
にじみ出てくるようなベトベトした感じが好きでしょ。
俺は一切汗臭くないっていうか、冷めて冷めて、カメラ引いて引いて客観的に客観的に、
なるたけカメラが役者の心情に入り込まないように撮る。
だから俺のは乾いちゃってるよね。
__カメラの距離の取り方のこう、北野監督の冷めた目というのを感じたことがあるんですよ。
まぁ、最近はもうちょっと丁寧に撮るようにしてるけれども、
その人に感情移入するカメラワークとかあんまり好きじゃないんだ。
けど、あんまりにも引いちゃう画ばっかりやってると、単なる記念写真大会になるのは嫌だから
「じゃあ、少しカメラ位置変えようか」って言って、少しはやるけどね。
あんまり好きじゃない、ホントは。
__今回のキャスティングで、北野監督の意図などが反映されているのは?
基本的に日本人は外国人と並ぶと情けないでしょ。
三番手四番手のセコイ役なんだよ。
(俺は)そういうのは絶対撮らないって。
要するに、基本的には、日本人が、
非常に恐くて恰好良いっていうのしか頭にないんだよ。負けないヤツ。
真木蔵人は、英語もできるからって、まぁ、雇ったんだけど、
実はその辺はハワイ英語であって、現場で直されて直されておかしくなっちゃって。
一言毎に「お前ハワイにいただろ」って散々やられて。
こっちは演技的にOKなんだけど、「発音がだめだ」ってやられちゃう。
日本人サイドはオーディションなしでやったんだけど、むこう、外人サイドは、
映画に出るっていうのはまた特別らしくて、ベルボーイっているじゃない。
単なる外にいるボーイなのに、20人ぐらい並べて、「どれが良いんだ?」って聞かれるんだよ。
それで、台本の役によって全部オーディションで決めるわけ。
__オマー・エプスさんはどうでしたか?
10人くらいプロデューサーのおすすめがいて、オーディションやって、
芝居やってもらって3人くらいに絞ったのね。
その3人の中で俺も「あれー、オマーかな」と思っていて、
で、その3人が映画に出てるからね。
映画のビデオ見て、あ、やっぱりオマーがいいな、と思ってね。
__最もこう、力の入った演出の場面とか、ありますか。
本当は3時間10分あったんだよ、最初に編集したのは。
でも、アメリカとかプロデューサーの契約で、2時間以内なんだよね、映画って。
それで1時間10何分削ってくれって言われて。
こういう、中華料理屋なんだけどね、円卓の真ん中に料理を乗せて回すじゃない。
その真ん中に、また、カメラを置いてあるわけ。
で、そのカメラ360度回せるようになってるのね。
台詞喋るヤツは、こう、立って「だからアニキなぁ」って言って、
またこっちからこう、回して、カメラがいろんなとこ勝手に動いて、
そこのテーブルの周りのヤツは対応するっていうシーンが、20何分あんのね。
けど泣く泣く全部外したんだよね。
カメラマンとか照明さんとか、色々作戦練って、やっと中華のテーブル作って、
中にカメラ入って、こう回れるように.....とかやって、「全部カットになった」
って言ったら、みんな「洒落になりませんよ」って。
だからそこがおすすめだったんだけどね。
__それ載せちゃっていいですか(笑)
いいよ(笑)。しょうがねぇもんな。
結局、基本的なシーン外すわけにはいかないんだよね。
そうすると、そういうとこを外したら、やたら暴力が全面に出てしまって
「なんだか激しいな、この映画」と思ったんだけど。
ただ、暴力シーンでも、撃ち方とか殺し方とかかなり自信あるね。
__今後の展望はどんなご予定ですか?
「その男、凶暴につき」っていうのがスタートで「ソナチネ」で一回転終わり、だいたいね。
その後「みんな〜やってるか」っていうのでちょっと、頭おかしくなって、
また「Kids Return」から始まって、
「HANA−BI」「菊次郎の夏」とあって、「BROTHER」で一回転終わり。
それでもう一つ、今度は恋愛ものから始まって、
ひとまわりでって感じになるかもしれない。4本くらい。
__まだまだ監督業は続けるんですよね。
俺は次の映画が撮れるだけ当たればいいって思ってるけどね。
いっぱいお金もうかったってしょうがないし。
今さら、遊びの映画でそんなものを期待すると失礼だから。
まぁ(全く)当たらないと困るけどね。
次の映画が撮れるくらいの当たりで、俺はいいんだけど。
ほか金出した人たちは「ふざけんな」って言うかも知れないけど、
俺自身はね。
__大衆受けとかは意識してますか?
お客さんと物を作る人の関係ってのは、あれだね、自分でこう、
お笑いをやってくると、お客は引きずり回すモンで、お客をちょっとでも意識したら終わってしまう。
お客は追いかけたら逃げるっていうか、自分が新しいものを
じゃんじゃん自分なりに作って行って、それにお客がついてくるかこないかの話であって、
でもお客がついてこないからって、今度お客の方を向こうとした瞬間に
もっとダメになってしまう。
__巨匠と呼ばれることに対してどう思われますか?
お笑いをやるにはこれほど嬉しい言葉はないよね。
要するにお笑いって落差だから、人が倒れるのも普通の人より総理大臣の方が笑えるわけだからね。
その人にとっては悲劇だけど、見てる人にとっては喜劇になってるという。
同時性っていうのがいつもあるじゃない。
そうすると、(自分の作品中の)バイオレンスも悲しい残酷あのところに、
一歩間違うとお笑いになってしまうっていうのがあって、
同時にいろんな要素を含んでしまうから。
外国に行っても最近は扱いが大きくて
「黒澤明に並ぶ」とか「黒澤の後継者」って言われるわけ、
で、それは凄い嬉しくて。
それは映画じゃなくお笑いに持っていくものだから。
そうすると、「将来の夢は?」って言われると、
「カンヌにふんどしで現れる」(笑)というのがあって、
で、断られるっていうのがいちばんいいな。
それで3回くらい断られたい。いろんな作戦を練ってるんだけどね。(笑)
__やっぱり根底にあるものは、お笑いっていうことですか?
そうだね。お笑いって凄い、あらゆることに通じていて、
間とか時間の縮めかたとか延ばし方とか、ほとんど暴力的だからね。
お笑いって信じられない言葉を急にバン!とかあげちゃったりするじゃない。
あとで考えるとよっぽど笑ってしまうのは、何気なく、
いきなり拳銃の弾が飛んでくるのと一緒だからね。
暴力と演出とかもそれのほうが面白いかな。
__最後の質問になりますが、ご自分としては、死に場所というか、
どんな風に死にたいと考えていますか?
夢としてはくっだらないというか、すごい情けない死に方をしたいね。
今までまぐれ当たりでここまできちゃったわけだから、
いまさら、いい一生なんか過ごしたらもっとばちがあたるね。
そのまんま事故でくたばってればさ、少しは今頃、もっといい扱い受けてたかも知れない。
「人に歴史あり」かなんかさ。
意外に天才とか呼ばれてたりして.....大笑いだね。
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